『(仮称)中山製鋼所船町工場新製鋼施設建設事』中山製鋼所、船町工場に最大1,055億円の新製鋼施設 200トン電気炉、2030年7月稼働へ!



大阪市大正区の臨海部で、総額1,000億円規模の製鉄プロジェクトが進んでいます。

中山製鋼所は、船町工場内の旧高炉・コークス工場跡地に、200トン級の電気炉を中核とする新製鋼施設を建設します。総投資額は約950億円で、物価や為替、設計変更などを織り込んだ上限は最大1,055億円です。

大阪市は2026年7月29日、環境影響評価準備書について、同市の環境影響評価専門委員会から答申を受けたと発表しました。今後は大阪市長意見や環境影響評価書の作成などの手続きが続きます。

事業者は2026年12月ごろの着工、2030年7月ごろの事業開始を予定しています。

プロジェクト概要


項目 内容
事業名 (仮称)中山製鋼所船町工場新製鋼施設建設事業
所在地 大阪市大正区船町1丁目1番66号
建設場所 船町工場内の旧高炉・コークス工場跡地
計画地面積 約9万6,000㎡
主な設備 電気炉、取鍋精錬設備、連続鋳造機、屋内スクラップヤード、集塵・水処理設備
電気炉容量 1回当たり200トン
処理能力 毎時215トン
年間生産能力 粗鋼約120万トン
建屋最高部 約44m
総投資額 約950億円、最大1,055億円
着工予定 2026年12月ごろ
事業開始予定 2030年7月ごろ
※最大1,055億円は、電気炉単体の価格ではありません。電気炉や連続鋳造機、関連設備、建屋などを含む新製鋼施設全体の投資額

旧高炉跡地に年間120万トンの製鋼拠点



新施設は、2002年に休止した高炉・コークス工場の跡地約9.6haに建設されます。敷地内には、鉄スクラップを保管する屋内ヤードから、電気炉、精錬設備、連続鋳造機までを一体的に配置します。鉄スクラップの受け入れから、鋼材の素材となるスラブの製造までを連続して行う製鋼拠点です。

年間の粗鋼生産能力は約120万トンで、既存電気炉の2倍以上となります。新施設の稼働後は、船町2丁目にある既存の電気炉と取鍋精錬設備を廃止し、製鋼工程を新拠点へ移します。単なる設備増設ではなく、中山製鋼所の製鋼体制そのものを組み替える計画です。

外部調達を減らし、自社生産を拡大

中山製鋼所は現在、鋼材生産に必要な粗鋼の約半分を自社の電気炉で生産し、残りを外部から調達しています。新電気炉の稼働後は自社生産を大幅に増やし、高炉・転炉で製造された外部購入材への依存を引き下げます。調達価格や需給変動の影響を受けにくい体制を整え、コスト削減や納期短縮につなげる狙いです。

新しい連続鋳造機では、既存設備では難しかった広幅スラブの生産にも対応します。鋼板を中心に製品ラインアップを広げ、付加価値の高い製品の生産拡大を目指します。

日本製鉄と投資・販売を分担


出展:GoogleMAP

巨額投資を支えるのが、日本製鉄との共同事業です。両社は2026年4月、設備保有会社となる「NN製鋼合同会社」を設立しました。出資比率は中山製鋼所51%、日本製鉄49%です。

NN製鋼合同会社が新製鋼設備と建屋を保有し、中山製鋼所が設備を借りて操業します。生産したスラブの一部は日本製鉄が購入するほか、日本製鉄が中山製鋼所に熱延加工を委託し、加工後のホットコイルなどを引き取る計画です。

中山製鋼所は投資負担を分散しながら販売先を確保でき、日本製鉄はCO₂排出量の少ない電気炉材を安定的に調達できます。設備投資から生産、販売までを両社で補完する事業スキームです。

排熱を再利用し、熱いまま圧延工場へ



新電気炉には、高温の排ガスで鉄スクラップを予熱しながら炉内へ連続投入する方式を採用。排熱を再利用することで、スクラップの溶解に必要な電力を抑えます。スクラップヤードは屋外型から屋内型へ変更。保管能力は約2万3,000トンで、屋根には年間約1,070MWhを発電する太陽光発電設備を設置する計画です。

製造したスラブは、隣接する熱延工場へ高温のまま送る「ホットチャージ」を採用します。スラブを一度冷却して再加熱する工程を減らし、エネルギー消費や構内輸送、中間在庫を削減します。

脱炭素化の一方で、工場内排出と物流負荷は増加

 

電気炉材への転換によって高炉材への依存を減らし、サプライチェーン全体では、2030年度に2013年度比46%のCO₂削減を目指します。

一方、自社生産量の拡大に伴い、船町工場のScope1・2排出量は、2013年度の約13万7,000トンから、2030年度には約29万2,000トンへ増える見通しです。会社全体では脱炭素化が進むものの、船町工場内で計上される排出量は増加します。

搬出入車両も、現在の1日約120台から約230台へほぼ倍増します。中山製鋼所は、車両の事前予約や構内待機場所の確保、計量機の増設、海上輸送の拡大などで、周辺道路への負荷を抑える方針です。

大阪市の専門委員会は、大気質や土壌汚染、振動、低周波音、悪臭、産業廃棄物、景観などについて、対策の強化や環境影響評価書への追記を求めています。

高炉跡地を循環型製鉄の拠点へ

今回の計画の核心は、旧高炉・コークス工場跡地を活用し、製鋼工程と原料調達の仕組みを同時に再編する点にあります。中山製鋼所は、日本製鉄の資本と需要を取り込みながら、自社の電気炉生産を拡大。外部から購入してきた高炉材を減らし、鉄スクラップを再資源化する製鋼体制へ比重を移します。

一方で、工場内のCO₂排出量や物流負荷は増加します。最大1,055億円の大型投資を地域の産業競争力につなげながら、周辺環境への影響をどこまで抑えられるかが、今後の焦点となります。




出典

  • 大阪市「(仮称)中山製鋼所船町工場新製鋼施設建設事業」
  • 大阪市「環境影響評価専門委員会答申」
  • 中山製鋼所 適時開示資料・事業説明資料
  • 日本製鉄 ニュースリリース

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