レクサス新型ESを実車確認 これは「セダン再定義」だった。 グラングリーン大阪で見た、次世代レクサスの予告編


タイムアウトマーケット大阪を取材するためにグラングリーン大阪を訪れたところ、キャニオンの一角でレクサス新型「ES」の実車に出会いました!

WebやYouTubeで何度も見ていた新型ESですが、実車の印象は写真とは大きく異なりました。見た目はたしかにセダンです。低く長いボディ、リアへ流れるキャビンラインなど、セダンの文法で構成されています。

しかし実際に見ると、従来の「低く薄いセダン」とは別物でした。セダンの上質感や流麗さを残しながら、クロスオーバー的な乗降性、視界、ボディの厚み、安心感を取り込んだ新しい高級車。新型ESは、電動化時代の新しいセダン像を提示しているように感じました。

新型ESとは何か?次世代電動車ラインアップの先陣

新型ESは、2025年4月に上海モーターショーで世界初公開された8代目モデルです。ESは1989年のレクサスブランド創設時から続く基幹モデルで、静粛性、乗り心地、広い室内空間を武器に、世界各国で販売されてきました。

今回の新型ESは、HEVとBEVを併せ持つ「次世代電動車ラインアップの先陣」として位置づけられています。日本発売は公式に「2026年春頃」と案内されており、海外向けにはHEVの「ES300h」「ES350h」、BEVの「ES350e」「ES500e」が設定されています。

開発コンセプトは「Experience Elegance and Electrified Sedan」。単に既存の上級セダンを電動化したのではなく、ESが持ってきたエレガンス、静粛性、快適性を、電動化時代の移動体験として再設計するという宣言です。

デザイン:スピンドルグリルを“壊す”勇気

今回、グラングリーン大阪に展示されていたのはBEV仕様でした。まず目を引いたのは、グリルレスのフロントマスクです。

これまでのレクサスは、大開口の「スピンドルグリル」を強烈なブランドアイコンとしてきました。しかし新型ESは、従来のような大きなグリルを持ちません。EVらしい“つるん”とした面構成で、ノーズの低さ、ライトの造形、ボディ全体で糸巻き形状を表現する「スピンドルボディ」によって、グリルに頼らずレクサスらしさを表現しています。

正直、スピンドルグリルから離れ始めた当初は違和感がありました。しかし今回、新型ESの実車を見て、その狙いが腑に落ちました。大きなスピンドルグリルはレクサスの成功体験でしたが、同時にデザインの自由度を縛る存在にもなっていたのだと思います。

電動化が進めば、巨大な開口部は必ずしも必要ではなくなります。だからこそレクサスは、自ら築いた成功の象徴をあえて解体し、グリルではなくボディ全体でブランドを語り直す道を選んだのでしょう。

新型ESのデザインは、単なる流行への追随ではありません。レクサスが挑戦するブランドであり続けるために、過去の成功体験を乗り越えようとする決意表明のように見えました。

ボディサイズはLS級。しかし実車は重たく見えない

新型ESのボディサイズは、全長5,140mm、全幅1,920mm、全高1,555〜1,560mm、ホイールベース2,950mmです。数値だけ見ると、もはやミドルセダンというより、レクサスのフラッグシップであるLSに迫る堂々たるサイズ感です。

比較のために、LSとアルファードを並べると、その大きさがよく分かります。


車種 全長 全幅 全高 ホイールベース
新型ES 5,140mm 1,920mm 1,555〜1,560mm 2,950mm
レクサス LS 5,235mm 1,900mm 1,450mm 3,125mm
アルファード 4,995mm 1,850mm 1,935〜1,945mm 3,000mm

こうして見ると、新型ESは全長こそLSにわずかに及ばないものの、全幅はLSを上回っています。一方で全高はLSよりかなり高く、アルファードほどではないにせよ、従来のセダンとしては明らかに背が高い部類です。

