ホテルニューアワジグループが、淡路島で過去最大規模となる大型投資に踏み出します。同グループは2027年1月下旬、兵庫県洲本市小路谷と南あわじ市松帆古津路に、ラグジュアリーリゾートホテル2施設を開業する計画です。総事業費は約90億円。このうち約26.4億円は、経済産業省の中堅・中小企業向け大規模成長投資補助金を活用します。
今回の計画は、新たな宿泊施設を整備するだけでなく、ホテルニューアワジグループが長年築いてきた「淡路島の温泉旅館」というブランドを、より高付加価値な滞在体験へ発展させる取り組みといえます。想定される顧客層は、関西圏の既存顧客に加え、首都圏富裕層、海外富裕層、長期滞在客、そして神戸空港国際化後の訪日客です。
淡路島を「関西近郊の温泉旅行先」から、「瀬戸内海を望む都市近郊型ラグジュアリーリゾート」へ。今回の2施設は、その流れを象徴するプロジェクトになりそうです。
2施設の概要
南あわじ市慶野松原ホテルプロジェクトイメージパース
今回発表されたのは、洲本市古茂江海岸ホテルプロジェクトと、南あわじ市慶野松原ホテルプロジェクトの2施設です。どちらも少室数・高付加価値型のリゾートホテルですが、役割は少し異なります。
| 計画名 | 所在地 | 開業予定 | 客室数 | 延床面積 | 総事業費 | 想定単価 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 洲本市古茂江海岸ホテルプロジェクト | 兵庫県洲本市小路谷 | 2027年1月下旬 | 25室 | 6,094.18㎡ | 約44億円 | 1室1泊平均30万円程度 | グループ最上級ラグジュアリー |
| 南あわじ市慶野松原ホテルプロジェクト | 兵庫県南あわじ市松帆古津路 | 2027年1月下旬 | 36室 | 6,492㎡ | 約46億円 | 1室1泊平均9万円弱 | グループ初のオールインクルーシブ型 |
洲本市古茂江海岸の新ホテルは、第一期工事で完工した4室に加え、紀淡海峡を望む21室を新築します。全25室は100㎡以上のスイート仕様で、全室に温泉露天風呂を備えます。うち2室には、温水プライベートプールやサウナも設けられます。
一方、南あわじ市慶野松原の新ホテルは、ホテルニューアワジグループ初のオールインクルーシブ型です。約13,205㎡の敷地に、宿泊棟、ダイニング・温泉大浴場棟、ヴィラタイプ客室2棟、ビーチサイドプールを整備。飲食費や館内施設利用料を宿泊費に含め、ウェルネスや長期滞在需要を取り込む計画です。
狙いは「淡路島の宿泊単価」を引き上げること
洲本市古茂江海岸ホテルプロジェクトイメージパース
今回の計画で特に注目されるのが、洲本市古茂江海岸プロジェクトの1室1泊平均30万円という価格設定です。客室数25室、総事業費約44億円なので、単純計算では1室あたり約1.76億円の投資になります。
南あわじ市慶野松原プロジェクトも、36室で総事業費約46億円。こちらも1室あたりでは約1.28億円の投資です。
客室数を大きく増やすホテル開発ではなく、少室数・高単価・高付加価値の滞在体験で収益性を高めるリゾート投資といえます。ホテルニューアワジグループが見据えているのは、単なる宿泊客数の拡大ではなく、淡路島そのものの宿泊単価を引き上げることではないでしょうか。
特に洲本市小路谷は、ホテルニューアワジ、淡路夢泉景、夢泉景別荘 天原など、グループの中核施設が集まる本拠地エリアです。ここに1泊30万円級の最上級ホテルを加えることで、洲本温泉エリア全体のブランド価値をさらに高める狙いが見えてきます。
一方、慶野松原側は、夕陽の名所、白砂青松の海岸、うずしお温泉、サウナ、フィットネス、プールを組み合わせた滞在型リゾートです。洲本が「本拠地の最上級化」だとすれば、慶野松原は「淡路島西海岸の長期滞在型リゾート化」と整理できます。
