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大阪城東部地区1.5期開発、新駅・駅ビル構想を推進へ 。入札ゼロのアリーナ計画と「ライブツアー資本主義」への影響とは?


新駅・駅ビル、駅前空間の開発推進

Osaka Metroは2025年9月4日、「大阪城東部地区1.5期開発」の推進方針を発表しました。事業の柱は、新駅と駅ビルの建設、駅前空間の整備であり、当初スケジュールから大きな遅れが生じないように早期実現を目指します。

まちづくりの基本コンセプトは「大学とともに成長するイノベーション・フィールド・シティ」です。大学キャンパスやビジネス交流拠点、市民の知識・情報拠点を組み合わせた複合開発とすることで、国内外からの集客や新産業の展開につなげていく計画です。

新駅の設置により中央線の東西軸を強化し、周辺開発を促します。さらに、都市型MaaS構想の具現化を背景に、地下・地上・空・水上を結ぶ「モビリティのベストミックス拠点」を形成する方針です。駅ビルには大規模なVポートを備え、空飛ぶクルマと鉄道を結ぶ新しい駅像を描いています。

公募は「応募ゼロ」

同日、Osaka Metroと公立大学法人大阪は、森之宮エリアで予定していた1.5期開発事業の公募結果を発表しました。1万人以上を収容するアリーナ施設や新キャンパスを2028年までに整備する計画でしたが、資材高騰などを背景に応募はゼロとなりました。

Osaka Metroは「再開発に関心を持つ事業者は多かったが、採算面を懸念して応募に踏み切れなかったとみられる」と説明しており、今後は再入札や随意契約を検討するとしています。

今回の応募なしという結果は、単純に再開発の遅れにとどまらず、全国的に広がる「ライブツアー資本主義」の流れの中で、大阪のアリーナ整備が後れを取ることにつながる可能性があります。その結果として、大阪が主要開催地から外れる「大阪飛ばし」が強まる懸念も指摘されています。

デザインパース公開、新駅・駅ビルの姿


公開されたデザインパースでは、大規模な駅ビルのイメージが示され、注目を集めました。大阪メトロは「今後の検討や協議により変更の可能性がある」と説明しており、現時点では構想段階とされています。


具体的な整備計画

  • JR大阪城公園接続デッキ
     JR大阪城公園駅と森之宮新駅を接続するデッキを整備し、新駅からアリーナ、大阪公立大学まで一体の動線を形成します。これにより東西の移動が大幅に改善される見込みです。

  • 第二寝屋川の親水空間
     北端の第二寝屋川沿いに歩行者空間を整備し、水辺を活かした回遊性の高いエリアを計画しています。市民や観光客の憩いの場としての役割も期待されます。

  • 1万人規模のアリーナ等
     駅前立地と広大な用地を活かして、大規模な集客・交流施設を整備する構想です。大阪城ホールとの連携を図りつつ、学術交流やビジネス交流、市民の文化活動を支える拠点をめざしています。

サブスク時代の「ライブツアー資本主義」

今回の森之宮アリーナ構想は、都市間競争の渦中にあります。

SpotifyやApple Musicといった定額配信サービスの普及により、音源販売の収益は縮小しました。アーティストの収益の中心は「ライブ」に移行しており、これが「ライブツアー資本主義」と呼ばれる現象です。

1万人〜2万人規模のアリーナは、単なる会場ではなく都市の経済装置として機能します。ライブ1公演が宿泊・交通・飲食・観光に波及効果を生み、都市ブランドにも直結します。

首都圏一極集中と「地方おまけ化」


出展:TOYOTA ARENA TOKYO

ライブツアーの構成は「東京3公演、大阪1公演、名古屋ゼロ」といった形も珍しくなく、首都圏集中が強まっています。地方は「追加公演」の位置づけにとどまるケースが多く、都市を選別する戦略が背後にあると見られています。

全国で加速するアリーナ整備

出展:三井不動産

こうした状況を背景に、各都市がアリーナ整備を進めています。


  • 名古屋:仮称「名古屋アリーナ」構想(2025年着工、2028年開業予定)

  • 横浜:Kアリーナ横浜(2023年開業、世界最大級の音楽専用アリーナ)

  • 神戸:GLION ARENA KOBE(2025年竣工、多目的アリーナ+TOTTEI PARK整備)

  • 東京:有明アリーナ(2019年開業)、ぴあアリーナMM、代々木第一体育館の改修

全国的に「アリーナ戦争」とも呼べる競争が進んでいます。

大阪の出遅れと課題

一方、大阪は万博やIRといった大型プロジェクトが進む一方で、ライブ専用アリーナ整備では遅れが目立っています。


  • 大阪城ホール:高稼働、余力なし

  • 京セラドーム・インテックス:大き過ぎる、音響や視認性の課題

  • 万博アリーナ計画:実現まで時間を要している

こうした状況が続けば、全国的なツアーから大阪が外される可能性もあり、文化資本や都市ブランドの低下につながる懸念が残ります。

結論:文化資本を守れるか

サブスク時代の音楽構造は、都市政策や文化戦略と密接に結びついています。アリーナを持たない都市は「文化資本」を失い、観光やブランド力の面で不利になる可能性があります。

森之宮1.5期開発の停滞は、その縮図とも言えます。アリーナ整備は単なる施設建設ではなく、都市の将来戦略の一部であり、大阪がどう対応していくのかが注目されます。






出典元

  • Osaka Metro「大阪城東部地区1.5期開発における新駅・駅ビル、駅前空間の開発の推進について」(2025年9月4日)

  • 日本経済新聞「大阪メトロの森之宮アリーナ開発、入札応募ゼロ 資材高で採算危惧」(2025年9月4日)

  • 三井不動産ニュースリリース「(仮称)名古屋アリーナ」着工について(2025年8月27日)

  • Kアリーナ横浜公式サイト

  • GLION ARENA KOBE 公式サイト・TOTTEI PARK プロジェクト情報

  • 東京都「有明アリーナ」施設概要

  • ぴあアリーナMM 公式サイト

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