『香芝市複合施設整備基本計画案』音楽ホールや図書館、博物館、公民館機能などを集約、総事業費160億円。1,000席ホールを核に市役所周辺を“シビックコア”へ再編

奈良県香芝市は、音楽ホールや図書館、博物館、公民館機能などを集約する「香芝市複合施設整備基本計画案」をまとめました。計画予定地は、香芝市役所南側の駐車場部分を中心とした区域で、隣接する総合体育館や周辺公共施設と一体的に、市の中心拠点を再編する大型公共施設計画です。

新施設は4階建て程度、延床面積約14,500㎡を想定。旧モナミホール、中央公民館、ふたかみ文化センター、市民図書館、二上山博物館などが担ってきた機能を集約し、約1,000席規模の音楽ホール、蔵書約30万冊の図書館、博物館、貸室、キッズルーム、商業施設誘致スペースなどを備えます。

注目されるのは、総事業費です。2025年8月策定の基本構想では80億円から110億円程度とされていましたが、基本計画案では約160億円に増加しました。建設費の高騰に加え、面積単価の高い音楽ホール機能を拡充したことが主な要因です。完成時期も当初想定の2029年度から、最短でも2030年度へずれ込む見通しです。

計画概要

項目 内容
計画名称 香芝市複合施設整備基本計画案
所在地 奈良県香芝市本町1397番地周辺
計画予定地 香芝市役所南側駐車場を中心とした区域
敷地面積 約7,700㎡
施設規模 4階建て程度
延床面積 約14,500㎡
主な機能 音楽ホール、図書館、博物館、貸室、多目的スペース、キッズルーム、商業施設誘致スペース、共用部
音楽ホール 約1,000席規模
図書館 約3,200㎡、蔵書約30万冊規模
博物館 約1,500㎡
商業施設誘致スペース 約500㎡
概算事業費 約160億円
事業手法 従来方式、DB方式、DB+ECI、CM、PFIなどを比較検討
運営方式 直営を基本に、指定管理者制度や民設民営の活用を検討

旧モナミホールの代替から、公共施設再編の拠点へ

今回の計画は、老朽化により除却された旧モナミホールの代替機能確保を出発点としています。ただし、単なるホールの建て替えではありません。

香芝市では、昭和50年代以降の人口増加期に整備された公共施設が更新時期を迎えています。中央公民館やふたかみ文化センターでも、設備の老朽化、利用者の固定化、高齢化といった課題が顕在化しており、個別施設をそのまま更新するだけでは、将来的な維持管理負担が重くなります。

そこで市は、ホール機能を核に、図書、学習、交流、展示、子育て支援、商業的な滞在機能を一体化する方針を採用しました。公共施設を「建物単位」で維持するのではなく、「機能単位」で再編する考え方です。

事業費増額の核心は、音楽ホール機能の拡充

出展:https://www.nea-ltd.com/  神奈川県大和市『大和市文化創造拠点シリウス』

総事業費が約160億円に膨らんだ最大の理由は、音楽ホール機能の拡充です。

基本構想段階では、音楽ホールの整備想定規模は約2,000㎡でした。しかし基本計画案では、客席、舞台、舞台設備、楽屋、リハーサル室、倉庫、共用部分などを含めて約5,000㎡に拡大しています。

新ホールは、旧モナミホールと同じく約1,000席規模を検討ベースとし、市民利用、学校行事、成人式、講演会、プロ興行などに対応する多目的ホールを目指します。客席は固定席とし、1層から2層構成を想定。舞台はプロセニアム形式で、幅14.5m、奥行14.5m程度の主舞台を検討します。

ホールは単なる大空間ではなく、音響、照明、舞台機構、防音、搬入口、楽屋、リハーサル室、ホワイエなど、専門性の高い設備が必要です。一般的な貸室や事務所系施設より建設単価が高くなりやすく、今回の事業費増額もこの部分の影響が大きいと見られます。

図書館は約30万冊規模へ、共用部にも図書機能を展開

出展:香芝市 図書館機能の整備イメージ(智辯学園奈良カレッジ)

新図書館は、現在ふたかみ文化センター内にある香芝市民図書館を移転・拡充する形で整備されます。既存図書館は延床面積約2,035㎡、蔵書数約23万冊ですが、新施設では約3,200㎡、蔵書数約30万冊規模を想定しています。

