三菱商事は2025年3月31日、神戸市中央区・ポートアイランド内に、創薬やバイオ分野に特化した研究開発施設「アイパーク神戸(仮称)」を新たに整備すると発表しました。子会社の三菱商事都市開発が神戸市より約3,035㎡の土地を取得し、2026年7月の着工、2027年11月の開業を目指します。先端産業を中核に据えた都市づくりを推進するこの計画は、神戸医療産業都市の進化に寄与するものとして注目を集めています。
賃貸型ラボとして神戸医療産業都市に新拠点誕生へ

計画地は、神戸市が1998年から整備を進めてきた神戸医療産業都市のポートアイランド2期に位置します。神戸新交通ポートライナー「計算科学センター駅」とデッキで直結しており、三宮駅から約16分、神戸空港駅からは約6分という交通利便性に優れた立地です。
建物は鉄骨造地上8階建て、延床面積は約12,000㎡を予定。創薬、バイオ、医療関連企業の研究開発活動を支援する賃貸ラボ型施設として整備され、大手企業からスタートアップまで幅広い企業の入居を想定。柔軟な利用が可能な設計が検討されています。
三菱商事とiPiによる産業エコシステム形成
本プロジェクトは、三菱商事、三菱商事都市開発、アイパークインスティチュート(iPi)の3社が連携して推進します。iPiは、神奈川県藤沢市で運営する「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」を通じて、医療・創薬分野における産業エコシステムの構築ノウハウを有しています。
一方、三菱商事都市開発は、物流施設やシェア型研究拠点など、先端産業向けの不動産開発を多数手がけてきました。こうした知見とiPiの運営力を融合することで、「アイパーク神戸(仮称)」は単なる研究施設にとどまらず、イノベーション創出のプラットフォームとしての役割を果たすことが期待されます。
スーパーコンピュータ「富岳NEXT」との連携で加速する研究革新

本施設の近隣には、理化学研究所計算科学研究センターが所在し、スーパーコンピュータ「富岳」が稼働中です。さらに、後継機である「富岳NEXT」は2030年度の本格運用開始を予定しており、1エクサフロップスを超える性能により、AIを用いた創薬やゲノム解析、分子シミュレーションなどの分野で大きな変革をもたらすと見込まれています。
「アイパーク神戸(仮称)」がこの立地に整備されることで、スタートアップやバイオベンチャーにとって、通常は利用が難しい超大規模な計算リソースへのアクセスが現実のものとなります。これにより研究速度の加速と新技術創出の可能性が広がり、理研や大学研究者との連携も活発化するでしょう。
このエリアはまさに、計算科学とライフサイエンスが融合する“コンピュテーショナル・ライフサイエンス”の新たな拠点としてのポテンシャルを秘めています。
研究開発を起点とした都市構想へ

本計画の根底には、研究開発を軸とした都市づくりという新たな構想があります。産業政策と都市開発を一体的に進めるこのアプローチは、神戸医療産業都市という既存の集積地を活かしながら、都市機能と産業が融合する持続可能なまちづくりのモデルとなり得ます。
三菱商事グループはこれまでにも東京や名古屋、大阪などで都市開発を展開しており、その経験が神戸での新たな挑戦に活かされることになります。「アイパーク神戸(仮称)」は、単なる不動産開発にとどまらず、日本の都市再編の先行事例としても注目されるでしょう。
今後のスケジュールと期待される役割
今後は施設の詳細設計や入居企業の誘致が本格化し、2026年7月の着工、2027年11月の開業が予定されています。富岳NEXTとの技術連携、iPiによるエコシステム運営、三菱商事グループの総合力が結集することで、神戸発のグローバルなイノベーション拠点の形成が期待されます。
「アイパーク神戸(仮称)」は、医療・バイオの未来を切り拓くだけでなく、都市開発における新たなビジョンの象徴ともなるでしょう。今後の動向から目が離せません。