
岡山市中心部で進められている大型複合開発「杜の街グレース」の第Ⅱ期開発が始動しました。
両備グループは2026年6月8日、岡山市北区下石井の「杜の街グレース」で、第Ⅱ期開発のスタートとなるE棟タワーマンション棟の起工式を行いました。建設されるのは、地上28階、高さ約108m、総戸数332戸の分譲タワーマンションです。竣工は2029年2月を予定しています。
今回の計画は、単なる「2棟目のタワーマンション建設」ではありません。岡山中心部に住む人を増やし、商業、オフィス、ヘルスケア、交通、将来の集客施設を一体で成立させるための、都市機能の積み上げです。
人口減少、高齢化、建設費高騰という逆風の中で、なぜ両備グループはこの開発を前に進めるのか。そこに、地方中核都市の再都市化を考える上で重要なヒントがあります。
第Ⅱ期の第1弾は、28階建て・332戸のタワーマンション

第Ⅱ期開発では、敷地内にある既存駐車場北側に、地上28階建てのタワーマンションと立体駐車場を整備します。
起工式には開発関係者約30人が出席し、両備ホールディングスの松田敏之CSOらがくわ入れを行い、工事の安全を祈願しました。
計画概要は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 杜の街づくりプロジェクトⅡ E棟タワーマンション棟 |
| 所在地 | 岡山市北区下石井2丁目9番150の一部 |
| 用途 | 分譲住宅 |
| 総戸数 | 332戸 |
| 階数 | 地上28階、塔屋2階 |
| 高さ | 約108m |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 |
| 敷地面積 | 9,490.69㎡ |
| 建築面積 | E棟 1,509.74㎡、E-2棟 1,715.75㎡ |
| 延べ面積 | E棟 34,469.11㎡、E-2棟 11,747.14㎡ |
| 発注者 | 両備ホールディングス、京阪電鉄不動産、フジタ共同企業体 |
| 設計監理 | アーキスコープ |
| 施工者 | フジタ広島支店 |
| 工期 | 2026年5月着工、2029年2月竣工予定 |
旧イトーヨーカドー岡山店跡地を再編した大規模複合開発

先行開発エリアの配置図
杜の街グレースは、2017年に閉店した旧イトーヨーカドー岡山店跡地を含む約3.8haの敷地で進められている大規模複合開発です。第Ⅰ期開発は2019年に着工し、2022年9月に全施設が完成しました。整備されたのは、タワーマンション、オフィス棟、商業棟、ヘルスケア施設、店舗棟、駐車場・駐輪場などです。第Ⅰ期で整備された主な施設は次の通りです。
| 施設 | 内容 |
|---|---|
| 岡山 ザ・タワー | 地上37階、高さ約134m、総戸数363戸のタワーマンション |
| オフィススクエア | オフィス・商業機能 |
| オフィススクエア アネックス | 商業・ヘルスケア機能 |
| モリノマチプラザ | 店舗・集客機能 |
| 駐車場・駐輪場 | 商業施設利用者向け機能 |
共用施設は、地方中核都市の高級レジデンス仕様へ
E棟タワーマンション棟では、共用施設も充実させる計画です。1階にはガーデンテラスとライブラリーラウンジ、2階にはラウンジ、ゲストルーム2室、スタディルーム、フィットネスルーム、ゴルフレンジを配置。21階にはスカイラウンジを設ける予定です。
ガーデンテラスには、SOLSOの齊藤太一氏が監修する植栽を導入し、雲海システムや杜の街グレース内店舗と連携したバーベキューエリアも計画されています。
設備面では、免震構造、非常用発電機、防災備蓄倉庫、各階クリーンステーション、顔認証システム、EV充電対応駐車場などを導入します。駐車場は自走式立体駐車場178台分を整備し、そのうち18台がEV充電に対応。4住戸限定で専用カーガレージも設けられる予定です。
住戸設備としては、ディスポーザー、マイクロバブル給湯器、キッチン自動水栓、浴室ホーローパネル、トランクルームなどを採用します。
専有部の広さだけでなく、くつろぎ、学び、交流、健康を日常に取り込む設計です。大都市圏の高級タワーマンションで見られる共用機能の充実が、地方中核都市の中心部でも本格化していることが分かります。
なぜ両備グループがタワーマンションを開発するのか
ここからが、このニュースの本質です。両備グループは、単にマンションを売りたいからタワーマンションを建てているわけではありません。両備は交通、物流、不動産、商業、生活サービスなどを展開する地域インフラ企業です。その両備が岡山中心部でタワーマンションを建てる意味は、街区内に「日常的にいる人」を増やすことにあります。
商業施設だけでは、客足は天気、イベント、流行、テナント力に左右されます。オフィスだけでは、夜間や休日の人流が弱くなります。ホテルは観光需要や出張需要に影響されます。しかし住宅は違います。入居者は毎日そこに暮らします。買い物をし、食事をし、医療やサービスを利用し、周辺を歩きます。つまりタワーマンションは、杜の街グレースにとって「人口アンカー」です。街区に固定された居住人口を生み、商業、ヘルスケア、交通、駐車場、将来の集客施設を支える基礎になります。
杜の街グレースが目指しているのは、イベント時だけに人が集まる施設ではなく、平日も休日も、朝も夜も、人の気配がある街です。そのためには、住宅機能が不可欠です。
建設費高騰でも進める理由