特徴的なのは、図書館を専用区画だけに閉じ込めない点です。共用部にも図書機能を配置し、ホール、博物館、貸室、多目的スペースと連携させる構成を目指します。たとえば、博物館周辺には科学や石に関する図書、ホワイエには文化・芸術関連の書籍を置くなど、施設全体に「本がにじみ出す」構成が想定されています。

これにより、図書館は本を借りる場所にとどまらず、学習、待ち合わせ、滞在、交流を生むサードプレイスとしての役割を担います。

博物館・貸室・キッズルーム・商業機能も集約

出展:香芝市 博物館の整備イメージ(香芝市『二上山博物館』)

博物館機能は約1,500㎡で、展示室、収蔵庫、作業室、研究室などを整備する計画です。二上山やサヌカイトなど、香芝市周辺の地形・地質・歴史資源を発信する拠点となります。

貸室機能も約1,500㎡を想定し、会議室、和室、調理実習室、防音室などを整備します。中央公民館やふたかみ文化センターで行われてきた文化活動、生涯学習、サークル活動を継承しつつ、可動間仕切りやICT環境を備えた使いやすい活動空間へ再編する方針です。

さらに、キッズルーム約500㎡、商業施設誘致スペース約500㎡も設けられます。商業スペースでは飲食や物販などの出店を想定しており、公共施設の日常利用や滞在性を高める役割が期待されます。

市役所・総合体育館と一体化する“香芝の中心拠点”


出展:香芝市 交流プレイルームの整備イメージ
香川県丸亀市『丸亀市市民交流活動センター マルタス』


計画予定地周辺には、香芝市役所、総合体育館、中央公民館、ふたかみ文化センター、市民図書館、二上山博物館、今池親水公園、香芝消防署、香芝警察署、香芝市総合福祉センターなどが集まっています。

基本計画案では、新複合施設を市役所、総合体育館と連携する「シビックコア」と位置付けています。行政、文化、スポーツが一体となり、日常の市民活動からイベント利用まで受け止める都市の核をつくる考え方です。

香芝市は大阪近郊の住宅都市として発展してきましたが、市民が日常的に集まり、学び、文化活動を行い、滞在できる中心空間は必ずしも強くありませんでした。今回の計画は、ベッドタウンとして成長してきた香芝市が、成熟期の住宅都市として「市民の居場所」を持とうとする取り組みといえます。

駐車場再編も大きな論点

複合施設の整備では、駐車場計画も重要です。市役所南側駐車場を建設予定地とするため、既存の駐車機能を再編する必要があります。

計画では、旧モナミホール跡地と中央公民館敷地を活用し、複合施設と総合体育館の来場者が利用できる立体駐車場を整備する予定です。規模は最大600台程度を想定しています。また、市役所北側にも来庁者用・公用車用の平面駐車場を先行整備する必要があります。

つまり、この計画は建物単体の整備ではなく、市役所周辺の駐車場、歩行者動線、自動車動線を含むエリア再編でもあります。

160億円に見合う価値をどう生むか


今回の複合施設は、延床面積約14,500㎡、総事業費約160億円です。単純計算では1㎡あたり約110万円となり、人口約8万人規模の自治体にとって重い投資であることは間違いありません。

ただし、「高すぎる箱物」と切り捨てるだけでは、本質を見誤ります。香芝市では、旧モナミホール、中央公民館、ふたかみ文化センター、市民図書館、二上山博物館といった複数施設の老朽化と機能更新が同時に課題となっています。これらを個別に維持・更新すれば、それぞれに改修費や維持管理費がかかり、施設の重複も残ります。

今回の計画は、それらの機能を市役所周辺に集約し、行政・文化・スポーツが連携する中心拠点をつくるものです。評価すべきポイントは、建物の規模だけではなく、複合化によって日常利用をどこまで生み出せるかにあります。

一方で、今後の検証課題も明確です。約1,000席ホールの稼働率、維持管理費、運営収支、駐車場整備費、財源構成、利用料金、指定管理者制度の設計、商業スペースの実効性は丁寧に確認する必要があります。

公共施設は、完成した瞬間がゴールではありません。完成後にどれだけ市民に使われ、日常生活に組み込まれ、次の活動を生み出せるかが問われます。

香芝市の新複合施設は、文化ホールの再建であり、公共施設再編であり、市役所周辺を再構築する都市拠点整備でもあります。160億円という大きな投資に見合う価値を生むには、建物の豪華さではなく、使われ続ける設計と運営が不可欠です。

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