近鉄百貨店 店舗別売上ランキング2025年度(2026年2月期)増収のすべて以上をハルカス周辺が稼ぐ、雑貨は559億58百万円で16.9%増


近鉄百貨店の2025年度決算は、表面上だけでなく中身を見ても、かなり特徴のある内容でした。収益認識基準適用前の個別売上高は2,445億48百万円で前期比2.3%増、営業利益は60億円で同42.7%増。連結でも売上高1,254億50百万円、営業利益67億18百万円と、増収増益を確保。会社側は、大阪・関西万博のオフィシャルストア出店や、あべの・天王寺エリアの集客強化が増収増益に寄与したと説明しています。

ただ、店別売上高を並べると、印象はよりはっきりします。今回の好決算は、近鉄百貨店の全店が一斉に回復したというより、あべのハルカス近鉄本店(Hoop等を含む)を中心とした、あべの・天王寺エリアへの成長集中として読むほうが実態に近い決算でした。

※近鉄百貨店が、収益認識基準適用前の店舗別売上を発表したので、記事を修正しました。

【実績】2025年度(2026年2月期) 店舗別売上高 (単位:百万円)

※収益認識基準適用前、単位:百万円
順位 店舗名 2025年度売上高 2024年度売上高 増減額 前年比
1 あべのハルカス近鉄本店
(Hoop等を含む)
131,348 124,292 +7,055 +5.7%
2 奈良店 20,209 20,591 △381 △1.9%
3 上本町店 19,965 20,348 △382 △1.9%
4 和歌山店 18,767 18,999 △232 △1.2%
5 四日市店 17,066 17,162 △95 △0.6%
6 橿原店 12,181 12,155 +26 +0.2%
7 草津店 11,016 10,889 +127 +1.2%
8 生駒店 6,752 6,651 +100 +1.5%
9 名古屋店 4,052 4,902 △850 △17.3%
10 東大阪店 3,188 3,083 +104 +3.4%
地域計 113,200 114,783 △1,583 △1.4%
合計 244,548 239,075 +5,472 +2.3%
参考 あべのハルカス近鉄本店単独 104,565 108,826 △4,260 △3.9%

増収のすべて以上を、ハルカス周辺が稼いだ

百貨店業全体の総額売上高は2,445億48百万円で、前期比54億72百万円増でした。一方、あべのハルカス近鉄本店(Hoop等を含む)は1,313億48百万円で、前期比70億55百万円増。公式値ベースでは、全体の増収額を上回る増加分を、ハルカス周辺が単独で稼いだ計算になります。

一方で、地域店の合計は1,132億円で、前期比15億83百万円減でした。2025年度の近鉄百貨店は、「全店回復」ではなく、「ハルカス周辺の増収が、地域店の減収を吸収して全体を押し上げた」決算だったと言えます。

ここはかなり重要です。旧来の見方では「近鉄百貨店が好調」と一括りにされがちですが、実際には、成長のエンジンはかなり明確にあべの・天王寺エリアへ偏っています。

百貨店本体ではなく、エリア全体の回遊が伸びた

さらに興味深いのは、あべのハルカス近鉄本店単独では減収だったことです。

あべのハルカス近鉄本店単独の総額売上高は1,045億65百万円で、前期比42億60百万円減。一方で、Hoop等を含むあべのハルカス近鉄本店全体では1,313億48百万円となり、前期比70億55百万円増でした。

この差は大きいです。

百貨店本体だけを見れば減収。しかし、Hoop等を含むエリア全体で見ると大幅増収。つまり、伸びの主役は百貨店本体の全面復活ではなく、Hoopや周辺商業、万博関連需要を含めた、あべの・天王寺エリア全体の回遊消費だった可能性が高いとみられます。

