
平和不動産とヒルトンは、京都市中心部の四条烏丸に「モットーbyヒルトン京都四条烏丸」を開業します。2029年度の開業を予定しており、ヒルトンのライフスタイルブランド「Motto by Hilton」としては日本初進出となります。
計画地は地下鉄四条駅、阪急烏丸駅から徒歩約2分。敷地面積は約580㎡と小規模ながら、地上10階、108室を配置します。Mottoは、広い客室や大型宴会場を売りにする従来型のフルサービスホテルとは異なり、コンパクトな客室、都市中心部の立地、共用空間、そして街との接続性を商品価値とするブランドです。
さらに事業主の平和不動産は、東京・兜町で「キャプション by Hyatt」を開業し、京都ではMinor Hotels系の「Avani」も計画しています。今回のMottoは、同社が外資系ライフスタイルホテルを軸に、ホテル事業を本格的に拡大している流れの中に位置付けると、その意味がより明確になります。
四条烏丸の一等地、580㎡に108室

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ホテル名 | モットーbyヒルトン京都四条烏丸 |
| 事業名 | (仮称)京都四条烏丸プロジェクト |
| 所在地 | 京都市下京区四条通新町東入月鉾町54 |
| 交通 | 地下鉄「四条」駅・阪急「烏丸」駅から徒歩約2分 |
| 敷地面積 | 約580㎡ |
| 延床面積 | 約4,300㎡ |
| 規模 | 地上10階 |
| 客室数 | 108室(予定) |
| 主な施設 | オールデイダイニング、オープンテラス付きラウンジ |
| 事業主 | 平和不動産 |
| 運営 | ヒルトン |
| 基本設計 | 竹中工務店 |
| 開業 | 2029年度予定 |
一方、敷地は約580㎡にとどまります。大型のフルサービスホテルを成立させるには制約の大きい土地ですが、Mottoにとってはむしろ好条件です。
限られた敷地に108室を効率よく配置し、飲食や交流機能を共用部に集約する。「広さ」ではなく「立地」を最大化するホテルだからこそ成立する計画です。
「Motto」とは何か 客室より街を売るホテル

モットーbyヒルトン・ニューヨークシティ
Motto by Hiltonは、ヒルトンが展開する都市型ライフスタイルブランドです。基本思想は明快です。ホテル内部ですべてを完結させるのではなく、街そのものを滞在体験に取り込むことです。| 項目 | Motto by Hiltonの特徴 |
|---|---|
| 基本思想 | 街の中心に泊まり、周辺を楽しむ |
| 主な立地 | 都市中心部、人気観光エリア |
| 客室面積 | 約15~22㎡程度が中心 |
| 客室設計 | 多機能家具、収納式ベッド、二段ベッドなど |
| 共用部 | ラウンジ、バー、レストランなどを重視 |
| グループ利用 | コネクティングルームを積極活用 |
| 接続可能室数 | 一部ホテルでは最大9室 |
| 滞在価値 | 客室面積より「立地+街+交流」 |
マリオットのMoxyやcitizenMなどと同様、近年世界の大都市で存在感を強めている高効率型ライフスタイルホテルの一つと位置付けられます。
特徴的なのがコネクティングルームです。1室を大型化するのではなく、人数に応じて複数の客室を組み合わせる設計思想を採用しています。一部ホテルでは最大9室まで接続でき、家族旅行や友人グループなどにも対応します。
580㎡の狭小地を「弱点」にしない商品設計
四条烏丸とMottoの組み合わせは合理的です。京都中心部は土地価格が高く、ホテル事業では「客室を広く取るほど客室数が減る」という構造的なトレードオフが生じます。
Mottoはここで発想を逆転させます。
客室を必要十分な広さに抑え、その代わりに地下鉄・私鉄・飲食・商業・観光が集中する一等地を確保する。宿泊者はホテル内に閉じこもるのではなく、街へ出て食事や買い物、観光を楽しみます。
つまり、建物の中だけでホテル商品を完成させる必要がありません。「ホテルを大きくする」のではなく、「街をホテルの一部として使う」。Mottoの本質はここにあります。オールデイダイニングやオープンテラス付きラウンジを設ける一方、大型宴会場などは抱え込まない。約580㎡という土地条件に対する、一つの明確な回答です。
平和不動産、Caption・Avani・Mottoへ

