広島都心を変える大型再開発
広島市中区基町の相生通沿いで「基町相生通地区第一種市街地再開発事業」が進められています。区域は約1.0ha、敷地面積は約7,500㎡で、かつて市営基町駐車場や中国電力基町ビルが立地していました。
代表施行者はUR都市機構で、共同施行者として朝日新聞社、朝日ビルディング、中国電力ネットワークが参画し、広島商工会議所と広島市も地権者として加わっています。総事業費は約577億円、設計・施工は竹中工務店が担当します。2024年10月に着工し、2027年4月に竣工、同年9月にはホテル開業が予定されています。
高さ160mの超高層複合ビル
事業の中心となる高層棟は、地上31階・地下1階、高さ160m、延床面積約77,900㎡の規模を誇ります。用途は事務所、ホテル、広島商工会議所、店舗、駐車場、駐輪場で構成されます。
中層部には基準階面積約1,700㎡、天井高約2.8mの高規格オフィスが整備され、中四国最大級となる業務拠点が形成されます。高層部には国際基準のラグジュアリーホテルが導入され、長年不足していた国際級宿泊施設の供給を実現します。低層部には広島商工会議所が移転し、産業支援拠点が都心核に統合されます。
このほか、地上5階・高さ26.75m、延床約2,800㎡の変電所棟が2025年11月に完成予定で、電力供給を止めることなく基幹設備を更新します。さらに、地上5階・地下1階・高さ18.16m、延床約5,600㎡の市営駐輪場棟が2028年度に着工、2029年度に完成する計画です。
市民に開かれたオープンスペース
高層棟には、市民が利用できる大規模な公共空間が整備されます。1階には約730㎡、高さ約16mのピロティが設けられ、相生通に面した「まちのゲート」として機能します。6階には約430㎡のオープンテラスが整備され、平日はオフィスワーカーや学生の憩いの場、休日や夜間はイベントスペースとして活用されます。
外観は中高層部をセットバックし、ガラスファサードに「水」「緑」「石」といった広島の原風景を象徴する要素を採り入れています。計画地はかつての立町御門跡にあたり、城下町の入口機能を現代に再接続する意味合いも込められています。
計画の歩みと国の支援
2016年に広島市がURに技術支援を要請したことを契機に検討が始まり、2017年に再開発検討会が発足しました。2018年には中国電力ネットワークと広島商工会議所が加わり、2020年には紙屋町・八丁堀地区が「都市再生緊急整備地域」に指定されました。
2022年には都市再生特別地区として都市計画決定が告示され、同年に施行認可を取得しました。2023年には国土交通大臣が「優良な民間都市再生事業計画」として認定し、既存建物の解体が始まっています。制度面では容積率緩和などの都市再生スキームが活用され、事業推進が後押しされています。
狙いは都心の吸引力とブランド向上
この再開発は、広島都心の吸引力を強化し、都市ブランドを高める戦略的な位置づけを持っています。中四国最大級の高規格オフィスを整備することで企業誘致や業務機能の高度化を図り、国際級ホテルの導入によって観光・MICE需要に対応します。
また、広島商工会議所は現在の相生通南側から高層棟へ移転し、現行ビルは解体される計画です。これにより原爆ドーム周辺の視環境が整理されることになります。事業主体は、この移転を「世界遺産にふさわしい景観形成への寄与」と位置づけています。
経済と人流への波及効果

新築高規格オフィスは、既存ビルからのグレードアップ移転を促し、広島市のオフィスマーケット全体の競争力を高めます。ホテルの開業により平均客室単価や滞在日数の上昇が期待され、観光収益の増加にもつながります。景観改善によって観光客の満足度が高まり、都市ブランドの評価を押し上げる効果も見込まれます。
さらに、2025年には広島電鉄「駅前大橋ルート」が開業し、JR広島駅から紙屋町・八丁堀までの移動時間が約4分短縮されます。この交通改善と再開発の相乗効果により、人流は駅前から都心部へ再誘導され、広島は「回遊型都市」へと進化することが期待されます。
広島の未来を形づくるランドマーク
基町相生通再開発は、高さ160mの超高層複合ビルを中心に、都市機能、景観、公共空間、インフラを同時に刷新する官民連携プロジェクトです。2027年の竣工後、広島都心は駅前と紙屋町・八丁堀の二極構造を超えて、国際競争力を備えた新しい都市像を描き出すことになります。
出典元
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広島市「基町相生通地区市街地再開発事業」公式ページ
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/shigaichi-saikaihatu/288144.html -
国土交通省プレスリリース(2023年10月27日)
「基町相生通地区第一種市街地再開発事業を優良な民間都市再生事業計画として認定」 -
「かみはちはじまる」基町相生通地区第一種市街地再開発事業 公式サイト
https://kamihachi.jp -
建設通信新聞(2024年10月1日付)
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広島市都市計画審議会 議事録・資料(2022年2月2日承認分)
2025年9月の様子
現地の様子です。地上鉄骨建方がメチャクチャ進んでおり驚きました!
南東側から見た様子です。敷地ギリギリいっぱいにビルが建てられています。
中層階ではガラスカーテンウォールの取り付けが始まっていました。完成イメージパース通りのクリスタルな外観になりそうです。
南側から見た様子です。高層階に入居するホテルについては、ハイアット系最上級「アンダース広島」が入居するという噂があります。
南西側から見た様子です。
東側壁面を見上げた様子です。
北東側から見た様子です。
最後は少し離れたところから、パセーラ(基町クレド)と計画地を絡めたアングルです。「基町相生通地区第一種市街地再開発事業」が立ち上がると、超高層ビル2棟が呼応する大都会らしい景観が醸し出されそうです。