ホテルニューアワジは「淡路島の旅館」を超えた存在に
蒼の湖邸 BIWAFRONT HIKONE
ホテルニューアワジグループは、淡路島だけで事業を展開している温泉旅館チェーンではありません。現在は淡路島を中核に、神戸、京都、滋賀、岡山、香川へと展開しています。
| 大分類 | 主な施設 | 戦略的な意味 |
|---|---|---|
| 淡路島本拠地・温泉リゾート型 | ホテルニューアワジ、淡路夢泉景、夢泉景別荘 天原、渚の荘 花季、海のホテル 島花、夢海游 淡路島、洲本市古茂江海岸ホテルプロジェクト | 洲本温泉を面で押さえるグループの中核 |
| 淡路島南部・景勝地リゾート型 | ホテルニューアワジ プラザ淡路島、あわじ浜離宮、湊小宿 海の薫とAWAJISHIMA、南あわじ市慶野松原ホテルプロジェクト | 鳴門海峡・慶野松原・福良など南淡路の観光資源を商品化 |
| 都市型・外資ブランド融合型 | 神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ | 都市型ホテルに温泉旅館ノウハウを融合 |
| 京都インバウンド・小規模高級宿型 | 清水小路 坂のホテル京都、Hotel 侑楽 京八坂、Hotel 宇多野京都別墅 | 訪日客・高付加価値滞在・和の小規模宿泊需要を取り込む |
| 地方再生・広域温泉リゾート型 | 蒼の湖邸 BIWAFRONT HIKONE、ザ・シロヤマテラス津山別邸、城下小宿 糀や、琴平花壇、湯山荘 阿讃琴南 | 地方観光資源を温泉・食・滞在価値で再編集 |
象徴的なのが、神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズです。ブランドは外資系のシェラトンですが、運営母体は株式会社ホテルニューアワジが100%出資する株式会社ホテルニューアワジ神戸です。
この展開からは、同グループが単なる旅館運営にとどまらず、外資ブランド、都市型ホテル、温泉、和の接客、地域食材、歴史的観光資源を組み合わせながら、地域ごとに異なる宿泊商品をつくってきたことが分かります。
淡路島の老舗旅館グループから、関西・瀬戸内エリアの観光資源を高付加価値化する独立系ホテルオペレーターへ。その歩みの延長線上に、今回の90億円投資があります。
背景にある淡路島全体の富裕層観光戦略
出展:ホテルニューアワジ
今回の投資は、淡路島全体の観光戦略とも重なります。
淡路島観光協会は2026年3月、東京で首都圏の富裕層向け旅行会社やメディアを対象に「プレミアム淡路島 ネットワーキングイベント」を開催しました。参加者は約110人。淡路島の食、歴史文化、温泉、上質な宿泊施設、一次産業・伝統産業を生かした体験型コンテンツを紹介。首都圏から淡路島への来訪比率は近年上昇傾向にあり、海外客についても、一部の観光施設や宿泊施設で存在感を増しつつあります。
さらに、淡路島観光協会は体験コンテンツを112プランまで拡充し、英語通訳ガイド16名を認定。今後は島内移動を含めた高品質ガイド制度も始める計画です。
食、文化体験、移動、ガイド、温泉、自然景観を束ねることで、淡路島全体を「高く売れる滞在商品」へ育てていく。今回の高級ホテルは、その受け皿であると同時に、観光単価を引き上げる役割も担うことになりそうです。
神戸空港国際化を見据えた先回り投資
もう一つの背景が、神戸空港の国際化です。
関西エアポートは、神戸空港の国際定期便について2030年4月の就航を目指しています。今回の公式発表でも、洲本市古茂江海岸プロジェクトについて、神戸空港の国際化に伴うチャーター便や、将来の国際定期便就航で増加が見込まれる訪日外国人旅行者、とりわけ富裕層のニーズを満たす施設を目指すとしています。
