神戸空港島の将来構想(土地活用等)に向けたサウンディング型市場調査を実施!2030年国際化の先に問われる空港成長戦略は描けるのか?



神戸市が、神戸空港島の将来構想策定に向けて動き出しました。

市は、神戸空港島の将来構想(土地活用等)に向けたサウンディング型市場調査を実施すると発表しました。神戸空港島の面積は約270ha。このうち未利用地は約60haとされています。

一見すると、臨海部に残された市有地の活用を検討する動きに見えます。しかし、神戸空港島の場合、論点は単なる土地活用にとどまりません。

神戸空港は、2025年4月に第2ターミナルビルが供用開始し、国際チャーター便の運航が始まりました。さらに、2030年前後には国際定期便の運用開始が目標とされています。つまり、今回の未利用地活用は、2030年の国際化を見据えた空港島の使い方であり、その先に神戸空港をどの規模まで育てるのかという都市戦略の問題でもあります。

未利用地60haは、単なる“空き地”ではありません。神戸空港の将来容量を左右する、重要な戦略インフラの伸びしろなのです。

動き出した神戸空港島の将来構想



神戸市は、神戸空港島を「臨海部に残された貴重な土地」と位置付けています。三宮、ウォーターフロント、ポートアイランドなどとの連携を図りながら、神戸の成長に資する利活用を検討する方針です。

神戸市が示している主な概要は以下の通りです。
項目 内容
対象地 神戸市中央区神戸空港1番〜14番
空港島全体面積 約270ha
空港施設面積 約156ha
未利用地 約60ha
用途地域 準工業地域など
建ぺい率 60%
容積率 200%
将来構想の目標年次 2040年ごろ
利活用イメージ 成長産業の集積、賑わい空間の創出
住機能 導入予定なし
サウンディング実施予定 2026年7月13日〜7月24日
経過報告 2026年秋ごろ予定
利活用のイメージとして示されているのは、大きく二つです。

ひとつは「成長産業の集積」です。航空機関連産業など、空港立地を生かした産業集積が想定されています。

もうひとつは「賑わい空間の創出」です。第1ターミナル、第2ターミナル、海上アクセスターミナルと連動した空間づくりが示されています。

一方で、住機能の導入予定はありません。神戸空港島を住宅地として開発するのではなく、空港、産業、交流、広域連携を軸にした土地利用を検討する方向です。

今回のサウンディング型市場調査は、この段階で事業者を選定するものではなく、民間事業者から意見を聞き、今後の将来構想づくりに反映するための調査です。調査では、想定される事業内容・規模・場所、事業スキーム、規制条件、アクセス、公共施設整備、神戸空港や周辺地域・就航都市との連携、GX・新技術の導入などについて意見を求めます。

小さな空港、大きな空港島



神戸空港の現在地を考えるうえで、比較対象として分かりやすいのが、大阪国際空港、いわゆる伊丹空港と福岡空港です。いずれも都心近接型の空港ですが、空港面積、ターミナル規模、旅客数、発着回数には大きな差があります。
項目 伊丹空港 福岡空港 神戸空港
空港面積 311ha 約345ha 約156ha
空港島全体面積 約270ha
未利用地 約60ha
ターミナルビル延床面積 141,197㎡ 約263,000㎡ 約35,500㎡
年間旅客数 約1,629万人 約2,838万人 約417万人
年間発着回数 138,052回 約18.9万回 36,637回
鉄道アクセス 大阪モノレール「大阪空港」駅 福岡市地下鉄「福岡空港」駅 ポートライナー「神戸空港」駅
都心からの距離・時間 大阪梅田から約10km/約30分 博多から約3km・5分、天神から約5km・10分程度 三宮から約8km/18分
運営主体 関西エアポート株式会社 福岡国際空港株式会社 関西エアポート神戸株式会社
※伊丹空港・神戸空港の年間旅客数・発着回数は2025年度実績。
※福岡空港の旅客数は令和7年速報値、発着回数は令和6年度確定値。
※福岡空港のターミナル延床面積は、国内線旅客ターミナル約12.8万㎡、国際線旅客ターミナル増改築後約13.6万㎡の合算概算。
※神戸空港のターミナル延床面積は、既存旅客ターミナル約1.7万㎡と第2ターミナル約1.8万㎡を合算した概算。
※距離は都心主要駅からの概算。

この比較で目立つのは、神戸空港の施設規模がまだ非常にコンパクトだという点です。神戸空港の年間旅客数は約417万人。伊丹空港の約1,629万人と比べると約4分の1、福岡空港の約2,838万人と比べると約7分の1にとどまります。発着回数も、伊丹空港の138,052回、福岡空港の約18.9万回に対し、神戸空港は36,637回です。ターミナル規模の差も大きく、神戸空港の旅客ターミナル延床面積は、第1ターミナルと第2ターミナルを合わせても約35,500㎡です。これに対し、伊丹空港は141,197㎡、福岡空港は国内線・国際線を合わせて約263,000㎡規模となっています。

現在の神戸空港は、旅客数、発着回数、ターミナル規模のいずれを見ても、伊丹・福岡に比べてまだ小さな空港です。一方で、空港島全体で見ると印象は変わります。神戸空港の空港施設面積は約156haですが、空港島全体では約270haあります。これは、伊丹空港の311ha、福岡空港の約345haに近い規模感です。さらに、約60haの未利用地が残されています。

