近鉄は、2026年8月1日(土)から、大阪阿部野橋駅と吉野駅を結ぶ特急「さくらライナー」に、ラッピング列車「飛鳥・藤原 四神(しじん)ライナー」を導入します。
舞台となるのは、世界遺産登録を目指す「飛鳥・藤原の宮都」。高松塚古墳やキトラ古墳の石室壁画に描かれた東西南北の霊獣「四神」をモチーフに、車両の外装・内装を装飾します。
対象は、近鉄26000系「さくらライナー」1編成4両。運行区間は、近鉄南大阪線・吉野線の大阪阿部野橋駅〜吉野駅間です。運行期間は2026年8月1日から当分の間で、運行予定ダイヤは近鉄の特設サイトで案内されます。
四神をまとった「さくらライナー」
飛鳥・藤原 四神ライナーの外装イメージ。1〜4号車で異なるテーマが設定されている(出典:近鉄ニュースリリース)
列車名にある「四神」とは、東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武の総称です。古代中国に由来する神獣で、キトラ古墳や高松塚古墳の石室壁画にも描かれています。「飛鳥・藤原 四神ライナー」では、この四神を4両それぞれに配置。近鉄の特設サイトでは、1号車に朱雀、2号車に青龍、3号車に白虎、4号車に玄武を割り振り、天文図とともに大胆にデザインすると紹介されています。
外装テーマは、1号車から順に「時を重ねた飛鳥のいま」「謎めく石物」「多彩な古墳」「飛鳥時代の栄華」。飛鳥・藤原エリアの史跡、古墳、石造物、のどかな景観を、4両編成の中に織り込む構成です。
展望デッキも“古墳の石室”をイメージ

展望デッキには古墳の石室をイメージした装飾を実施。枕カバーも号車ごとに新デザインとなる(出典:近鉄ニュースリリース)
外装だけでなく、内装にも飛鳥・藤原の世界観が取り入れられます。1号車と4号車の展望デッキには、古墳の石室をイメージした装飾を実施。さらに、釘に糸を張り巡らせて模様や絵を作る「ストリングアート」の作家・美崎久美子さんの作品も展示されます。
客室内では、天井付近への装飾に加え、号車ごとに異なるデザインの枕カバーも用意されます。駅で列車を見た瞬間から、車内で過ごす時間まで、飛鳥・藤原への旅気分を高める仕立てです。
もともと「さくらライナー」は、桜の名所・吉野をモチーフにした南大阪線・吉野線の特急です。外観はさくら色を基調とし、運転室後部には展望スペースも備えています。そこに今回、飛鳥・藤原の古代ロマンが重ねられます。
企画の狙いは、世界遺産登録の機運を来訪につなげること
近鉄は今回のラッピング列車について、世界遺産登録を目指す飛鳥・藤原エリアをさらに盛り上げ、より多くの人に足を運んでもらいたいと説明しています。
この企画の軸にあるのは、世界遺産登録に向けて高まる関心を、実際の来訪につなげることです。
飛鳥・藤原エリアは、日本古代国家の形成を語るうえで欠かせない地域です。一方で、京都や奈良公園、吉野の桜のように、誰もがすぐに観光イメージを思い浮かべる場所とは少し性格が異なります。
そこで効いてくるのが、四神というビジュアルです。青龍、朱雀、白虎、玄武。古墳の石室壁画、天文図、古代の宮都。歴史に詳しくない人でも、まず「見てみたい」「乗ってみたい」と感じやすい要素がそろっています。
近鉄の特設サイトでも、「目的地までの道のりにも、好奇心の扉をひらく出会いや特別な空間を詰め込んだ列車」と紹介されています。移動時間を、目的地へ向かうための時間から、旅の一部へ変えていく狙いがうかがえます。
世界遺産登録へ、注目が高まるタイミング
「飛鳥・藤原の宮都」は、2026年の世界遺産登録を目指している遺跡群です。文化庁によると、世界遺産委員会の諮問機関であるイコモスから「記載」が適当との勧告が出され、2026年7月19日〜29日に韓国・釜山で開催される第48回世界遺産委員会で登録審議が行われる予定です。
