名古屋市は、名古屋駅と再開発地区「ささしまライブ24」を結ぶ地下通路の整備を決定し、2032年度の完成を目指しています。歩行者の混雑解消と都市機能の向上を目的とし、総事業費は295億円を見込んでいます。
歩行者の安全と利便性向上へ

名古屋駅南側の笹島交差点から下広井町交差点南側まで約300mにわたって整備される地下通路は、幅8.5mで、そのうち約200mには2列の動く歩道が設置されます。これにより、スムーズな移動を実現し、通勤・通学時間帯の混雑を緩和する狙いがあります。通路内には店舗は設置されず、災害時の避難場所としてトイレが整備される予定です。
名古屋駅とささしまライブ24を結ぶ歩行者動線は、以前から混雑が深刻な問題となっていました。特に下広井町交差点では、信号待ちの歩行者が長蛇の列を作るほどで、安全対策が求められていました。市は2022年度に歩道の幅を6.5mから8.5mに拡張しましたが、それでも混雑の解消には至らず、地下通路の整備が最適と判断されました。
長年の計画が再始動
この地下通路構想は2009年に発表されましたが、当初の計画では2017年の完成を予定していました。しかし、前市長が「地上のにぎわいを損なう」との理由で反対し、計画は停滞していました。その後、ささしまライブ24の開業による通行量増加を受け、地元や企業からの要望が高まり、再び具体化されました。計画の経緯
年 | 主な動き |
---|---|
2009年 | 名古屋市が構想を発表。歩行者ネットワーク強化を目的とする。 |
2011年 | 構想が具体化し、基本ルート案を検討。 |
2015年 | 事業計画を策定し、動く歩道導入を検討。 |
2017年 | 地権者調整が難航し、開通予定が延期。沿道再開発との調整も課題に。 |
2019年 | 市が再検討を行い、地下空間活用方針を見直す。 |
2021年 | 整備方針を再策定し、2023年度着工を目標とする。 |
2023年 | 予定していた着工が延期。財政や都市計画の調整が課題に。 |
2025年 | 基本設計完了。2026年度着工を目指すと発表。 |
2026年 | 着工予定。詳細設計と調整が進行中。 |
2032年 | 完成予定。利便性向上と都市機能強化を目指す。 |
経済効果と都市機能強化

地下通路の整備により、歩行者の利便性向上だけでなく、沿道の商業施設やオフィスの集客力向上、不動産価値の上昇といった経済効果も見込まれます。さらに、エレベーターやエスカレーターの増設によるバリアフリー対応の強化、省エネ型LED照明や最新の換気システムの導入による環境負荷の軽減など、持続可能な都市づくりの観点からも意義があるプロジェクトとなります。
市は、地下通路整備を通じて名古屋駅周辺の歩行者ネットワークを強化し、利便性の向上と都市全体の活性化を図る方針です。今後は、詳細設計の進捗や工事中の交通影響の最小化が課題となりますが、都市機能の充実に向けた重要なプロジェクトとして注目されます。