つまり新型ESは、長さはLS級、幅もかなりワイド、そして高さはクロスオーバー的という、かなり独特なパッケージを持っていることになります。

ただ、実車は数字ほど重たく見えませんでした。理由は、ボディ全体をワンモーション的に見せるサイドシルエットにあります。キャビンがリアへ強く流れ、トランクを過度に主張しないリアまわりが、5,140mmの大きなボディを必要以上に巨大に見せないようにしています。

セダンなのに厚みがある:BEVの制約をデザインに変えた

新型ESはセダン型のフォルムを採用していますが、実車を見ると、従来の低く薄いセダンとは少し異なる印象を受けます。

理由は、BEV仕様では床下にバッテリーを搭載するため、ボディ下部に厚みが出ることです。従来のセダンは、低く、薄く、地面に近いことが美しさの条件でしたが、BEVでは構造的にフロアが高くなり、横から見るとボディ全体に一定の高さが生まれます。

ただ、新型ESはその厚みを無理に隠そうとしていません。むしろ、ボディサイドの面構成やショルダーライン、リアへ流れるキャビンラインによって、BEV特有の厚みをデザインに織り込んでいます。新型ESは、「従来のセダンを電動化したクルマ」ではなく、「BEV時代の構造からセダンを再設計したクルマ」に見えました。

乗り込んだ瞬間、「あれ、SUVみたい」と感じた

実際に乗り込んで、最初に思ったのはこれでした。

「あれ、これSUVみたいに乗りやすい?」

従来のセダンは、ドアを開けて腰を深く落として乗り込む感覚があります。低い着座位置による包まれ感や走行安定感はセダンの魅力ですが、その一方で、乗降性ではSUVに劣る面がありました。

特に年齢を重ねたユーザーや、普段からSUVに慣れている人にとっては、低いセダンへの乗り降りそのものが少し面倒に感じられることがあります。

しかし新型ESは違いました。車体に物理的な高さがあるため、体を自然に滑り込ませるように乗り込めます。腰を深く落とし込む感じではなく、スッと座れる。視点もやや高めで、従来のセダンのように地面に近く沈み込む感覚は強くありません。BEV化による床下バッテリーの厚みが、乗降性という体験価値に転換されていました。

実態的にはクラウンクロスオーバーに近い

こうして実車を見て、乗り込んでみると、新型ESは単純な「セダン」ではないと感じました。近いのは、むしろクラウンクロスオーバーです。もちろんブランドも価格帯もキャラクターも異なりますが、「セダンの形をしながら、従来セダンの低さにこだわらない」という思想には共通するものがあります。

新型ESは、セダンの上質感と静粛性を持ちながら、着座位置はやや高め。乗り降りは楽で、存在感も堂々としている。それでいて、SUVほど腰高には見えず、流麗なセダンらしさも残しています。

新型ESは「セダンか、SUVか」という従来の分類では捉えきれないモデルです。セダンの形をしている。しかし体験価値はクロスオーバーに近い。低すぎない着座位置、楽な乗降性、広い室内、堂々とした存在感。そして、セダンらしい静粛性と流麗さ。この組み合わせこそが、新世代のセダンなのだと思いました。

インテリア:「操作する空間」から「体験する空間」へ

新型ESのインテリアも、かなり新しい方向へ進んでいます。象徴的なのが、世界初採用とされる「Responsive Hidden Switches」です。物理スイッチを内装に同化させ、必要なときに機能を浮かび上がらせるような考え方の装備です。さらに、イルミネーション、空調、フレグランスなどを連動させる「Sensory Concierge」も採用されています。

最近のクルマは、大型ディスプレイ化とタッチパネル化が一気に進みました。しかし、頻繁に使う操作まで画面内に閉じ込めると、かえって使いにくくなることがあります。

新型ESが面白いのは、見た目はミニマルにしながら、操作感を完全には捨てていない点です。適度に物理スイッチを残しつつ、見た目はシンプルに見せることで、デジタル化と使いやすさの両立を狙っています。

