USJ新オフィシャルホテル「Osaka Sakurajima Resort」2029年開業へ。同一建物内に「インターコンチネンタル」「キンプトン」「ホリデイ・イン リゾート」の3ブランド計817室を展開!


ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に隣接する大阪市此花区・桜島エリアで、大規模ホテルプロジェクト「Osaka Sakurajima Resort」が2025年12月に本格着工しました!

運営は英IHGホテルズ&リゾーツ(国内運営:IHG・ANA・ホテルズグループジャパン)。同一建物内に「インターコンチネンタル」「キンプトン」「ホリデイ・イン リゾート」の3ブランドを展開する、日本初のトリプルブランドホテルとなります。総客室数は817室で、IHGの国内新築施設として最大規模。USJオフィシャルホテルとしても唯一の外資系ホテルとなり、2029年の開業を予定しています。

1.計画概要


項目 内容
プロジェクト名称 Osaka Sakurajima Resort
事業主 合同会社桜島開発(鹿島建設、日本郵政不動産、SMFLみらいパートナーズ、京阪神ビルディングが出資するSPC)
所在地 大阪府大阪市此花区桜島一丁目506番、507番(地番)
運営会社 IHG Japan Management 合同会社
ホテル インターコンチネンタル:244室キンプトン:246室ホリデイ・インリゾート:327室全817室
ホテル付帯施設 レストラン、プール等
敷地面積 17,246㎡
延床面積 100,494㎡
規模 地上14階・地下1階
構造 SRC造・S造
交通 JR桜島線「ユニバーサルシティ」駅 徒歩6分
設計・施工 鹿島建設株式会社
インテリアデザイナー インターコンチネンタル:G.A. DESIGN INTERNATIONAL LIMITEDキンプトン:White Jacket Pte. Ltd.ホリデイ・インリゾート:ILYA CORPORATION
竣工 2029年(予定)
開業 2029年(予定)
 

2.なぜ「今・桜島・817室」なのか


― USJ需要と夢洲IRを同時に見据えた立地戦略

本計画の立地は、USJに隣接するリバーサイドの一等地です。加えて、2030年秋に開業予定のMGM大阪(統合型リゾート:IR)へも、車またはボートで約10分という近接性が強調されています。

ここで重要なのは、


  • USJ:年間を通じた巨大な集客力(需要の下限)

  • IR・MICE:富裕層・ビジネス客による単価上振れ(需要の上限)

この両方を同時に取りに行く前提で、計画が組まれている点です。

USJ単体ならファミリー向け大型ホテルでも成立しますが、IR・MICEまで視野に入れると、単一ブランドでは客層が偏りやすい。そこで採用されたのが、トリプルブランドという構成です。

3.日本初「トリプルブランド」の意味

「Osaka Sakurajima Resort」は、1棟の建物に3つの異なるホテルブランドを内包します。これは話題性を狙ったものではなく、需要の質を分けて外さないための設計と読むのが自然です。3層のブランドを併設する事で、繁忙期のUSJ需要を確実に取り切り、稼働率の下振れを防ぐ役割を担います。
ブランド名 概要 開業数・展開状況 客室数 想定ターゲット・役割
インターコンチネンタル 世界70か国以上で展開する世界最大級のラグジュアリーホテルブランド 開業ホテル:237軒開業予定ホテル:102軒 244室 ラグジュアリー層・富裕層を中心に、国際会議や上位レジャー需要を担当。施設全体のブランド価値と単価を牽引する中核
キンプトン 洗練された遊び心あるデザインと人間味あふれるゲスト体験を融合したライフスタイルホテル 開業ホテル:83軒開業予定ホテル:64軒レストラン・バー・ラウンジ:100軒超 246室 ライフスタイル志向の個人・カップル層を想定。比較的長めの滞在や体験価値重視の需要を担う
ホリデイ・イン リゾート 世界的に展開するフルサービス型ホテルブランド 開業ホテル:1,242軒開業予定ホテル:291軒 327室 最大の客室数を持ち、ファミリー・団体・レジャー需要を吸収。全体稼働を支えるベース(量のエンジン)

4.建築デザインの特徴


USJ側と安治川側で表情を変える「二面性」

建物は東西2棟構成とされ、立地特性を活かした明確な役割分担がなされています。デザインはUSJ側と安治川側で明確に異なっています。


  • USJ側
    ブルックリンの街並みを想起させる重厚感のあるデザイン

  • 安治川側
    水面の煌めきを映す、開放的で透明感のある佇まい

テーマパークの延長線と、水辺リゾートの落ち着きを同時に成立させる設計であり、ホテル自体を「滞在の目的地」とする意図が読み取れます。特にUSJ側はパーク内からホテルが見えるため、先に開業したリーベルホテルと同じく「ブルックリンの街並みを想起させる重厚感のあるデザイン」を意識しています。

