CBRE「ジャパンリテールマーケットビュー 2026年第2四半期」心斎橋の路面店賃料は全国2位の月28万円、空室率は再び0%に 梅田・京都は高値維持、神戸は再開発工事で下落



関西の主要商業地で、路面店舗市場の方向性が分かれています。

CBREの「ジャパンリテールマーケットビュー 2026年第2四半期」によると、心斎橋の平均賃料は前期比1.8%上昇し、月額28万円/坪の過去最高値を更新しました。プライムエリアの空室率も0.0%となり、銀座に次ぐ全国2位の賃料水準に達しています。

一方、梅田と京都の平均賃料は高値圏で横ばい。神戸は三宮再開発に伴う歩行者動線の変化が響き、前期比3.3%下落しました。関西4市場は、心斎橋の「上昇」、梅田の「安定」、京都の「再編」、神戸の「一時調整」と、それぞれ異なる局面にあります。

全国では調査対象10エリアのうち5エリアで平均賃料が上昇し、新宿を除く4エリアで過去最高値を更新しました。銀座、新宿、渋谷、心斎橋の空室率は0.0%となり、主要ハイストリートの物件不足が鮮明になっています。

心斎橋は銀座に次ぐ全国2位、表参道・原宿を上回る


全国主要商業地の路面店舗・平均賃料ランキング

順位 エリア 平均賃料月額・坪 前期比 空室率 2026年Q2の動き
1 銀座 29万8,000円 +0.7% 0.0% 4期連続で過去最高
2 心斎橋 28万円 +1.8% 0.0% 過去最高を更新
3 表参道・原宿 25万6,000円 +1.6% 0.1% 6期連続で過去最高
4 新宿 18万7,000円 +2.2% 0.0% 調査開始以来初の空室ゼロ
4 渋谷 18万7,000円 +2.7% 0.0% 6期連続で過去最高
6 京都 13万4,500円 横ばい 1.8% 過去最高を維持
7 梅田 12万9,000円 横ばい 大型店やラグジュアリーの出店が継続
8 神戸 11万5,500円 ▲3.3% 0.6% 再開発工事による人流減少が影響
9 7万2,000円 横ばい 3.2% 新規商業施設の開業で空室率低下
10 天神 6万6,500円 横ばい 1.2% 過去最高を維持
出所:CBRE「ジャパンリテールマーケットビュー 2026年第2四半期」

平均賃料は、各ハイストリートに整形約60坪の1階路面店舗を想定した月額成約賃料です。街全体の売上高や集客力ではなく、主要通りの路面店賃料を比較した指標で、梅田は空室率調査の対象外です。

心斎橋の月額28万円/坪は、銀座の約94%に相当します。表参道・原宿を2万4,000円/坪上回る一方、同じ関西の京都とは14万5,500円/坪の差があり、東京以外では突出した市場を形成しています。

関西4市場、それぞれ異なる局面に


エリア 現状 市場を動かす要因 今後の焦点
心斎橋 空室率0.0%、賃料上昇 国内外ブランドによる出店競争 相場を上回る契約と追加上昇
梅田 賃料は高値圏で安定 百貨店、駅ビル、大型商業施設の更新 茶屋町を含む回遊性の向上
京都 過去最高値を維持 インバウンド、大型区画需要、物件取得 建て替えに伴う商業機能の再配置
神戸 賃料は一時調整 三宮再開発による歩行者動線の変化 工事後の人流回復と賃料反転

心斎橋―多業種が一等地を争う西日本の旗艦店市場



心斎橋では、スポーツ、アイウェア、バッグなどの出店が決まり、募集中の区画にもアパレル、シューズ、時計、キャラクターグッズ、ドラッグストアなど幅広い業態から引き合いが入りました。

賃料上昇を牽引したのは、建て替えに伴い一時閉店していたリテーラーの再出店です。対象区画を巡って複数の業態が競合し、高い水準で契約したとみられます。

エリア初出店の海外ブランドや既存店の移転を計画するリテーラーが、相場を上回る賃料で申し込む事例も確認されています。これらが成約すれば、平均賃料はさらに上昇する可能性があります。

