台湾・高雄市に位置する美麗島駅は、MRT紅線(レッドライン)と橘線(オレンジライン)が交わる乗換駅で、高雄最大規模の夜市「六合観光夜市」の最寄り駅です。交通の要所であると同時に、世界的に評価されたパブリックアートを擁する観光スポットとしても知られています。
2012年、米国の旅行サイト「Bootsn All」が発表した「世界で最も美しい地下鉄駅」ランキングで第2位に選ばれ、その名は一躍世界に広まりました。当時ニュースでこの駅の存在を知り、「いつか訪れたい」と思っていた場所。今回の旅行で念願がかない、ついにその圧巻の光景を体験することができました!
駅名に込められた歴史的背景

「美麗島」は英語で「Formosa」を意味し、16世紀にポルトガル船員が台湾島を見て呼んだことに由来します。しかし、駅名は単なる美称ではなく、1979年にこの地で起きた民主化運動「美麗島事件」を記念する意味を持ちます。駅舎のデザインや構内のアートには、この歴史を象徴するモチーフが数多く取り入れられています。
世界最大級のガラスアート「光之穹頂」

美麗島駅の象徴は、コンコース中央に広がる「光之穹頂(The Dome of Light)」です。直径30m、総面積660㎡、4,500枚のステンドグラスを用いた世界最大級のガラスパブリックアートで、イタリアの著名アーティストナルシサス・クアグリアータ(Narcissus Quagliata)が設計。製作には4年半の歳月が費やされ、すべて手作業で組み上げられました。

作品は水・土・光・火の4テーマで構成され、それぞれ人類の歴史と生命の循環を象徴します。
-
水(青):生命の誕生
-
土(緑・オレンジ):自然との共生、高雄市の花・キワタ
-
光(黄):創造と希望
-
火(赤):戦争と死、そして火中から蘇る鳳凰の再生
とりわけ「火」のエリアは、苦しみや喪失から立ち上がる再生の物語を描き、高雄が美麗島事件を経て再び光を迎えた歴史と重なります。
プロジェクションマッピングの迫力

美麗島駅では、毎日11:00、15:00、20:00に開催され、土日には17:00と19:00も追加されるプロジェクションマッピングでは、場内が暗転し、天井と床面を舞台に映像が展開。巨大な龍が動き回り、光芒が行き交う迫力ある演出が、ステンドグラスの色彩と融合して幻想的な空間を生み出します。日常の駅空間が一瞬で別世界に変わる瞬間は、この場所ならではの魅力です。

プロジェクションマッピングでは、場内が一斉に暗転し、天井と床面を舞台に巨大な龍がうねるように動き回り、光芒が縦横無尽に行き交う幻想的な映像が展開されます。四方を包み込む映像演出によって、日常の駅空間が一瞬で別世界へと変貌します。

ショーのフィナーレでは、床面に「EPSON」のロゴマークが浮かび上がります。映像演出には日本メーカーが関わっているようで、日本からの訪問者にとっては少し誇らしい気持ちになる瞬間です。
なぜ美麗島駅を訪れるべきか

美麗島駅は、改札を出るだけで世界最大級のステンドグラスアートを無料で体験できる、極めてアクセス性の高い観光スポットです。「光之穹頂」が放つ色彩は、写真や映像では伝えきれない迫力がありました。
六合観光夜市や周辺観光と組み合わせれば、短時間でも旅程に深い印象を残す時間が作れます。高雄を訪れるなら、美麗島駅は「ついで」ではなく旅のハイライトとして組み込むべき目的地。ここを訪れずに高雄を語ることはできない、そう感じる駅でした!