大阪と福岡に国際金融拠点、政府が外資金融機関の誘致強化に乗り出す方針を固めるが現実性は視界不良

  一部報道が伝える所によると、 政府はこれまで、東京での国際金融センターづくりを目指してきましたが、相次ぐ災害発生のリスクや新型コロナウイルス収束後の地域分散型社会を見据え、戦略を転換し、大阪と福岡に国際金融拠点を整備し外資金融機関の誘致強化に乗り出す方針を固めたとの事です。 アジアの金融では香港の存在感が大きかったですが、香港国家安全維持法の成立で人材や資本流出の可能性が高まっています。このタイミングでの政府の誘致強化は、企業や優秀な人材の受け皿となる狙いがあります。  


 

 


巨大市場である中国の窓口で、公用語が英語かつ法人税率の低い香港に、これまで金融業者を含む外資系企業集中していました。しかし、このほど施行された香港国家安全維持法により、アジアの金融センターとしての魅力が低下しています。

コンサルティング会社Z/Yenの3月の最新調査によると、国際金融センターのランキングで香港は3位から6位に転落。シンガポールや東京の後塵を拝しています。既に香港から金融機関の人材や企業が流出する動きが出始めており、その受け皿になれれば、莫大な富を得る事ができます。

 

 

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今回のニュースは相次ぐ災害発生のリスクや新型コロナウイルス収束後の地域分散型社会を見据え『東京一極集中から、戦略を転換する事になった』という内容です。このまま、大阪と福岡に金融特区が設けられ、香港から流出する人材や企業の受け皿になれれば良いのですが、今まで散々かけ声倒れのニュースを聞かされ続けてきたので、鵜呑みにする事はできません。

 

肝は金融庁等が持つ「許認可権」。新しい金融商品やサービスを開発、販売するには、監督官庁の「許認可」が不可欠です。現在、金融機関やマスコミが東京に一極集中している最大の要因の1つは、官僚がもつ「新たな法整備の情報」これから流行させる事柄」「制度設計に不可欠な許可、認可」をリアルタイムで情報収集し、随時対応する為です。許認可権は東京にのみ認められたれた特別な権利で、霞ヶ関1丁目1番地の重要な事項です。東京は昔から金融、マスコミ特区なのです。

大阪や福岡が東京の10分の1でも国際金融ハブの機能を担う為には、なんらかの規制緩和が不可欠になります。それは、権力の中枢の1丁目1番地に切り込む事を意味しています。

 

1990年代後半〜2000年代にかけて東京一極集中の是正を図る行政改革の一環として中央官庁の地方移転が計画されましたが、結果は関東圏内に「さいたま新都心」などを新たに建設整備して移転させる、地方分散とは真逆で東京圏に追加投資する 、といった骨抜きかつ焼け太りという最悪の結果でした。また、金融ビッグバンの一環として、各都市にあった都市銀行の統合が進められ、誕生した新銀行の本店は全て東京に移転しました。各地が持っていた資金調達機能は2000年頃に政府の大方針に基づき東京に集められました。資金調達機能が東京に集約された後の一極集中は恐ろしいものがありました。

繰り返しになりますが、大阪・福岡を金融ハブとして香港の受け皿となる為には、それ相応の権限が必要になります。このニュースが実態を持って具体化する時=権力の奪い合いになるので、血で血を洗う権力闘争の果てに、実現する事になります。現在の状況は、そこまでの覚悟を持った政治家や改革派の官僚が動いている様には見えませんので、淡い期待をもって成り行きを見守りたいと思います。

 

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