5.水辺空間整備と舟運


ホテル単体で終わらせない“エリア価値”の設計

本計画では、ホテルと安治川の間に位置する「此花西部臨港緑地エリア水辺賑わいづくり事業」とも連動します。


  • 広場の整備

  • アートの設置

  • 回遊式庭園のようなウォーカブル動線の創出

行政・地元企業・地域団体で構成される協議会と連携し、水都大阪の玄関口としての桜島エリア全体の賑わい創出を目指します。

これは景観施策にとどまらず、


  • 滞在時間の延伸

  • 再訪動機の創出

  • 周辺投資の呼び水

という点で、ホテル収益を外部から補強する設計と位置づけられます。

6.「建てる・持つ・運営する」を分解したリスク最適化モデル

「Osaka Sakurajima Resort」は、近年の大型ホテル開発で主流となりつつある不動産所有とホテル運営を切り分けるスキームを明確に採用しています。土地・建物の所有主体は、4社が出資する特別目的会社(SPC)合同会社桜島開発。一方で、ホテル運営は IHG Japan Management合同会社 が担います。

この構造により、


  • 不動産側は長期安定収益(賃料・運営連動収益)を狙い

  • 運営側はブランド力と予約ネットワークを武器に運営フィーを確保

という、役割が明確に分離された分業モデルが成立しています。


SPC(合同会社桜島開発)の狙い

SPCを用いる最大の目的は、


  • 出資企業本体からリスクを切り離す「倒産隔離」

  • 将来的な持分売却や再編を容易にする「商品化」

にあります。

ホテル運営が軌道に乗れば、SPC持分を REITや海外不動産ファンドへ売却する選択肢も視野に入ります。つまり本プロジェクトは、「永続保有」だけでなく出口戦略を内包した不動産投資商品として設計されていると言えます。

7.4社連合が持ち寄った「異なる勝ち筋」


同じホテルを見て、各社が“別のゴール”を描いている

本プロジェクトの特徴は、4社が同じ物件に出資しながら、狙っている成果が異なる点にあります。


鹿島建設

設計・施工+出資という二重関与が最大の特徴です。


  • 施工利益を確保

  • 設計・施工一体化による初期コスト最適化

  • 出資を通じた中長期キャッシュフローへの関与

建てて終わりではなく、運営後の果実にも関与するゼネコンの投資型モデルが体現されています。


日本郵政不動産

全国に膨大な不動産資産を抱える中で、従来型のオフィス賃貸だけでは描きにくい「成長ストーリー」が課題となっています。

本件では、


  • インバウンド回復

  • USJ・IRという明確な需要エンジン

  • 水辺整備を含む地域活性文脈

を背景に、投資家・世論双方に説明しやすい不動産投資案件として位置づけられます。


SMFLみらいパートナーズ

三井住友ファイナンス&リースの戦略子会社として、本質的な関心は IRR(内部収益率)と出口にあります。


  • ホテル運営が安定するまで保有

  • 5〜7年程度を目安に持分売却

  • キャピタルゲインを含めた投資回収

不動産そのものよりも、金融商品としての完成度を重視した参画と見るのが自然です。


京阪神ビルディング

資本規模では他3社に劣るものの、このプロジェクトにおける役割は明確です。


  • 此花区・桜島エリアでの地元調整

  • 行政・協議会との折衝

  • 水辺空間整備を含む地域連携

東京本社の大企業が不得手とするローカル調整力を担う“地元プレイヤー”として機能しています。


IHG(運営側)

IHGは土地・建物を保有せず、


  • グローバルブランド

  • 世界的予約ネットワーク

  • ロイヤリティプログラム(IHG One Rewards)

を武器に、運営フィーを安定的に得る立場です。外資系であること自体が差別化要素となり、USJオフィシャルホテルとしても唯一のポジションを確保しています。


小括

このプロジェクトは、「全員が同じ目的で集まった連合」ではありません。


  • 鹿島建設は 施工+投資

  • 日本郵政不動産は 成長投資の実績づくり

  • SMFLみらいパートナーズは IRRと出口

  • 京阪神ビルディングは 地元での存在感

  • IHGは リスクを負わない運営収益

それぞれが異なる勝ち筋を持ち寄り、衝突しない形で噛み合っている。その点において、「Osaka Sakurajima Resort」はホテル事業というよりも、高度に設計された不動産投資スキームと評価できます。

8.2029年開業というタイミングの意味


開業予定は2029年。夢洲IR(2030年秋予定)の直前です。


  • IR開業前:建設・視察・先行需要を取り込める

  • IR開業後:本格的な富裕層・MICE需要を受け止められる

仮にIRの進捗が遅れた場合でも、USJ隣接という強い需要下限があるため、単独でも成立する保険を掛けた設計といえます。

9.まとめ


これはホテル建設ではなく「湾岸宿泊需要を取り切る投資モデル」

「Osaka Sakurajima Resort」は、外資3ブランドを揃えた話題性の高いプロジェクトですが、本質はそこではありません。

USJという確実な集客装置に乗り、IR・MICE・舟運・水辺回遊による上振れを取りに行く。そのために、


  • ブランドを分解し

  • 運営と所有を分け

  • 公共空間まで含めて価値を設計する

需要変動を前提に“外しにくい構造”を組み上げた不動産投資モデルとして読むと、このプロジェクトの輪郭がはっきり見えてきます。






【出典元】
IHGホテルズ&リゾーツの「トリプルブランド」を冠するホテル開発プロジェクト、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの隣接地で着工
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン オフィシャルホテル唯一の外資系ホテル 「Osaka Sakurajima Resort」プロジェクトが本格着工

Visited 1,167 times, 1,167 visit(s) today