Caption by Hyatt 兜町 東京
もう一つの重要な視点が、事業主である平和不動産です。同社は長期ビジョン「WAY 2040」でホテル事業を新たな成長分野の一つに位置付け、近年、外資系ライフスタイルブランドを相次いで導入しています。| Caption by Hyatt 兜町 東京 | Motto by Hilton 京都四条烏丸 | Avani Kyoto(仮称) | |
|---|---|---|---|
| 外資グループ | Hyatt | Hilton | Minor Hotels |
| 平和不動産の関与 | 開発 | 事業主 | 共同事業 |
| 開業 | 2025年10月 | 2029年度予定 | 2029年度内予定 |
| 客室数 | 195室 | 108室 | 240室 |
| ブランド性格 | アップスケール・フォーカストサービス | 都市型ライフスタイル | プレミアム・ライフスタイル |
| 客室 | 標準22~28㎡ | コンパクト設計 | ― |
| 主な共用部 | Talk Shop | ダイニング+テラスラウンジ | レストラン+ロビーラウンジ |
| キーワード | 地域のハブ | 街を楽しむ拠点 | 歴史・文化との融合 |
一方、京都では旧京都新聞本社ビルを活用し、Minor Hotels系の「Avani」を導入する計画も進めています。既存建物の歴史を継承しながら、240室のプレミアム・ライフスタイルホテルへ転換します。
価格帯や商品設計は異なりますが、3案件には共通項があります。
外資系ブランドを導入し、ホテル単体ではなく、地域や街との接点まで含めて滞在価値をつくることです。
兜町ではCaption、京都御所南ではAvani、四条烏丸ではMotto。平和不動産は、オフィスを中心とした従来型不動産事業から、ホテルによって「滞在」「交流」「回遊」を生み出す街づくりへと事業領域を広げています。
ヒルトンは京都を「ブランドポートフォリオ都市」に

京都ブライトンホテル キュリオ・コレクションbyヒルトン(仮称)
ヒルトン側にとっても、京都は特別な市場になりつつあります。2021年の「ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts」を皮切りに、ダブルツリー、ヒルトン・ガーデン・イン、ヒルトン本体など、異なる価格帯・用途のブランドを相次いで投入しています。Mottoが開業すれば、京都市内では7軒体制となる見通しです。
| 開業 | ホテル | 主な位置付け |
|---|---|---|
| 2021年 | ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts | ラグジュアリー |
| 2022年 | ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸 | セレクトサービス |
| 2023年 | ダブルツリーbyヒルトン京都東山 | アップスケール |
| 2024年 | ダブルツリーbyヒルトン京都駅 | 京都駅前 |
| 2024年 | ヒルトン京都 | 基幹ブランド |
| 2028年冬予定 | 京都ブライトンホテル キュリオ・コレクションbyヒルトン(仮称) | ライフスタイル |
| 2029年度予定 | モットーbyヒルトン京都四条烏丸 | 都市型ライフスタイル・日本初 |
これは京都を単なる観光需要の強い出店先としてではなく、ラグジュアリーからセレクトサービス、ライフスタイルまで複数ブランドを重ね、需要を細分化して取り込む市場として捉えていることを示しています。
京都はヒルトンにとって、いわば日本におけるブランドポートフォリオのショーケースになりつつあります。
「ホテルの広さ」から「街との接続」へ
「モットーbyヒルトン京都四条烏丸」を読み解く鍵は、108室という客室数そのものではありません。重要なのは、約580㎡という限られた土地を、世界的ホテルブランドの商品設計によって収益資産へ転換する仕組みです。フルサービスホテルのように多くの施設を館内に抱え込まず、必要な機能を絞り込む。その代わりに、一等地へのアクセスと周辺都市機能をホテルの商品価値へ取り込みます。
これは高地価化が進む都市中心部において、ホテル開発の一つの有力な解答になり得ます。そして平和不動産にとっては、Caption、Avaniに続くホテル戦略の新たな一手です。
「ホテルの中で何を提供するか」から、「ホテルが街とどうつながるか」へ。
Mottoの日本初進出は、京都のホテル供給がさらに増えるというニュースにとどまりません。都市中心部の狭小地をどう事業化し、外資系ブランドをどう街づくりに組み込むのか。その先行事例としても注目されます。
出典・参考資料
- 平和不動産・ヒルトン「ヒルトンのライフスタイルブランド『モットーbyヒルトン』が日本初進出!」(2026年8月6日)
- Hilton「Motto by Hilton」ブランド公式情報
- Hilton Stories「Motto by Hilton」ブランド情報
- Hyatt Hotels Corporation「Caption by Hyatt Kabutocho Tokyo」開業発表
- 平和不動産「キャプション by Hyatt 兜町 東京」関連資料
- 平和不動産「旧京都新聞本社ビルを活用したホテル開発/Avani日本初進出」
- Hilton「Hilton Kyoto」開業発表・京都におけるホテルポートフォリオ
- Hilton/ブライトンコーポレーション「京都ブライトンホテル キュリオ・コレクションbyヒルトン」計画
- TRAICY「モットーbyヒルトン京都四条烏丸、2029年度開業」
- 日本経済新聞 関西版 公式X
Visited 104 times, 105 visit(s) today