現行NXを日常的に使っているユーザーでさえ、新型ESに触れると「世代が変わった」と感じるのではないでしょうか。

ドイツ勢とは違う。レクサスは“信頼できる上質”を選ぶ

ただし、新型ESのインテリアは、メルセデス・ベンツやBMWのような派手なデジタル演出とは方向性が異なります。ドイツ御三家のコックピットは、大画面やアンビエントライト、派手なメーター演出で、乗った瞬間に「アガる」感覚を演出します。

一方、新型ESはそれに比べるとシンプルで地味に見えるかもしれません。しかし、ここにレクサスの哲学があります。最新のデザインや素材で高級感を更新しながら、核にある思想は大きくブレない。長く使えるカバン、時計、万年筆のような安心感に近いものです。

その最たる価値が、信頼性です。走行中にナビが落ちる、ADASが突然切れて復旧しない。そうした不安が起きにくく、「当たり前のことが、当たり前に、安心してできる」。これは地味ですが、高級車にとって極めて重要な性能です。

新型ESのインテリアには、派手さよりも誠実さ、デジタル演出よりも長く乗ったときの安心感を重視する、レクサスらしい上質さが落とし込まれているように感じました。

日本発売は2026年春頃。価格は750万円〜900万円程度か

新型ESの日本発売について、公式には「2026年春頃」とされています。一部報道では、2026年6月11日発売、BEV先行、HEVは2026年後半導入、価格はBEVが900万円程度、HEVが750万円程度との販売店情報も伝えられていますが、現時点では非公式情報です。

価格がこの水準になるなら、新型ESは従来より明確に上級モデルへシフトします。ただ、それは単なる値上げではなく、ESの役割そのものが変わるということだと思います。

ISでは物足りない。SUVではなく、静かで上質な移動空間が欲しい。しかし従来型セダンの低さや乗降性には少し抵抗がある。そうしたユーザーに向けて、新型ESはかなり明確な答えを出しているように見えます。

これは「セダン復権」ではなく「セダン再定義」

今回、グラングリーン大阪で新型ESを実車確認して強く感じたのは、レクサスが単に「セダンを復権させようとしている」のではない、ということです。

日本市場では、すでにセダンは主流ではありません。高級車市場でもSUVやミニバンの存在感が強く、レクサスでもNX、RX、LX、LMといったモデルに注目が集まっています。その中で、新型ESが従来型セダンの価値観に戻るだけなら、マーケットの流れには逆らえません。

しかし新型ESは、低く薄いセダンの美学に固執していません。BEV時代の構造を前提に、ボディの厚みを乗降性や安心感へ転換し、スピンドルグリルという成功体験も手放しています。インテリアも、派手なデジタル演出ではなく、信頼できる上質を選んでいる印象です。

これは「セダン復権」ではなく、「セダン再定義」です。セダンという形を残しながら、中身を電動化時代に合わせて作り替える。新型ESは、その分かりやすい回答なのだと思います。

まとめ:新型ESは、次のレクサスを示す予告編だった

グラングリーン大阪のキャニオンで偶然出会った新型ESは、想像以上に重要なモデルでした。

床下バッテリーによるボディの厚みは、乗降性や安心感へと変換され、グリルレスの顔つきは、スピンドルグリルからスピンドルボディへの進化を示しています。

インテリアは派手なデジタル演出で驚かせるのではなく、信頼できる上質さを積み上げる。そこには、レクサスらしい慎重で実直な思想が感じられました。

セダンの形を残しながら、電動化時代に合わせて構造そのものを作り替えた、クロスオーバーセダン。自ら築いたスピンドルグリルという成功体験を手放し、低く薄いセダンの文法にも縛られない。実車を見た限り、この挑戦はかなり面白いところまで来ていると感じました。






出典元

  • LEXUS公式「新型ES World Premiere」
  • トヨタ自動車公式ニュースルーム「LEXUS、新型ESを世界初公開」
  • Car Watch「レクサス、新型ESを世界初公開 日本で2026年春ごろ発売予定」
  • くるまのニュース「8年ぶり全面刷新”! レクサス新型セダンまもなく登場!」

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