阪神西宮駅北再開発、40階級住宅と新中央図書館を整備 2028年7月に建築着工へ



阪神西宮駅北側で進む「阪神西宮駅北地区公民連携事業」が、2028年7月の施設建築物着工に向けて具体化しています。

計画では、駅北側約2.0haを土地区画整理によって大街区化し、そのうち約0.6haで市街地再開発を実施します。再開発街区には40階前後の高層住宅棟と4階建ての新しい西宮市立中央図書館を整備。阪神西宮駅と直結する歩行者デッキやバスロータリー、広場、歩道状空地なども一体的に再編し、駅北口の都市構造を抜本的に作り替えます。施設建築物の完成は2032年12月を予定しています。

なお、2028年7月は事業全体の着工時期ではなく、図書館棟や住宅棟など施設建築物の建築工事開始時期です。道路整備や無電柱化、地下埋設物の移設、バスロータリーなどの基盤整備はすでに動き始めており、事業は構想段階から実施段階へ移っています。

駅前2haを再編、低利用地を「都市核」へ転換



事業区域は西宮市和上町、田中町の各一部で、阪神西宮駅、エビスタ西宮、国道2号に囲まれた約2.0haです。現在は平面駐車場やバス待機場が大きな面積を占め、道路によって街区も細かく分断されています。阪神西宮駅は市内有数の利用者数を抱え、主要なバス路線も集まる交通結節点ですが、バス乗降スペースの不足や一般車との動線の錯綜などが課題となっていました。

今回の事業では、既存道路の一部を整理して街区を大型化し、住宅、図書館、交通広場、歩行者空間を一体配置します。交通結節機能の再編、公共施設の更新、民間開発による都市機能の集積を同時に進める駅前再構築事業と位置付けることができます。
項目 計画内容
事業名 阪神西宮駅北地区公民連携事業
土地区画整理区域 約2.0ha
市街地再開発区域 約0.6ha
住宅棟 40階前後
新中央図書館棟 4階建て、延べ約6,620㎡
公共用歩廊 幅4m、延長約150m
広場状空地A 約1,420㎡、2階レベル
広場状空地B 約570㎡、1階レベル
施設建築物着工 2028年7月予定
施設建築物完成 2032年12月予定

40階級住宅と新中央図書館を別棟で整備



再開発の中核を担うのが、40階前後の高層住宅棟と新中央図書館です。住宅棟の正式な階数、高さ、戸数などは今後の設計で具体化しますが、西宮市が示した基本計画では、低層の図書館棟と高層住宅棟を別棟として配置する構成が示されています。

新中央図書館は、現在の川添町から阪神西宮駅前へ移転します。図書館棟全体の延床面積は約6,620㎡で、図書館専用部分が約3,430㎡、共用部分が約1,320㎡、民間施設が約340㎡。このほか、図書館棟敷地内に約1,530㎡のバスロータリーを整備します。

さらに、約345㎡の閉架書庫を住宅棟内に確保する計画です。新図書館のコンセプトは「LIBRARY for ACTION」。本を貸し出すだけの施設ではなく、読書、学習、交流、市民活動などを誘発する都市型の公共施設を目指します。館内には大きな吹き抜けと、その周囲を巡る書棚「本の幹」を配置し、人が自然に回遊する空間を形成します。西宮市は「公園のような図書館」を目指しており、公共施設そのものを駅前の滞在需要を生み出す装置として位置付けています。

環境性能では、一次エネルギー消費量を50%以上削減する「ZEB Ready」の取得を目標とします。構造面でも付加制震構造を採用し、書架の固定や落下防止対策を講じる計画です。

駅と図書館を2階デッキで直結



歩行者動線も大きく変わります。阪神西宮駅から北側へ、幅4m、延長約150mの公共用歩廊を整備。2階レベルに設ける連絡デッキや「まちなか広場」を通じて、阪神西宮駅、エビスタ西宮、新中央図書館を立体的につなぎます。

2階レベルには約1,420㎡の「広場状空地A」、地上1階には約570㎡の「広場状空地B」を配置します。地上部にも幅5~11m・延長約150mの歩道状空地A、幅4m・約270mの歩道状空地B、幅2m・約210mの歩道状空地Cなどを設け、駅前から国道2号、西宮市役所などが集まるシビックゾーンへの回遊性を高めます。

駅前空間を平面的に整理するだけでなく、地上と2階を組み合わせた立体的な歩行者ネットワークを形成する点が特徴です。バスロータリーは阪神電気鉄道が整備します。現在不足している乗降スペースを確保し、一般車との動線を整理することで、鉄道とバスの乗り換え利便性向上を図ります。

容積率は最大700% 公共貢献と引き換えに高度利用



40階級の高層住宅を成立させる制度的なポイントが、再開発等促進区を定める地区計画です。

西宮市は、図書館、広場、歩行者デッキ、歩道状空地などを整備する公共貢献と引き換えに、土地の高度利用を認める仕組みを導入します。2026年6月に縦覧された地区計画変更原案では、中地区と東地区について容積率の最高限度を700%としています。

今回の計画では、さらに特徴的な手法として「容積移転」を採用します。住宅棟と図書館棟は用途も建物のライフサイクルも異なるため、一体建築にはせず、別棟・別敷地とします。これにより、それぞれが将来独立して修繕や建て替えを行える構造とします。