近鉄百貨店は2025年度、あべの・天王寺エリアの魅力最大化を重点施策に掲げていました。Hoopでは「SALOMON」「New Balance」、さらに大型スポーツ専門店「スーパースポーツゼビオ」を導入し、あべのハルカス近鉄本店、Hoop、andを一体的に活用する方針を打ち出しています。今回の数字は、その戦略が一定の成果を出したことを示しています。ただし、それは「百貨店単体の回復」というより、「エリア商業体としての総合力」が売上を押し上げた、と見るほうが自然です。

雑貨は559億58百万円で16.9%増、食料品も堅調

商品別売上高を見ると、売上の構造もかなり明確です。

※収益認識基準適用前、単位:百万円
商品区分 2025年度売上高 2024年度売上高 構成比 前年比
衣料品 41,537 44,088 17.0% △5.8%
身回品 31,121 36,708 12.7% △15.2%
雑貨 55,958 47,870 22.9% +16.9%
家庭用品 6,246 5,983 2.5% +4.4%
食料品 89,483 84,258 36.6% +6.2%
食堂・喫茶 3,430 4,210 1.4% △18.5%
サービス 1,648 1,546 0.7% +6.6%
その他 15,122 14,411 6.2% +4.9%
合計 244,548 239,075 100.0% +2.3%

もっとも大きいのは食料品です。食料品は894億83百万円で、構成比は36.6%。前年比でも6.2%増となっており、近鉄百貨店の売上を支える基盤として引き続き強さを見せました。

一方で、伸び率で目立つのは雑貨です。雑貨は559億58百万円で、前年比16.9%増。売上構成比も22.9%まで高まっています。商品別に見ると、近鉄百貨店は食料品が土台を支え、雑貨が伸びを作った一方、衣料品は5.8%減、身回品は15.2%減でした。伝統的な百貨店の主力カテゴリーが全面的に回復したというより、食品、雑貨、万博関連需要、周辺商業の上振れが業績を押し上げたと見るべきでしょう。

地域店は健闘もあるが、全体では減収

地域店も、すべてが悪かったわけではありません。

東大阪店は31億88百万円で3.4%増、草津店は110億16百万円で1.2%増、生駒店は67億52百万円で1.5%増、橿原店は121億81百万円で0.2%増となりました。規模は大きくないものの、増収を確保した店舗はあります。

一方で、奈良店は202億09百万円で1.9%減、上本町店は199億65百万円で1.9%減、和歌山店は187億67百万円で1.2%減、四日市店は170億66百万円で0.6%減、名古屋店は40億52百万円で17.3%減でした。

結果として、地域店全体では1,132億円となり、前期比15億83百万円減。健闘した店舗はあるものの、全社業績を押し上げるほどの規模ではなく、収益構造はさらに「あべの集中型」へ傾いたと見てよいでしょう。

しかも、2025年度には四日市店と奈良店の店舗資産について減損損失が計上されています。これは直ちに店舗撤退を意味するものではありませんが、少なくとも会社が地域店の収益性を慎重に見直していることは事実です。好決算の裏側で、地域店の体力差や採算性の問題はなお残っています。

次期計画は慎重。ただし「地域店総崩れ」ではない

2027年2月期の個別業績予想は、収益認識基準適用後の売上高が930億円で前期比11.2%減、営業利益が47億円で同21.7%減です。総額売上高ベースでは2,309億円で、前期比136億48百万円減、5.6%減の計画となっています。連結でも売上高1,150億円で8.3%減、営業利益54億円で19.6%減と、会社はかなり慎重な見通しを示しています。

ただし、ここは少し丁寧に見たほうがよいです。来期は全店一律の減収計画ではありません。店別予想を見ると、あべのハルカス近鉄本店(Hoop等を含む)が大きく減る一方、名古屋店閉店の影響を除いた地域店はむしろ小幅増収を見込んでいます。

