アシックス、神戸・ポートアイランドに「ASICS TECHNICAL LAB」開設へ トップアスリート向けシューズ製造と試作開発を担う高付加価値ものづくり拠点、2027年12月稼働予定


アシックスは、トップアスリート向けシューズの新たな生産拠点「ASICS TECHNICAL LAB(アシックステクニカルラボ)」を、神戸市に開設すると発表しました。

所在地は兵庫県神戸市港島南町7丁目1番6。敷地面積は2,420.73㎡で、2027年12月の稼働開始を予定しています。主な機能は、トップアスリート向けシューズの製造、プロトサンプルの制作・検証、シューズ製造技術の伝承、人財育成です。

今回の計画は、単なる生産拠点の新設にとどまりません。研究開発、試作、検証、職人技術、ブランド体験を一体化する、高付加価値型のものづくり拠点として整備されます。創業の地・神戸に、アシックスが改めて技術の中核機能を置く。そこには、スポーツ工学とものづくりの結びつきをさらに強める狙いが見えてきます。

トップアスリートの感覚を製品化する拠点

アシックスは、一般向け製品に加え、アスリートのパフォーマンス向上に特化したオーダーメードシューズも製造しています。

トップアスリート向けシューズでは、足の形状やサイズだけでなく、競技特性、走行フォーム、接地感、フィット感、反発感、安定性など、本人にしか分からない繊細な感覚を反映する必要があります。トップレベルの競技では、わずかな違和感が結果に影響するため、細かな調整が欠かせません。

新施設では、神戸空港に近い立地を活かし、国内外のアスリートが訪問しやすい環境を整備します。施設内には、開放感のあるコミュニティスペースや測定室を設け、アスリートの声を細かく聞き取る体制を構築します。

ASICS TECHNICAL LABは、シューズを「つくる場所」であると同時に、アスリートの感覚を製品開発へつなげる拠点でもあります。現場の声を起点に、測定、試作、検証、改良までの流れを神戸で素早く回していくことが、新拠点の大きな役割となります。

国内試作能力を拡大、開発スピードを高める

出展:アシックス

ASICS TECHNICAL LABでは、プロトサンプルの制作・検証機能も強化されます。

アシックスはこれまでも、海外生産拠点や日本国内でプロトサンプル制作を行ってきました。新施設の開設により、国内での試作能力をさらに拡大します。

同施設は、神戸に拠点を置くアシックススポーツ工学研究所や、一般消費者向け製品の開発部門と連携します。研究で得られた知見を試作に落とし込み、検証結果を改良へつなげることで、開発のスピードと精度を高めていきます。

スポーツシューズの開発では、素材、構造、反発性、軽量化、安定性、耐久性、フィット感などを、競技特性や個人差に合わせて最適化することが求められます。トップアスリート向けの試作現場で磨かれた技術は、将来の量産品にも波及していく可能性があります。

アシックスは稼働当初、トップアスリート向けオーダーメードシューズとプロトサンプル制作を主軸としつつ、将来的にはクラフトマンシップを込めた「日本製」製品の一般消費者向け展開も視野に入れています。また、ものづくりの現場を伝えるため、一般客の見学受け入れも予定しています。

「ASICS TECHNICAL LAB」の概要


項目 内容
施設名称 ASICS TECHNICAL LAB(アシックステクニカルラボ)
所在地 兵庫県神戸市港島南町7丁目1番6
敷地面積 2,420.73㎡
稼働予定 2027年12月
主な機能 トップアスリート向けシューズ製造、プロトサンプル制作・検証、シューズ製造技術の伝承、人財育成
主な製造製品 ランニングシューズ、陸上スパイク、テニスシューズなど

職人技術を次世代へ伝える場に

ASICS TECHNICAL LABには、人財育成の役割もあります。

トップアスリート向けシューズでは、数値化できるデータだけでなく、履き心地、足入れ感、接地時の違和感といった感覚的な要素が重要になります。こうした微細な要望を形にするには、職人による繊細な手仕事が欠かせません。

一方で、この技術はマニュアルだけでは継承しにくい領域です。アスリートとの対話、試作、修正、再検証を繰り返す現場の中で、若手技術者が身体感覚として学び取っていく必要があります。

同施設は、アシックスが長年蓄積してきた製造技術や知見を次世代へ伝え、さらに進化させる場になります。設備や機械だけでは得られない、現場の経験や感度を受け継ぐ拠点としても期待されます。

スポーツ工学研究所との連携

新拠点の強みは、神戸にあるアシックススポーツ工学研究所との連携です。同研究所は「Human-centric science」を掲げ、人間の運動動作を分析し、独自の素材・構造設計技術による製品開発に取り組んでいます。

その知見は、トップアスリート向けランニングシューズ「METASPEED SKY」「METASPEED EDGE」などにも反映されてきました。2025年には、軽量性を追求した「METASPEED RAY」も投入しています。

ASICS TECHNICAL LABの開設により、研究所の知見を試作・製造現場へ素早く落とし込み、アスリート対応で得られたフィードバックを研究側へ戻す循環が強化されます。研究、試作、検証、製造の距離が近づくことで、競技現場の声を製品へ反映しやすくなります。

グローバルR&D強化の日本側中核に

アシックス本社東館

アシックスは近年、グローバルでの研究開発体制を強化しています。2025年12月には米国カリフォルニア州に研究拠点を設立し、ミシガン大学との「ASICS-MICHIGAN SPORT INNOVATION CENTER」を開始すると発表しました。

米国では大学・研究機関との連携を深め、神戸ではスポーツ工学研究所、開発部門、試作・製造現場を近接させる。ASICS TECHNICAL LABは、グローバルな研究ネットワークと神戸のものづくり力を接続する、日本側の中核拠点となります。

業績面でも、アシックスは好調です。2025年12月期連結業績は、売上高810,916百万円、営業利益142,519百万円、親会社株主に帰属する当期純利益98,719百万円。成長局面の中で、研究開発と高付加価値製造へ再投資する姿勢が鮮明です。

ポートアイランドに加わるスポーツ工学型産業拠点

ASICS TECHNICAL LABが立地するポートアイランドは、神戸空港に近接する都市型人工島であり、神戸医療産業都市の中核エリアでもあります。

神戸医療産業都市は、1998年に阪神・淡路大震災からの復興プロジェクトとして始まり、現在は300以上の企業・団体が集積する日本最大級の医療産業都市へと成長しています。

ASICS TECHNICAL LABは医療施設ではありませんが、「人体」「運動」「計測」「素材」「試作」「検証」という観点では、研究開発型産業集積との親和性があります。

神戸は、港湾都市、観光都市、ファッション都市として語られることが多い都市です。その一方で、今回の計画は、世界市場とつながる産業拠点としての神戸の一面にも光を当てるものです。ポートアイランドにスポーツ工学型のものづくり拠点が加わることで、神戸の産業都市としての厚みはさらに増していきます。

まとめ

ASICS TECHNICAL LABは、トップアスリート向けシューズ製造、プロトサンプル制作、技術伝承、人財育成、ブランド体験を一体化する新拠点です。

トップアスリートの声を起点に、研究・試作・製造を近接させ、技術をより早く製品へ反映していく。そこで生まれた知見は、将来的に一般向け製品にも広がっていく可能性があります。

2027年12月の稼働後、神戸発のスポーツ工学と高付加価値ものづくりがどのように進化していくのか、注目です。






出典元

・アシックス公式発表
・アシックススポーツ工学研究所 公式情報
・神戸新聞
・FASHIONSNAP
・SGI Europe
・神戸医療産業都市 関連情報
・アシックス 2025年12月期決算関連資料

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