出展:天理市
奈良県天理市で、ローカル線の無人駅を活用した宿泊施設が誕生しました。JR桜井線、愛称「万葉まほろば線」にある櫟本駅(いちのもとえき)の木造駅舎を改修した「CÉUEU 櫟本駅」が、2026年7月4日に開業しました。櫟本駅は1898年に建てられた歴史ある駅舎で、老朽化に伴いJR西日本から天理市へ譲渡されていました。天理市は駅舎の利活用を公募し、株式会社立志社による「JR櫟本駅直結ホテルプロジェクト(まほろばプロジェクト)」を採択しました。
注目したいのは、単に古い駅舎を宿泊施設に変えたことではありません。天理市が描いているのは、JR櫟本駅を入口に、万葉まほろば線、和歌山線、大和路線の沿線地域をひとつのホテルのように見立てる構想です。無人駅や沿線集落の古民家・空き家を宿泊施設として活用していく計画で、櫟本駅のホテル化はその第一弾にあたります。
築128年の駅舎を、1日1組限定の宿泊施設へ

出展:CÉUEU 櫟本駅
「CÉUEU 櫟本駅」は、駅舎を丸ごと宿にした1日1組限定の宿泊施設です。定員は2〜4名。ミニキッチンやWi-Fiを備え、客室からはホームを望むことができます。アクセスはJR櫟本駅徒歩0分。まさに「駅に泊まる」ための施設です。
出展:CÉUEU 櫟本駅
報道によると、施設は夜行列車をイメージしたつくりで、列車が通るとガタンゴトンという音が聞こえます。ロフトにはつり革も設けられ、鉄道駅ならではの雰囲気を楽しめる空間になっています。宿泊料金は、2人利用の場合で1人1万3200円からと報じられています。| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | CÉUEU 櫟本駅 |
| 所在地 | 奈良県天理市櫟本町瓦釜1418番地 |
| 交通 | JR桜井線・万葉まほろば線 櫟本駅徒歩0分 |
| 建物 | 1898年築の木造駅舎 |
| 開業日 | 2026年7月4日 |
| 宿泊形態 | 1日1組限定の駅舎ステイ |
| 定員・設備 | 2〜4名、ミニキッチン、Wi-Fi、ホームを望む客室 |
| 料金 | 2人利用時、1人1万3200円からと報道 |
| 運営 | 株式会社立志社 |
| 事業名 | JR櫟本駅直結ホテルプロジェクト、まほろばプロジェクト |
| 行政側の狙い | 駅舎の利活用、地域活性化、交流・もてなし拠点化 |
| 将来展開 | 沿線の古民家・空き家を5〜10棟程度、宿泊施設として活用 |
| 関連施設 | JR柳本駅舎レストランのカフェ化、天理トレイルセンター内「洋食Katsui」のメインダイニング化 |
| 期待効果 | 滞在型観光、マイクロツーリズム、空き家対策、沿線地域の経済活性化 |
地方の鉄道駅では、利用者の減少や駅舎の老朽化、無人化が進んでいます。従来なら維持管理コストと見なされがちな駅舎も、宿泊機能を持たせることで、地域の記憶や風景を体験できる観光資源へと変わります。
本質は“沿線まるごとホテル”構想

出展:CÉUEU 櫟本駅
天理市の事業概要では、JR万葉まほろば線、和歌山線、大和路線の沿線地域を一体のホテルと見立て、無人駅の駅舎や沿線集落の古民家・空き家を宿泊施設として活用していく方向性が示されています。つまり、櫟本駅は単体のホテルではなく、沿線型・分散型ホテルの入口です。
駅でチェックインし、地域を歩き、古民家に泊まり、周辺の飲食店や観光資源を巡る。そうした滞在の流れを生み出せれば、鉄道駅は単なる乗降場ではなく、地域を回遊する起点になります。
JR西日本管内初の“泊まれる駅舎”として注目

出展:CÉUEU 櫟本駅
奈良政経新聞は、駅舎を利用した宿泊施設はJR西日本管内で初と報じています。天理市の並河健市長もXで、JR西日本管内初の「泊まれる駅舎」として紹介し、128年の駅舎が一棟貸しの宿に生まれ変わったと発信しました。MBSの報道では、開業日の7月4日に記念式典と内覧会が行われ、出席者がホームを出発する列車を窓から眺める様子も紹介されました。並河市長は、奈良県内に点在する文化財をしっかりつないでいきたいとの考えを示しています。
話題を集めているのは「泊まれる駅舎」という分かりやすい新しさです。ただ、この事業の意味はそれだけにとどまりません。駅舎保存、ローカル線再生、空き家活用、滞在型観光をひとつの取り組みに重ねている点にこそ、地域再生のモデルとしての面白さがあります。
奈良観光を“日帰り型”から“滞在型”へ変えられるか
奈良観光は、大阪や京都から近いため、日帰りになりやすいという課題を抱えてきました。一方で、奈良には古墳、社寺、古道、里山、旧街道、古民家など、時間をかけて巡りたい資源が数多くあります。櫟本駅周辺も、古代豪族・和爾氏の拠点として知られる歴史深い地域です。鉄道駅を滞在拠点に変える取り組みは、こうした地域資源を点ではなく線でつなぐ可能性があります。
櫟本駅のホテル化は、施設規模だけを見れば小さなプロジェクトです。しかし、駅舎、古民家、空き家、沿線集落、飲食、観光動線を束ねる考え方は、ローカル線沿線の再生モデルとして大きな意味を持っています。
まとめ:駅は交通施設から、地域の滞在拠点へ

出展:天理市
これからのローカル線沿線では、駅を「列車に乗る場所」としてだけでなく、地域の価値を伝える拠点として捉える発想が重要になります。人口減少が進む地域では、すべての駅を従来型の交通インフラとして維持し続けることには限界があります。一方で、駅には地名、歴史、風景、交通結節点としての力があります。そこに宿泊、飲食、観光案内、地域交流といった機能を重ねれば、駅は人が立ち寄り、滞在する場所へと変わります。
通過する駅から、泊まる駅へ。
JR櫟本駅の「CÉUEU 櫟本駅」は小さなホテルです。しかし、その背後には、無人駅を起点に沿線全体をホテル化するという野心的な地域再生の構想があります。奈良の滞在型観光だけでなく、全国のローカル線沿線にとっても示唆のある取り組みになりそうです。
出典・参考資料
- CÉUEU 櫟本駅 公式サイト
- 天理市「JR櫟本駅舎利活用」
- JR西日本「櫟本駅|駅情報」
- MBS NEWS DIG「無人駅がホテルに!老朽化が進んだ木造駅舎を改修」
- 日刊スポーツ/共同通信「無人駅舎を改修しホテルに 夜行列車をイメージ 木造築128年」
- 奈良政経新聞「JR櫟本駅舎、宿泊機能備え再生」
- 並河健・天理市長 公式X投稿
Visited 80 times, 80 visit(s) today