2026年度(2027年2月期)店舗別総額売上高予想

※収益認識基準適用前、単位:百万円
順位 店舗名 2026年度予想 2025年度実績 増減額 前年比
1 あべのハルカス近鉄本店
(Hoop等を含む)
121,278 131,348 △10,070 △7.7%
2 上本町店 20,469 19,965 +503 +2.5%
3 奈良店 19,633 20,209 △575 △2.8%
4 和歌山店 18,641 18,767 △125 △0.7%
5 四日市店 17,527 17,066 +460 +2.7%
6 橿原店 12,289 12,181 +108 +0.9%
7 草津店 11,144 11,016 +127 +1.2%
8 生駒店 6,707 6,752 △45 △0.7%
9 東大阪店 3,208 3,188 +20 +0.6%
地域計 ※名古屋店除く 109,622 109,148 +474 +0.4%
名古屋店 0 4,052 △4,052
合計 230,900 244,548 △13,648 △5.6%
参考 あべのハルカス近鉄本店単独 105,597 104,565 +1,031 +1.0%

次期予想で目立つのは、あべのハルカス近鉄本店(Hoop等を含む)の反動減です。2025年度実績の1,313億48百万円に対し、2026年度予想は1,212億78百万円。100億70百万円の減収を見込んでいます。

一方で、参考値のあべのハルカス近鉄本店単独は1,055億97百万円で、前期比10億31百万円増を見込んでいます。つまり、会社は百貨店本体については小幅増収を見込む一方、Hoop等を含む周辺要素や万博関連の特殊需要については、大きな反動減を織り込んでいると見られます。

地域店についても、名古屋店閉店の影響を除けば、地域計は1,096億22百万円で、前期比4億74百万円増の計画です。上本町店、四日市店、橿原店、草津店、東大阪店は増収予想となっており、次期計画を単純に「地域店が弱い」と読むのは正確ではありません。

会社全体が慎重なのは、地域店が総崩れするからではなく、主力のハルカス周辺における万博反動と、名古屋店閉店の影響を大きく織り込んでいるためです。

万博反動と地政学リスクが、来期の重しになる

外部環境も軽くありません。会社は2025年度の振り返りで、下半期の百貨店売上について、日中関係悪化などの影響により勢いを欠いたと説明しています。また、2027年2月期の見通しでは、国際情勢の不安定化や物価上昇をリスクとして挙げています。分かりやすく言えば、中国政情や中東情勢を含む地政学リスクと、万博反動が同時に重なる局面に入るということです。

とくに近鉄百貨店の場合、2025年度の伸びがあべの・天王寺エリアに集中していたぶん、万博の追い風が剥がれた後の反動は小さくありません。数字の上では好決算でも、その中身を丁寧に見ると、2025年度は「近鉄百貨店全体の全面回復」ではなく、「イベントとエリア集客が作った局地的な強さ」が大きかった1年でした。

焦点は、万博後にどこまで地力が残るか

今回の決算をどう評価するか。

結論としては、2025年度は好決算です。ただし、そのまま近鉄百貨店全体の実力値と見るには注意が必要です。公式ベースで見ると、百貨店業全体の増収額は54億72百万円。一方、あべのハルカス近鉄本店(Hoop等を含む)の増収額は70億55百万円でした。つまり、全体の増収分を上回る売上増をハルカス周辺が稼ぎ、地域店の減収を吸収した構造です。

商品別では、食料品が894億83百万円で6.2%増、雑貨が559億58百万円で16.9%増と好調でした。一方で、衣料品や身回品は減収となっており、伝統的な百貨店消費が全面的に復活したとは言い切れません。

2026年度の最大の焦点は明快です。万博反動のあと、あべの・天王寺エリアにどれだけ地力が残るのか。そして、地域店が小幅ながらも収益性を改善し、あべの依存を少しでも和らげられるのか。

2025年度の近鉄百貨店は、ハルカス周辺の強さが際立った1年でした。次の1年は、その強さが一過性のイベント需要だったのか、それともエリア商業としての実力に転化できるのかを見極める局面になりそうです。






出典

近鉄百貨店「2026年2月期 決算短信」
近鉄百貨店「2026年2月期 決算説明資料」
近鉄百貨店「2025年2月期 決算短信」

Visited 11,529 times, 350 visit(s) today