心斎橋は、ラグジュアリーやインバウンドだけに依存していません。スポーツ、ファッション、キャラクター、化粧品など多様な業態が立地を求めており、西日本におけるブランド発信拠点としての性格を強めています。

梅田―路面店賃料は横ばい、大型商業施設が市場を下支え



梅田の平均賃料は12万9,000円/坪で横ばいでした。シューズやアパレルの出店に加え、大型商業施設ではテナントの入れ替えが進み、ラグジュアリーブランドの出店や既存店の拡張も続いています。

茶屋町では大型スポーツ旗艦店の開業が予定されており、新たな集客拠点として周辺の歩行者量や回遊性を高める効果が期待されています。

梅田は、路面店よりも百貨店、駅ビル、大型商業施設内に消費が集まる市場です。全国ランキングでは7位ですが、路面店賃料だけで街全体の商業規模を評価することはできません。

京都―物件取得と大型店の建て替えが同時進行

京都の平均賃料は13万4,500円/坪で、過去最高値を維持しました。空室率は前期から0.6ポイント低下し、1.8%となっています。空室率低下の直接的な要因は、空室区画を抱えていた物件をリテーラーが取得したことです。賃貸だけでなく、不動産そのものを取得して出店場所を確保する動きが表れました。

店舗売上に占めるインバウンド比率の上昇に伴い、リテーラーが想定する売上高も高まっています。ファッションやアミューズメント施設などから、大型区画への出店需要もみられます。

一方、四条通では大型店の建て替えや店舗改装に伴う閉店が重なっています。短期的には歩行者の流れが変化する可能性がありますが、賃料と出店需要は高水準です。京都市場は需要低迷ではなく、商業機能の再編局面に入ったとみられます。

神戸―再開発工事による局地的な賃料下落

神戸の平均賃料は前期比3.3%下落し、11万5,500円/坪となりました。全国10エリアで賃料が下がったのは神戸だけです。

主因は、三宮再開発に伴うフラワーロードの歩道橋や歩道の封鎖です。通行量が減少し、リテーラーの出店意欲が後退しました。ただし、空室率は前期から0.3ポイント低下し、0.6%となっています。三宮センター街では売上が堅調な店舗も多く、既存店の拡張移転もみられました。

今回の賃料下落は、神戸都心全体の需要低迷というより、工事の影響を受けたフラワーロード周辺の一時的な調整と考えられます。駅前と三宮センター街、旧居留地を結ぶ歩行者動線が回復すれば、賃料が再び上昇に転じる可能性があります。

物件不足で出店戦略は「借りる」から「買う」へ



全国のプライムエリアにおける2026年Q2の出店・契約面積は2,731坪で、前期比38.1%減少しました。業態別ではアウトドア・スポーツが最大で、香水や化粧品などのヘルス&ビューティーが続きました。

契約面積は減少したものの、出店需要そのものが弱まったとは限りません。ハイストリートの募集区画が限られるなか、小売企業が投資家やデベロッパーと競って物件を取得したり、既存店の隣接地と一体開発したりする事例が増えています。

空室率が0.0%となった心斎橋や、リテーラーによる物件取得が空室率を押し下げた京都でも、出店戦略は「借りる」だけでなく、「買う・開発する」方向へ広がる可能性があります。

主要商業地の店舗は、商品を販売する場所であると同時に、ブランドを発信する拠点です。条件に合う区画が市場に出なければ、資金力のある企業ほど不動産を保有し、立地を長期的に確保する動きを強めると考えられます。

関西の一等地は「出店競争」から「立地獲得競争」へ



関西のリテール市場は一枚岩ではありません。

心斎橋では物件不足と出店競争が賃料を押し上げ、梅田では大型商業施設の更新が市場を支えています。京都ではインバウンド需要を背景に物件取得と建て替えが進み、神戸では再開発工事が短期的に歩行者量を押し下げています。

今後の焦点は、賃料がどこまで上昇するかだけではありません。限られた一等地を、どの企業が、どのような方法で確保するのか。関西の主要商業地は、店舗の出店競争から、立地そのものの獲得競争へ移りつつあります。




出典:CBRE「ジャパンリテールマーケットビュー 2026年第2四半期」

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