淡路島は、神戸空港から車で約70〜80分。関西国際空港からは約120分です。神戸空港の国際化が本格化すれば、淡路島は「関西の奥座敷」だけでなく、海外からもアクセスしやすい都市近郊型リゾートとして見られる可能性が高まります。
2027年に施設を開業し、2030年前後の国際定期便時代に向けて、サービス、人材、送客ルート、旅行会社との接点を整える。今回の投資には、将来の国際観光市場を見越した準備という意味も含まれています。
戦略の実現に向けた3つのポイント
ホテルニューアワジグループの方向性は明快です。ただし、淡路島を高単価リゾートデスティネーションへ育てていくには、いくつかのポイントがあります。
1. 神戸空港国際化の時間軸
2030年4月の国際定期便就航は、現時点では目標です。航空会社の戦略、国際情勢、訪日需要、空港運用体制によって、実際の立ち上がり方は変動する可能性があります。
そのため、2027年の開業後すぐに海外富裕層需要が大きく流れ込むとは限りません。当面は、関西圏、首都圏、国内富裕層、チャーター便利用者を取り込みながら、国際定期便時代へ向けた準備期間を積み上げていくことになりそうです。
2. 1泊30万円の客層をどう広げるか
1泊平均30万円という価格帯は、国内旅館市場では明確にラグジュアリー領域です。この客層を安定的に取り込むには、既存顧客や通常のOTAに加え、富裕層向けの旅行会社、コンシェルジュネットワーク、法人・インセンティブ旅行、プライベートツアーとの接点づくりも重要になります。
ホテルニューアワジが持つ温泉旅館としての信頼感に、国際ラグジュアリー市場への販売ルートをどう重ねていくか。ここは今後の注目点です。
3. 淡路島全体の体験価値
高級ホテルの魅力をさらに高めるには、島全体の体験価値も重要です。
交通利便性、二次交通、英語対応、食体験、文化体験、ガイド、ナイトタイムの過ごし方、長期滞在時の選択肢。これらが一体で磨かれるほど、淡路島は「高く売れる観光地」としての説得力を増していきます。
今回の投資は、ホテルニューアワジグループだけでなく、淡路島全体の観光力向上にもつながるプロジェクトといえます。
まとめ:淡路島は「瀬戸内ラグジュアリー」へ動き出す
今回の2ホテル計画は、ホテルニューアワジグループが淡路島の観光価値をもう一段引き上げるための旗艦投資です。
洲本では、グループ本拠地の最上級化。
慶野松原では、オールインクルーシブによる滞在型リゾート化。
神戸では、シェラトンブランドを通じた都市型ホテル運営。
京都、彦根、津山、琴平では、地域資源を再編集するホテル運営ノウハウ。
これらを束ねると、ホテルニューアワジグループの姿はより立体的に見えてきます。
淡路島の老舗旅館グループでありながら、地方観光地を高付加価値リゾートへ育てていく、関西・瀬戸内型の独立系ホテルオペレーターでもある。今回の90億円投資は、その進化を象徴するプロジェクトといえそうです。
淡路島は今後、「関西近郊の温泉旅行先」から、「神戸空港国際化時代の瀬戸内ラグジュアリーリゾート」へと、もう一段上のステージに向かおうとしています。その転換を先行して形にしようとしているのが、ホテルニューアワジグループです。
出典・参考資料
- 株式会社ホテルニューアワジ「淡路島にラグジュアリーリゾートホテルを2施設開業」公式発表
- 神戸新聞NEXT「ホテルニューアワジ、淡路島に高級リゾート2施設」関連報道
- 観光経済新聞「淡路島観光協会、富裕層向け旅行会社・メディアに淡路島をPR」
- 神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ公式サイト
- ホテルニューアワジグループ公式サイト







