なぜ今、この施設なのか 大阪府が青少年海洋センターを「公有地活用の試金石」に選んだ理由

出典:大阪府

大阪府は、**大阪府立青少年海洋センター**および隣接する淡輪ヨットハーバーを対象に、公有地活用を見据えた市場調査(民間ヒアリング)を開始しました。
本件は、具体的な事業計画や事業者選定を行うものではなく、公有地活用方針の策定に向け、民間事業としての成立可能性や事業条件を把握するための初期段階の調査に位置付けられています。

本稿では、単なる事実整理にとどまらず、「なぜ数ある府有施設の中から、この場所が選ばれたのか」という点を軸に、大阪府の意図と背景を読み解きます。

まず押さえるべき前提:今は「事業」ではなく「市場調査」

今回の取り組みは、再開発事業の開始や民間事業者の公募ではありません。大阪府が実施しているのは、いわゆるサウンディング型市場調査です。


  • 公有地を活用した民間事業は成立するのか

  • どのような集客機能が想定されるのか

  • 事業成立の条件や制約は何か

といった点について、民間事業者から幅広く意見を聴取することが目的です。用途、開発規模、事業スキームはいずれも未定であり、結論を出す前段階にあります。

対象はどんな施設か:海沿いに広がる大規模な府有地

出典:大阪府

市場調査の対象は、南海本線「淡輪」駅から徒歩約10分の海岸部に立地する、以下の2施設です。


府立青少年海洋センター

  • 開設:1975年

  • 敷地面積:112,486.57㎡

  • 延床面積:17,356.47㎡

  • 主用途:青少年宿泊研修・体験学習施設

  • 定員:300人(ファミリー棟〈定員80人〉は休館中)

淡輪ヨットハーバー

  • 開設:1984年

  • 水域面積:100,000㎡

  • 陸域面積:22,000㎡

  • 海上係留:208艇

  • 陸上保管:166艇

いずれも大阪府が土地を所有しており、海・陸・水域を一体的に検討できる公有地という点が大きな特徴です。

なぜこの施設がターゲットになったのか

今回の市場調査で重要なのは、「老朽化したから」「空いているから」といった単純な理由ではありません。この施設が選ばれた背景には、複数の条件が重なっています。


① 立地とスケールが突出している

  • 海沿い立地

  • 駅徒歩圏

  • 約11万㎡の敷地と10万㎡規模の水域

  • 府有地として一体利用が可能

これは、民間が一から集めることがほぼ不可能な条件です。大阪府にとっては、眠らせておくにはあまりにも資産価値が高い公有地といえます。


② 本来の役割が制度的に終わりつつある

青少年海洋センターは、1970年代に臨海学校や合宿を前提として整備されました。しかし現在は、少子化や学校行事の縮小、合宿需要の減少などにより、教育施設としての将来像を描きにくくなっています。「まだ使えるが、今後の役割が見えない」この状態は、行政にとって最も扱いづらく、放置できない段階です。


③ 府単独での再生が現実的ではない

海沿い立地、マリーナ隣接、宿泊機能、さらに海上構造物を含む施設群は、建築、海域利用、運営、安全管理、集客まで含めると、行政単独で再設計・再生できる範囲を超えています。だからこそ大阪府は、最初から「答えを出す」のではなく、民間に成立条件を語らせる市場調査という手法を選びました。

実は全国的にも珍しい建築を含む施設

出展:Sakakura Associates 坂倉建築研究所

府立青少年海洋センターには、国内でも例の少ない海上建築が含まれています。研修棟の一部は海上に張り出す構造となっており、海底から立ち上がる4本のピアによって支持されています。外装には耐候性鋼板が用いられ、1970年代の公共建築としては異例の外観を持ちます。


建築概要

  • 竣工年:1975年

  • 用途:青少年宿泊研修施設

  • 建築面積:4,106㎡

  • 延床面積:10,781㎡

  • 階数:地上6階

  • 構造:鉄筋コンクリート造(RC造)

  • 設計:坂倉建築研究所

この建築は差別化資産になり得る一方、維持・改修・法規・安全面では事業リスクにもなります。市場調査では、こうした既存建築をどう扱うかも重要な論点となります。

ヒアリングはいつまで? 次に何が起きるのか

民間ヒアリングは、PwCアドバイザリー合同会社と中央コンサルタンツ株式会社(大阪支店)による共同企業体が実施します。


  • 実施期限:2026年1月30日まで

  • 実施形式:オンラインまたは対面

  • 参加形態:企業単独または複数社によるグループ参加

事業化の時期については検討中としつつ、


  • 短期:2029年度ごろ

  • 中長期:2035年度ごろ

を目安として示していますが、市場調査の結果次第で見直される前提です。

公有地活用は「結論」ではなく「条件整理」から始まる

今回の市場調査は、施設再生の結論を出す場ではありません。大阪府が本当に知りたいのは、


  • 民間はどこまでリスクを取れるのか

  • 行政支援が必要なポイントはどこか

  • どの条件が事業成立の分岐点になるのか

という現実的な成立条件です。

この調査を経て初めて、公有地活用の方向性が定まり、次の段階へ進むことになります。






出典元

Visited 371 times, 371 visit(s) today