この流れの直後に走り出す「飛鳥・藤原 四神ライナー」は、世界遺産登録前後の関心を沿線へ広げる役割を担います。駅で目に留まる。写真に撮られる。SNSで共有される。乗った人が車内で世界観に触れる。そうした接点が重なることで、飛鳥・藤原エリアを「ニュースで知った場所」から「行ってみたい場所」へ近づけていく。鉄道会社らしい地域プロモーションです。
報道・Xでも関心広がる
発表後、鉄道系メディアでも「さくらライナー」を装飾したラッピング列車として相次いで紹介されました。マイナビニュースでは、外装に四神や世界遺産候補「飛鳥・藤原の宮都」の構成資産、現地の景観などをデザインしている点や、展望デッキ・枕カバーを含む内装装飾について報じています。
Xでも、デザインへの反応が広がっています。Yahoo!リアルタイム検索では、「かっこいい」「楽しみ」「面白そう」といった好意的な声に加え、「さくらライナーが4色に?」といった驚き、1編成だけのラッピングであることへの反応なども見られます。
ラッピング列車は、乗る人だけでなく、駅や沿線で見る人にも届きます。今回のように四神や天文図をまとったデザインは、鉄道ファンだけでなく、歴史好き、奈良好き、世界遺産に関心のある層にも広がりやすい題材です。
吉野だけで終わらない、南大阪線・吉野線の旅へ
南大阪線・吉野線といえば、吉野の桜を思い浮かべる人も多いはずです。さくらライナー自体も、吉野への旅を印象づける列車として親しまれてきました。
一方で、飛鳥・藤原エリアは、古墳、宮跡、寺院跡、石造物などをめぐる通年型の歴史観光と相性が良い地域です。「さくらライナー」が飛鳥・藤原の物語をまとうことで、吉野だけでなく、明日香、橿原、桜井方面を含めた広域観光への入口にもなります。春の桜だけにとどまらず、古代ロマンをたどる沿線の魅力を伝える列車として、存在感を高めていきそうです。
走り出す“世界遺産候補地への入口”
「飛鳥・藤原 四神ライナー」は、世界遺産登録を応援するラッピング列車です。ただ、その役割は応援の言葉だけにとどまりません。飛鳥・藤原という歴史資産を、四神というわかりやすく力のあるビジュアルで伝え、移動の時間を旅の導入に変える。登録に向けた機運を、現地へ向かうきっかけへつなげる。大阪阿部野橋から吉野へ向かう「さくらライナー」は、古代の宮都へ誘う列車として新しい表情を見せます。
8月1日のデビュー後、「飛鳥・藤原 四神ライナー」がどのような反響を呼ぶのか。世界遺産登録に向けて注目が高まる奈良南部エリアで、楽しみな列車が走り出します。
運行概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 列車名 | 飛鳥・藤原 四神ライナー |
| 運行開始 | 2026年8月1日(土) |
| 運行期間 | 当分の間 |
| 運行区間 | 近鉄南大阪線・吉野線 大阪阿部野橋駅〜吉野駅 |
| 対象車両 | 近鉄26000系「さくらライナー」1編成4両 |
| 主な装飾 | 四神、天文図、飛鳥・藤原の構成資産、古墳、石造物、現地景観など |
| 内装 | 展望デッキ、天井付近、枕カバーなどを装飾 |
| 運行予定 | 近鉄特設サイトで案内 |
出典
近畿日本鉄道ニュースリリース「ラッピング列車『飛鳥・藤原 四神ライナー』を運行」
近鉄「飛鳥・藤原 四神ライナー」特設サイト
近鉄「さくらライナー」車両紹介
文化庁「世界遺産に推薦中の『飛鳥・藤原の宮都』に係るイコモスによる評価結果及び勧告について」
マイナビニュース
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