
関西大学は2026年6月18日、千里山キャンパスの学生会館「誠之館群」の建替計画を発表しました。新施設は地上11階、高さ約45m、延床面積約2万2,000㎡。2027年4月に着工し、2029年3月の完成を目指します。
計画の最大の特徴は、大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」で使われた木材を、新施設のエントランスに再利用することです。リングを構成した木組みと貫工法を再現し、万博が掲げた「多様でありながら、ひとつ」という理念を、学生の日常空間へ引き継ぎます。
老朽施設の更新に、課外活動環境の改善、学生交流の促進、資源循環、キャンパス価値の向上、万博レガシーの継承を重ねた計画です。単なる建て替えではなく、関西大学の将来像を建築として示すプロジェクトと位置づけられます。
半世紀を経た学生会館を再編

現・誠之館 2 号館(左) 、現・誠之館 3 号館(右)
誠之館は、文化会、学術研究会、体育会など、学生の課外活動を支えてきた施設群です。千里山キャンパスには2号館から8号館までが設置されていますが、建替対象となる2号館、3号館、5号館は、建設から半世紀以上が経過しています。新施設のコンセプトは「アクティブ・グリーンヒル・キャンパス」。老朽化に加え、部室や活動スペースの不足も課題となっていました。今回の計画では、施設の安全性や利便性を高めるだけでなく、課外活動に参加していない学生や教職員にも開かれた交流拠点へと役割を広げます。
大学は新施設を、多様な人や活動が交わり、新たな出会い、挑戦、価値創造が生まれる「キャンパス・コア」として整備します。
| 整備内容 | 役割 |
|---|---|
| 部室・活動拠点 | 文化会、学術研究会、体育会などの活動環境を改善する機能 |
| 音楽・スポーツ活動機能 | 多様な課外活動に対応する専門的な活動空間 |
| トレーニングジム | 課外活動の有無を問わず、学生・教職員が利用できる共用機能 |
| 共通講義空間 | 授業、学習、交流などに柔軟に対応する空間 |
| エントランス | 大屋根リングの一部を再現し、人の流れと交流の起点となる象徴空間 |
大屋根リングを「記念物」にしない

大屋根リングの木材活用には、資源と記憶を同時に継承する狙いがあります。
万博会場で来場者を迎えた木材は、新たな学生会館で学生を迎えるエントランスへと転用されます。リングに使われた木組みと貫工法も再現し、「多様でありながら、ひとつ」という理念を、日常のキャンパス空間に移します。
解体後の木材を建築資源として使い続けることで、廃棄物の削減や環境負荷の低減にもつなげます。関西大学は、国産材の活用促進や地域活性化への貢献も掲げており、新施設を同大学のSDGs推進を象徴する存在とする考えです。
通常、新しい建物は、使われる年月の中で歴史や物語を蓄積していきます。一方、新しい誠之館は、完成時から大阪・関西万博という社会的な記憶を備えることになります。大屋根リングを巨大な記念物として保存するのではなく、教育施設の一部として使い続ける。万博レガシーを「残すもの」から「機能するもの」へ転換する試みです。
学生の「偶然の出会い」を設計する

大学での学びは、講義室の中だけで完結するものではありません。部活動やサークル、先輩・後輩との関係、異なる専門分野を学ぶ学生との会話など、日常の中で生まれる非公式な交流も、学生の成長を支えます。
部室、講義空間、トレーニングジム、音楽・スポーツ機能を一つの建物に集約すれば、異なる目的や所属を持つ学生が自然に行き交います。課外活動団体だけの閉じた施設とせず、すべての学生・教職員に開くことで、偶然の会話や共同企画、新たな挑戦が生まれやすくなります。関西大学が再設計しようとしているのは、建物だけではなく、学生同士の接点を生み出す、キャンパスの交流構造そのものです。
大学経営にとっても重要な投資
少子化が進むなか、キャンパスは教育の場であると同時に、大学の価値を目に見える形で示す経営資産でもあります。学生がどのような環境で学び、活動し、交流できるかは、在学生の満足度や帰属意識だけでなく、受験生や保護者の大学選び、卒業生の母校への愛着にも影響します。企業や地域社会との連携においても、象徴的な交流拠点の存在は、大学の発信力を高めます。延床面積約2万2,000㎡の新学生会館は、施設の更新にとどまらず、学生生活の質を高め、千里山キャンパスの魅力を強化する教育投資であり、ブランド投資でもあります。
大屋根リングの木材を活用することで、関西大学は「学生の自主活動を支える大学」「万博の理念を未来へつなぐ大学」「資源循環を建築として実践する大学」という姿勢を、建物そのもので示す。施設更新、学生支援、環境配慮、万博レガシー、大学ブランドを一つの物語に統合している点が、この計画の強みです。
目指すのは「関大の未来の象徴」

高橋智幸学長は、誠之館を、学生同士が出会い、新たな挑戦や学びを生み出す場と位置づけています。芝井敬司理事長も、大屋根リングに込められた理念と記憶を一過性のものにせず、教育を通じて未来へつなぐ考えを示しました。
計画の狙いと期待される効果は、次のように整理できます。
| 狙い | 期待される効果 |
|---|---|
| 老朽施設の更新 | 安全性と利便性を備えた学生会館を整備 |
| 課外活動環境の改善 | 学生の自主性、社会性、創造性を育成 |
| 全学生に開かれた拠点化 | 所属や分野を越えた交流を創出 |
| 万博レガシーの継承 | 大屋根リングの理念と記憶を教育空間へ接続 |
| 資源循環とブランド形成 | 環境配慮を可視化し、関西大学の象徴性を強化 |
老朽施設を更新し、学生が集い、交流し、挑戦する新たな中心拠点をつくる。そこに万博の記憶を組み込み、関西大学が目指す教育とキャンパスの将来像を、建築として示そうとしています。
真価を決めるのは完成後の使われ方
この計画の成否は、大屋根リングの木材を使用したという事実だけでは決まりません。象徴的なエントランスが注目されても、活動空間が使いにくかったり、利用者が一部の団体に限られたりすれば、計画の目的は十分に達成されないでしょう。一方、課外活動の有無を問わず学生が日常的に集まり、異なる組織や分野の間に交流が生まれれば、新施設はキャンパス文化そのものを変える可能性があります。本当のレガシーは、木材だけではありません。その空間で学生が何を始め、誰と出会い、どのような経験を次の世代へ残すかにあります。
大屋根リングの記憶を、学生の日常と成長の中に根づかせられるか。そこまで実現して初めて、新しい誠之館は万博レガシー継承のモデルとなり、関西大学の新たな顔になるといえます。
事業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計画名称 | 誠之館群建替計画 |
| 所在地 | 関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市山手町3-3-35) |
| 階数 | 地上11階 |
| 高さ | 約45m |
| 建築面積 | 約3,100㎡ |
| 延床面積 | 約22,000㎡ |
| 構造 | 鉄骨造 |
| 主な機能 | 大屋根リングの一部を再現したエントランス、トレーニングジム、共通講義空間、音楽・スポーツ活動機能、部室・活動拠点 |
| 解体工事 | 2026年度内完了予定 |
| 着工 | 2027年4月予定 |
| 竣工 | 2029年3月予定 |
出典元
・関西大学プレスリリース
「大阪・関西万博のレガシーを未来へ継承 関西大学が学生会館の建替に着手へ ~大屋根リングの一部を再現した新エントランス~」
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2026/No13.pdf
学校法人関西大学「関西大学が学生会館の建替に着手へ ~大屋根リングの一部を再現した新エントランス~」
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