※AIで作成したイメージ図。実際の計画ではありません!
西宮市は、森永乳業近畿工場、ニッカウヰスキー西宮工場、アサヒビール西宮東配送センターなどの跡地を含む「津門飯田町外工場等跡地」について、「まちづくり方針 vol.1」を公表しました。対象地は、西宮市津門飯田町および甲子園口6丁目周辺に広がる約12haの大規模工場等跡地です。西宮市と土地所有者の大和ハウス工業は2025年2月にまちづくり協議会を設立。その後、隣接する鉄道事業者であるJR西日本も参画し、土地利用や都市基盤整備の方向性を検討してきました。
今回の方針は、工場等跡地の土地利用転換にとどまらず、JR新駅・南北自由通路、GREENを軸にした複合都市機能を含む都市再編の方向性を示すものです。
阪神間に残された約12haの大規模工場等跡地

対象地は、JR東海道本線沿い、国道2号沿いに位置し、阪急西宮北口駅から直線距離で約900m南東にあります。大阪と神戸の中間に位置する西宮市内でも、非常にポテンシャルの高いエリアです。
森永乳業近畿工場は2019年12月、ニッカウヰスキー西宮工場は2024年3月、アサヒビール西宮東配送センターは2024年12月に相次いで操業を停止しました。これにより、阪神間の既成市街地では希少な、約12haのまとまった土地利用転換が動き出すことになります。
現在の用途地域は工業地域で、容積率は200%、建ぺい率は60%です。北側にJR東海道本線、南側に国道2号、西側に名神高速道路、東側に中津浜線があり、広域交通と地域交通の双方に接する立地条件を備えています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象地 | 西宮市津門飯田町、甲子園口6丁目周辺 |
| 面積 | 約12ha |
| 主な跡地 | 森永乳業近畿工場、ニッカウヰスキー西宮工場、アサヒビール西宮東配送センターなど |
| 用途地域 | 工業地域 |
| 容積率・建ぺい率 | 200%・60% |
| 交通条件 | JR東海道本線沿い、国道2号沿い、阪急西宮北口駅から約900m |
最大の焦点はJR新駅と南北自由通路

※南北自由通路のイメージ
今回の方針で最も注目されるのが、JR神戸線との関係です。JR西宮駅とJR甲子園口駅の駅間は約2.5kmで、市内のJR東海道本線では最も駅間距離が長い区間とされています。対象地はその中間付近にあり、JR新駅の設置が実現すれば、周辺地域の交通利便性は大きく向上します。
あわせて重要なのが、JR線を南北に横断する動線です。対象地周辺では、西側の県道西宮豊中線から東側の甲子園口5丁目横断地下道まで、約1.4kmにわたり、歩行者等が安全にJR東海道本線を横断できる道路が整備されていないことが課題とされています。
このため、新駅の検討は、鉄道駅を追加するだけの話ではありません。新駅が実現すれば、駅施設と一体的に南北を結ぶ自由通路が整備される公算が大きく、JR線で分断されてきた南北市街地をつなぎ直す都市基盤として機能する可能性があります。
ただし、現時点でJR新駅の設置が決定したわけではありません。駅の位置、事業費、開業時期、具体的な整備スキームなどは今後の検討事項です。西宮市とJR西日本が2025年3月25日に締結した包括連携協定でも、連携事項として「市南部地域におけるJR新駅設置や歩行者・自転車横断通路設置の可能性検討」が明記されています。
GREENを軸にした複合都市拠点へ
西宮市が示した基本方針は、「GREENを軸に、人・暮らし・活動が重層する都市空間へ」です。方針では、シンボルとなる広場を中心に周辺地区を一体的に再編し、「暮らす・働く・学ぶ・集う」が連続する西宮らしい新たなまちを創造するとしています。整備コンセプトとして掲げられたのは、シンボル広場、土地の有効活用、ウォーカブル空間の3点です。
想定される用途や導入機能の例には、住宅、商業、業務、文化、教育、交流、医療、福祉、生活支援、研究開発、産業、観光、宿泊、エンターテインメント、体験・学び、公共空間などが挙げられています。
用途はまだ確定していませんが、緑地や広場を核に、暮らし、働く場、学び、交流、産業機能を重ね合わせる複合都市拠点を目指す構図です。
西宮市南部では、1haを超える規模の都市公園が少なく、市民のレクリエーションの場や防災空地の確保も課題とされています。対象地では、都市公園と民有地を活用した大規模で緑あふれるオープンスペースを創出し、都市景観、防災、交流、健康増進に資する空間づくりを進める考えです。
西宮北口の都市機能を南東へ広げる可能性