今回の開発で注目されるのは、建設費が上昇する中でも計画が止まっていないことです。
建築資材価格の高騰、人手不足に加え、中東情勢の悪化による原油関連資材の調達不透明感も指摘されています。全国では、建設費の上昇によって延期や中止を迫られる再開発計画も出ています。
その中で、杜の街グレース第Ⅱ期が前に進む理由は、いくつか考えられます。
第一に、中心部の都心居住ニーズが強いことです。
高齢化が進む中で、駅、商業施設、医療、公共交通に近い便利な場所へ住み替えたいという需要は高まっています。車に依存しなくても暮らしやすい都心部は、地方都市でも価値を増しています。
第二に、第Ⅰ期ですでに街区の実績があることです。
杜の街グレースは、これからゼロからつくる街ではありません。すでに住宅、オフィス、商業、ヘルスケア機能が整備され、人が訪れる場所になっています。第Ⅱ期の購入者は、完成後の生活を具体的にイメージしやすくなります。
第三に、分譲マンションは資金回収の見通しを立てやすいことです。
商業施設やホテルは、完成後に賃料収入や宿泊収入を長期で積み上げる必要があります。一方、分譲マンションは販売によって資金を回収できます。建設費が上がる局面では、弱い立地の新築マンションは厳しくなりますが、中心部の希少立地では価格転嫁しやすくなります。
第四に、施工体制を確保できていることです。
現在の建設市場では、建設費だけでなく、施工会社や人員を確保できるかも重要な問題です。今回の計画では、発注者に両備ホールディングス、京阪電鉄不動産、フジタが入り、施工者はフジタ広島支店です。計画を実行できる体制を組めていること自体が、前に進む大きな条件になります。
そして第五に、土地を寝かせることによる機会損失が大きいことです。
杜の街グレースは岡山中心部の大規模街区です。第Ⅰ期でつくった街区価値を高めるには、未利用・暫定利用の土地を段階的に開発し、街全体の密度を上げる必要があります。
建設費が高いから止めるのではなく、中心部の価値が高まる局面だからこそ進める。そこに、今回の判断の意味があります。
今後の焦点は、約6,800㎡のバス乗り場部分
杜の街グレースの開発は、今回のE棟タワーマンション棟で終わるわけではありません。報道によると、現在バス乗り場として使われている約6,800㎡の敷地では、今後、集客施設などの整備が検討されています。両備グループは、2036年までに全ての開発を終えたい考えです。第Ⅰ期では、住宅、オフィス、商業、ヘルスケアを整備しました。第Ⅱ期第1弾では、2棟目のタワーマンションと立体駐車場を整備します。そして将来的には、バス乗り場部分に新たな集客機能が加わる可能性があります。この流れが実現すれば、杜の街グレースは単なる複合施設ではなく、岡山中心部の人の流れを変える街区になります。住宅が日常人口を生み、商業が滞在価値を高め、オフィスが平日の人流をつくり、ヘルスケアが生活機能を支え、将来の集客施設が外から人を呼び込む。この循環をつくれるかが、杜の街グレース第Ⅱ期以降のポイントです。
岡山中心部を“住む街”に戻す人口アンカー
杜の街グレース第Ⅱ期の本質は、タワーマンションの高さや戸数だけではありません。本質は、岡山中心部に暮らす人を増やし、街区全体の都市機能を強くすることです。地方都市では、郊外に広がった都市機能を従来通り維持することが難しくなっています。人口減少と高齢化が進む中で、生活機能を中心部へ集め直す動きは、今後さらに重要になります。杜の街グレース第Ⅱ期は、その岡山版の取り組みと見ることができます。
建設費高騰の中でも、中心部に投資を続ける。住宅を増やし、日常消費を生み、商業やヘルスケアを支え、将来の集客施設につなげる。これは単なるマンション開発ではなく、地方中核都市の中心部を再び強くするための都市経営です。2029年2月に完成予定のE棟タワーマンション棟、そして2036年を目標とする杜の街グレース全体開発。岡山中心部の景観と人の流れは、今後さらに変わっていきそうです。
出典元
・両備ホールディングス株式会社「杜の街グレース 第Ⅱ期開発が始動 岡山中心部の未来を拓く、E棟タワーマンション起工式を開催」・TSCテレビせとうち「杜の街グレース/第2期開発のスタートとなるタワーマンション棟の起工式【岡山】」
・岡山放送「岡山市中心部の大型複合施設で2棟目となる28階建てタワーマンション起工式」
・KSB瀬戸内海放送「両備グループが杜の街グレースに2棟目のタワーマンション建設開始 岡山市」
・杜の街グレース2期 計画概要資料
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