南都銀行旧本店の利活用が具体化。関電不動産開発を優先交渉権者に選定

南都銀行旧本店の利活用計画が、構想段階から具体的な事業検討フェーズに入りました。南都銀行は2025年2月に本店機能を奈良市大宮町の新本店へ移転し、同年6月25日には旧本店活用の優先交渉権者として関電不動産開発株式会社を選定しました。今後は建物の詳細調査を進め、近隣地域のにぎわい創出につながる施設へのリニューアルを具体化していく方針です。

旧本店は奈良を代表する近代銀行建築

旧本店のうち最も古い部分は、1926年(大正15年)4月に旧六十八銀行奈良支店として竣工しました。奈良郵便電信局跡地に建てられたもので、設計監理は長野宇平治氏、施工は大林組が担当。構造はRC造3階建て、一部4階建て、地下1階で、正面に円柱を配した古代ギリシア建築様式を取り入れた外観を特徴とします。1997年には国の登録有形文化財に指定されました。

南都銀行は、この登録有形文化財部分について、文化的・歴史的価値を維持しながら保存活用する方針を示しています。再整備にあたっても、外観を生かす方向で検討が進められています。

本店移転により、旧本店は再活用段階へ移行

南都銀行は2025年2月10日、新本店での業務を開始しました。これにより、橋本町の旧本店は営業を終了し、利活用に向けた準備段階へ移行しました。

移転の背景には、建物の老朽化に加え、バリアフリー対応の不足や設備面の制約があったとされています。つまり今回の再整備は、歴史的建築を残しつつ、現代の都市機能に適合する新たな役割を与える取り組みでもあります。

対象は文化財部分だけでなく、旧本店全体

今回の利活用対象は、1926年竣工の旧館だけではありません。旧本店はその後2度の増改築を経ており、全体では敷地面積約3,854.99㎡、建物は地下2階・地上9階建て、延床面積約10,771.69㎡の規模となっています。

このため、事業の焦点は文化財建築の保存にとどまらず、後年の増築部分を含めた全体再編にあります。登録有形文化財部分は保存活用の方向ですが、その他の部分については今後の詳細調査や協議の中で再整備の内容が固められる見通しです。

2024年に地域から活用アイデアを募集

南都銀行は2024年、旧本店の活用方法について広く意見を募る「南都なら未来アイデアコンテスト」を実施しました。対象は企業や一般の人々で、旧本店を地域のにぎわいや奈良らしさの発信につながる拠点として再生するための提案を集めました。

応募総数は124件にのぼり、文化芸術センター、コワーキングスペース、オープンイノベーション拠点、体験型宿泊施設、地域交流スペースなど、多様な案が寄せられました。この結果からも、旧本店が単なる不動産活用ではなく、観光・文化・交流を担う拠点として期待されていることが分かります。

関電不動産開発を優先交渉権者に選定

南都銀行は2025年6月25日、旧本店利活用の優先交渉権者として関電不動産開発を選定したと発表しました。報道によると、南都銀行は2024年のアイデアコンテストで得た意見を踏まえつつ、昨秋以降、約60の事業者と本格的な協議を進め、その中から総合的に判断して同社を選んだとされています。

関電不動産開発は関西電力の子会社で、関西や関東で市街地再開発や住宅分譲、複合不動産開発を手がけてきた実績があります。今後は同社と連携し、建物調査と具体的な協議を進めていく段階に入ります。

活用の方向性は、にぎわい創出と情報発信

南都銀行はこれまで、旧本店について、奈良市の観光中心地という立地を生かし、ホテルや商業施設など地域価値の向上に資する用途を検討するとしてきました。

加えて、報道では同行担当者が「人々の交流や、奈良の情報発信につながり、近隣地域のにぎわいを創出できる拠点にしたい」と述べています。今後の計画では、宿泊、物販、飲食に加え、文化発信や交流機能を含む複合型の活用が検討される可能性があります。

立地の強さが、この案件の価値を高めている

旧本店が立地する奈良市橋本町は、近鉄奈良駅に近く、興福寺、奈良公園、ならまち方面への動線上にあります。三条通り、東向き商店街、小西さくら通り、もちいどのセンター街にも近接しており、奈良都心部でも特に回遊性の高いエリアです。

このため旧本店の再整備は、一棟単独の再生にとどまらず、周辺商店街の回遊性向上や滞在時間の延伸、観光消費の受け皿強化にもつながる可能性があります。奈良中心部に不足している高付加価値な滞在・交流機能を補えるかどうかが、今後の焦点になりそうです。

現時点で分かっていること

現時点で確定しているのは、旧本店での営業が2025年2月に終了し、新本店への移転が完了したこと、登録有形文化財部分を保存活用する方針であること、2024年にアイデアコンテストを実施し124件の応募があったこと、そして2025年6月25日に関電不動産開発が優先交渉権者に選定されたことです。

一方で、最終的な用途構成、保存範囲の詳細、増改築部分の扱い、設計内容、工事時期、開業時期はまだ公表されていません。現在は、事業の方向性が固まり、詳細な検討に入った段階といえます。






出典元

  • 南都銀行「旧本店利活用の優先交渉権者の選定について」
  • 南都銀行「南都なら未来アイデアコンテスト」関連資料
  • 南都銀行 新本店移転に関する公表資料
  • 日本経済新聞 2025年6月25日付記事
  • 読売新聞 2025年7月1日付記事
  • 朝日新聞 2025年7月3日付記事

Visited 105 times, 105 visit(s) today