出展:GoogleMAP
今回の工場等跡地再編は、西宮北口駅周辺に集積してきた都市機能を、南東方向へ広げる可能性を持っています。西宮北口は、阪急西宮ガーデンズ、兵庫県立芸術文化センター、教育・住宅機能が集まる阪神間有数の都市拠点です。対象地は、その西宮北口から約900m圏にあるまとまった土地であり、既存拠点を補完・拡張する位置にあります。
JR新駅と自由通路が実現すれば、阪急西宮北口、JR西宮、JR甲子園口の中間に、新たな回遊軸が生まれる可能性があります。JR線をまたぐ南北動線が確保されることで、鉄道、歩行者空間、緑地、複合都市機能を一体的に再編する契機にもなります。
この点で、津門飯田町外工場等跡地は、西宮市の都市構造そのものを、鉄道・土地利用・歩行者ネットワークの3点から組み替えるポテンシャルを持つエリアです。
今後は2027年度以降の基本協定が焦点
建設通信新聞は、今後の流れとして、2027年度以降に関係事業者間で基本協定を締結する方針だと報じています。検討テーマは、土地利用、基盤整備、JR横断通路、ウォーカブルなまちづくり、鉄道とまちづくりの連携などです。| 時期 | 主な動き | 内容 |
|---|---|---|
| 2019年12月 | 森永乳業近畿工場が操業停止 | 対象地を構成する主要工場の一つが操業を終了 |
| 2024年3月 | ニッカウヰスキー西宮工場が操業停止 | 大規模工場跡地化が進行 |
| 2024年12月 | アサヒビール西宮東配送センターが操業停止 | 工場・配送拠点跡地がまとまった開発候補地に |
| 2025年2月 | まちづくり協議会を設立 | 西宮市と大和ハウス工業が土地利用・基盤整備の検討を開始 |
| 2025年3月25日 | 西宮市とJR西日本が包括連携協定を締結 | JR新駅設置や歩行者・自転車横断通路設置の可能性検討を明記 |
| 2026年6月30日 | まちづくり方針 vol.1 を公表 | GREENを軸にした複合都市拠点、JR横断通路、新駅、多様なモビリティなどを検討事項に |
| 2027年度以降 | 基本協定を締結予定 | 関係事業者間で土地利用、基盤整備、鉄道とまちづくりの連携方針を具体化 |
| 今後 | 都市計画・事業計画を検討 | 建物規模、事業費、着工時期、開業時期、新駅の具体化などは未定 |
現時点では、都市計画決定、建物規模、事業費、着工時期、開業時期などは未定です。しかし、約12haの大規模工場等跡地について、西宮市、大和ハウス工業、JR西日本が同じテーブルで方針をまとめた意味は大きいです。
阪神間に残された貴重な一等地が、住宅地として消費されるだけで終わるのか。それとも、鉄道、緑、都市機能を一体化した新しい都市拠点へ育つのか。津門飯田町外工場等跡地は、今後の西宮市の都市再編を占う重要案件になりそうです。
出典
- 西宮市「津門飯田町外工場等跡地(森永乳業工場等跡地)のまちづくり方針について」
- 西宮市「津門飯田町外工場等跡地 まちづくり方針 vol.1」
- JR西日本「西宮市とのまちづくりに関する包括連携協定について」
- 建設通信新聞「西宮市/27年度以降に基本協定/津門飯田町外工場等跡地まちづくり方針を公表」
- 西宮つーしん「森永乳業跡地にJRの新駅ができるかも。でかい公園とか商業施設とか」
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