そのうえで、図書館棟側の一部敷地と住宅棟側との間に地役権を設定し、図書館側で使い切らない容積を住宅棟側へ移転します。公共施設と民間住宅を完全に一体化するのではなく、資産や更新時期を分離しながら、開発時には容積を一体的に活用する仕組みです。

これは今回のプロジェクトを理解するうえで重要なポイントです。40階級の住宅は単純な規制緩和によって実現するのではなく、公共施設や歩行者空間を整備する地域貢献と引き換えに、高度利用を認める公民連携型の開発スキームによって成立します。

土地区画整理に約10.6億円、市の一般財源負担は約4.9億円

土地区画整理事業の概算事業費は10億5,800万円です。内訳は道路・公園整備が2億100万円、電線共同溝が1億7,700万円、地下埋設物などの移設が4億4,700万円、調査設計費が1億6,100万円などとなっています。

市負担対象額9億500万円に対し、国庫補助金4億1,100万円を活用し、市の一般財源負担は4億9,400万円を見込みます。バスロータリーについては、これとは別に阪神電鉄が整備します。

新中央図書館については、什器・備品を含む新図書館資産額を約59億9,100万円、市の従前資産額を約12億6,500万円と想定。差額となる市増床負担金は約47億2,600万円です。

財源には国庫補助金15億円、地方債24億3,600万円、一般財源7億9,000万円を見込みます。また、駅と図書館を結ぶ連絡デッキの整備費は約2億8,200万円で、西宮市が3分の2に当たる1億8,800万円、民間事業者が残る3分の1を負担します。これらは現時点の概算額で、今後の設計や土地評価などによって変動する可能性があります。

阪神電鉄、大阪ガス都市開発、阪急阪神不動産、NTT都市開発が参画

事業には複数の民間企業が参画します。土地区画整理事業は阪神電気鉄道を代表施行者として、大阪ガス都市開発、阪急阪神不動産が共同施行します。市街地再開発事業では大阪ガス都市開発が代表施行者となり、阪急阪神不動産、NTT都市開発が共同施行者として参画する計画です。

2026年1月30日には土地区画整理事業が正式に認可されました。市街地再開発の事業計画作成業務はアール・アイ・エー(RIA)が担当。基本・実施設計者と施工者については、2026年12月の西宮市議会での承認を経て正式決定する見通しです。

2028年7月に建築着工、2032年12月完成へ

今後の想定スケジュールは次の通りです。
時期 主な動き
2025年9月 和上公園区域変更、地区計画決定
2026年1月 土地区画整理事業認可
2026年6月 地区計画変更原案を縦覧
2026年9月予定 容積率・高さ制限などを含む地区整備計画決定
2026年12月予定 市街地再開発関連予算を議決、設計・施工者正式決定見通し
2027年3月予定 市街地再開発事業認可
2028年5月予定 権利変換計画認可、建築工事請負契約
2028年6月予定 図書館増床分の財産取得・関連予算を議決
2028年7月予定 施設建築物の建築工事着工
2032年12月予定 施設建築物竣工
2032年度末 道路・ロータリーなどを含む全体完成
現時点では想定工程であり、今後の都市計画手続きや設計、権利調整などによって変更される可能性があります。

「タワマン再開発」にとどまらない阪神西宮駅北口の再編



阪神西宮駅北側では、鉄道、バス、市役所などの行政機能、商業施設が集積する一方、駅前の一等地の多くが駐車場やバス待機場として使われ、都市空間として十分に活用されていませんでした。今回の再開発では、これらの低利用地を大街区化し、「住む」「学ぶ・集う」「移動する」「滞在する」という複数の都市機能を駅前へ集約します。中でも中央図書館の駅前移転は重要な意味を持ちます。

住宅は定住人口を増やしますが、それだけでは必ずしも駅前の滞在人口や回遊性は高まりません。これに対し、図書館は学生、子育て世帯、高齢者など幅広い層が日常的に利用する施設です。

駅直結の図書館、商業施設、高層住宅、バスロータリー、広場を一体化することで、阪神西宮駅を「通過する駅」から「目的を持って訪れ、滞在する都市拠点」へ転換する効果が期待されます。

公共施設への投資を呼び水として民間開発を誘導し、その民間投資によって土地を高度利用する。一方で、公共施設と住宅は別棟化し、将来の更新自由度を確保する。さらに容積移転によって事業性を高める。阪神西宮駅北地区は、公共施設再編と民間不動産開発を組み合わせ、駅前の都市機能そのものを再構築する公民連携型再開発の先進事例として注目されます。

今後は、2026年9月の地区整備計画決定、12月の設計・施工者正式決定が当面の焦点です。その後、40階前後とされる住宅棟の正式な高さ、戸数、外観デザインなども順次明らかになるとみられます。

2030年代初頭、阪神西宮駅北口の景観と人の流れは大きく変わることになりそうです。




出典

西宮市「阪神西宮駅北地区公民連携事業について vol.2」
西宮市「阪神西宮駅北地区地区計画(変更原案)」
西宮市「阪神西宮駅北地区のまちづくりの進め方 vol.2.1」
西宮市「阪神西宮駅北土地区画整理事業について」
西宮市立中央図書館移転整備関連資料
建設通信新聞(2026年8月7日付)

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