つまり、現時点の神戸空港は小さいものの、空港島全体で見れば、将来の拡張余地を持つ都市型海上空港といえます。

ここに、神戸空港島の重要な論点があります。

誘致の前に、空港のゴールを決める



神戸空港島の未利用地約60haは、単なる空き地ではありません。神戸空港の将来容量を左右する、重要な都市インフラの余白です。

仮に、目先の収益を重視して土地を細かく割り付けていけば、短期的には土地活用が進んだように見えます。しかし、一度土地利用が固定化されると、将来の空港機能拡張に使い戻すことは簡単ではありません。将来的に旅客数が増えれば、CIQ、保安検査場、手荷物処理施設、搭乗待合、商業施設、空港ラウンジ、駐車場、バス・タクシー乗降場などが必要になります。発着回数が増えれば、エプロン、スポット、誘導路、整備・給油・物流関連施設、空港関係者の業務施設、アクセス交通の強化も必要になります。

だからこそ、最初に決めるべきは「未利用地に何を置くか」ではありません。神戸空港を将来どの規模の空港に育てるのか。そのゴールから逆算して、ターミナル拡張用地、エプロン・スポット拡張余地、空港関連産業、にぎわい機能、アクセス交通を配置していく必要があります。

民間投資を呼び込むことは重要ですが、それは神戸空港の未来を狭める形であってはなりません。空港島の価値は、いま何を建てるかだけで決まるものではなく、20年後、40年後に神戸空港がどこまで成長できるかによって決まります。

1000万人か、2000万人かで変わる空港島の使い方



現在、神戸市が公式に示している方向性は、2030年前後の国際定期便運用開始です。現時点で、神戸空港を年間1000万人、2000万人規模の空港にするという目標が明示されているわけではありません。

ただし、将来構想の目標年次を2040年ごろに置くのであれば、その先の空港容量を考える必要があります。仮に神戸空港を年間1000万人規模の空港へ育てるのであれば、現在のターミナル約35,500㎡ではかなり手狭になります。国際線が加われば、単純に旅客数が増えるだけでなく、CIQ、保安検査、手荷物処理、出入国動線、待合空間など、国内線中心の空港とは異なる機能が必要になります。

さらに、年間2000万人級を視野に入れるなら、神戸空港は現在とはまったく別の段階に入ります。2000万人級は、現在の伊丹空港の旅客規模を上回り、福岡空港の7割程度に達する水準です。ターミナルの大幅拡張だけでなく、スポット増設、エプロン拡張、交通結節機能の強化、空港関連産業の配置まで含めた総合的なゾーニングが必要になります。

もちろん、これは土地だけで実現できる話ではありません。発着枠、空域、運用時間、滑走路容量、関西空港・伊丹空港との役割分担、アクセス交通との整合性も避けて通れません。重要なのは、「すぐに2000万人空港を目指すべきだ」という話ではなく、将来の選択肢を閉ざさない土地利用を、今の段階から考えておくべきだということです。
将来像 想定される空港像 必要になる主な機能
2030年前後の国際定期便対応 国内線中心から国際線併用型へ CIQ、国際線ターミナル機能、保安検査、出入国動線
年間1000万人級 都市型空港として存在感を高める段階 ターミナル拡張、商業機能、駐車場、バス・タクシー機能強化
年間2000万人級 伊丹を上回り、福岡に近づく広域空港 大規模ターミナル、スポット増設、エプロン拡張、交通結節強化
さらなる拡張余地 関西3空港体制の中で役割拡大を検討する段階 空港関連産業、物流・整備・給油機能、広域アクセス再設計
神戸空港が2030年前後の国際定期便対応を当面の到達点とするのか。2040年ごろに年間1000万人級を狙うのか。さらに2000万人級まで視野に入れるのか。

このゴールによって、空港島のゾーニングは大きく変わります。

神戸の成長余地をどう残すか



神戸は現在、三宮再整備、ウォーターフロント再開発、ポートアイランドの産業集積を同時に進めています。その中で神戸空港島は、都心と海、空港と港湾、神戸市内と関西圏、さらに就航都市をつなぐ位置にあります。

神戸空港島の未利用地約60haは、神戸に残された大規模な成長余地です。ここを単なる産業用地や商業用地として消費するのか。あるいは、将来の空港機能拡張を織り込んだうえで、産業、交流、交通を重ね合わせる戦略用地として扱うのか。今回のサウンディングは、その分岐点に立つ動きといえます。

神戸空港は、2025年の国際チャーター便開始によって、国内線中心の空港から次の段階に入りました。2030年前後の国際定期便運用開始は、その次の節目です。しかし、本当に重要なのはその先です。未利用地60haは、土地処分の対象ではなく、神戸空港の未来容量です。神戸市がこの余白をどう扱うかは、神戸が空港を単なる交通施設として見るのか、都市成長の基盤として育てるのかを映す判断になります。




出典

  • 神戸市「神戸空港島の将来構想(土地活用等)に向けたサウンディング型市場調査の実施」
  • 神戸市「神戸空港ターミナル機能拡張に係る基本計画策定支援業務」
  • 神戸市「神戸空港」
  • 関西エアポート「神戸空港 第2ターミナルビル供用開始、および国際線チャーター便初便就航」
  • 関西エアポート「関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港 2026年3月利用状況」

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