
神戸港ウォーターフロントで、また一つ大きな水辺再編が動き出します。
神戸市は、新港突堤西地区で進めるマリーナ整備事業に関連し、事業者から申請のあった新港第一突堤緑地の港湾環境整備計画について、審査のうえ認定しました。活用される制度は、港湾緑地を民間活力で再整備・運営する「みなと緑地PPP」です。国土交通省によると、今回の認定は、みなと緑地PPPの全国10カ所目。神戸港では、新港第2突堤緑地、現在のTOTTEI PARKに続く2件目の取り組みとなります。
今回の特徴は、港湾緑地だけを整える計画ではないことです。新港第1突堤と第2突堤の間に整備される大型艇対応のマリーナと、その周辺緑地を一体的に活用します。水面、桟橋、緑地、レストラン、カフェ、イベントを重ねながら、神戸港の水辺を「通過する場所」から「滞在する場所」へ変えていく計画です。
みなと緑地PPPとは何か

みなと緑地PPPは、正式には「港湾環境整備計画制度」と呼ばれる官民連携の仕組みです。
港湾緑地に民間事業者がカフェやレストランなどの収益施設を整備し、その収益の一部を緑地のリニューアルや維持管理に還元します。国土交通省はこの制度について、港湾緑地等の行政財産を民間事業者に長期貸し付けできるようにする制度と説明しており、貸付期間はおおむね30年以内とされています。
都市公園で広がってきたPark-PFIの港湾緑地版に近い仕組みですが、舞台は港です。港湾緑地は公共空間である一方、日常的な維持管理や更新には費用がかかります。そこに飲食やイベントなどの収益機能を重ね、民間の運営力を使いながら、水辺の質を保っていく考え方です。
新港第一突堤緑地の認定区域は、神戸港新港突堤西地区の約7,400㎡。認定事業者はSUPER YACHT BASE KOBE株式会社で、認定期間は2027年10月1日から2057年9月30日までです。事業者は港湾緑地を30年間借り受け、マリーナを臨むレストラン・カフェなどを整備し、イベント開催や緑地の維持管理を担います。
スーパーヨットとは何か

今回のもう一つの主役が、スーパーヨットです。
スーパーヨットは、一般に全長24m以上の大型ヨットを指すことが多い言葉です。世界共通の厳密な定義が一つに定まっているわけではありませんが、国際的なヨット業界では24m前後が大型ヨットの一つの目安になっています。
通常のプレジャーボートと違い、スーパーヨットには客室、サロン、デッキ、乗員用スペースなどが備わり、長期滞在やチャーター利用を想定した船もあります。受け入れる側にも、十分な水深、係留施設、電源、給水、セキュリティ、メンテナンス、乗員やゲスト向けのサービスが求められます。
そのため、スーパーヨットマリーナは単なる「船を停める場所」ではありません。高付加価値旅行、クルージング産業、都市観光と結びつく受け入れ拠点です。神戸港で計画されるSUPER YACHT BASE KOBEは、この大型艇を受け入れる都市型マリーナとして位置付けられています。
今回の面白さは「緑地」と「水面」を分けないこと

今回の計画を特徴づけているのは、みなと緑地PPPとスーパーヨットマリーナがセットになっている点です。
みなと緑地PPPだけであれば、港湾緑地にカフェやレストランを置き、収益を維持管理に回すという緑地再整備の話になります。一方、マリーナだけであれば、大型艇の係留施設を整備する港湾機能の話になります。
新港第1突堤緑地の計画では、この二つが重なります。
陸側では、レストラン、カフェ、イベント、緑地管理が民間運営に組み込まれます。水側では、新港第1突堤と第2突堤の間に大型艇対応のマリーナが整備されます。緑地からはマリーナを眺められ、飲食施設からは水辺の風景を楽しめる。停泊するスーパーヨットそのものも、神戸港の景観をつくる要素になります。
神戸市は、この地区について「水域と水域周囲の緑地を一体的に活用」し、大型艇に特化したマリーナ整備を進めるとしています。さらに、神戸を起点とする瀬戸内クルージングネットワーク・プロジェクトでは、スーパーヨットを中心とする国際的なマリーナ空間を創出し、高付加価値旅行者の誘致や新たな観光ルートの開発を目指すとしています。
設計者側も「水域と一体的な緑地空間」と発信

出展:畑友洋 建築設計事務所
設計者側からも、この計画の特徴が発信されています。畑友洋氏はXで、神戸新港突堤で設計を進めてきた「水域と一体的な緑地空間の整備計画」が、みなと緑地PPPの認定を受けたと投稿しました。畑友洋建築設計事務所にとっては、新港第2突堤緑地「TOTTEI 緑の丘」に続く2件目の取り組みとなります。この発信は、今回の計画を理解するうえで分かりやすい補助線になります。陸側の緑地だけを整えるのではなく、マリーナとなる水域、そこに停泊する大型艇、周辺の緑地、飲食・イベント機能をまとめて一つの水辺空間として設計している。神戸港で進む再編は、施設単体の整備ではなく、水辺全体の体験価値を組み立てる段階に入っています。
「海の劇場型マリーナ」という打ち出し

SUPER YACHT BASE KOBEは、公式サイトでこのマリーナを「海の劇場型マリーナ」と表現しています。
公式サイトでは、2027年春に「世界からスーパーヨットが集まる日本最大級の大型艇専用マリーナ」が神戸に誕生すると案内しています。マリーナに停泊するスーパーヨット、海、六甲山、都心の景観が一体となり、訪れる人が日常的にくつろぎながら賑わいを感じられるエリアを目指す構想です。
この表現は、今回の計画をよく表しています。マリーナを閉じた船舶オーナー向け施設としてだけ扱うのではなく、周辺の緑地や飲食機能とつなぎ、来訪者も水辺の雰囲気を楽しめる空間にする。大型艇は、港の奥に隠すものではなく、神戸らしい水辺景観の一部として見せていく存在になります。
公式サイトでは、一般利用者も楽しめる飲食レストラン、GLION ARENA KOBEでのイベント時期に合わせたヨットイベント、神戸空港国際線の受け入れ開始を見据えたラグジュアリーボート誘致なども掲げられています。
神戸空港、瀬戸内クルーズ、ウォーターフロントがつながる

この計画は、新港エリアだけで完結するものではありません。
神戸市は、スーパーヨットを中心とする国際的なマリーナ空間を核に、国内外から高付加価値旅行者を誘致し、神戸を起点とする新たな観光ルートを開発するとしています。2026年度には、新港第1突堤緑地整備、休憩施設の整備、マリーナやウォーターフロントエリアの認知向上イベントなども予定されています。
神戸空港からウォーターフロントへ移動し、神戸港から瀬戸内へ向かう。あるいは、瀬戸内を巡った大型艇が神戸に寄港し、都心のホテル、飲食、商業、アリーナイベントとつながる。こうした導線が育てば、神戸港は単なる寄港地ではなく、瀬戸内観光の起点としての性格を強めていきます。
スーパーヨットは、大量集客型の施設ではありません。受け入れる船の数は限られていても、滞在単価、周辺消費、都市ブランドへの波及が期待される領域です。だからこそ、マリーナ単体ではなく、緑地、飲食、イベント、空港、クルーズを組み合わせる今回の設計に意味があります。
TOTTEI PARKに続く、神戸港の水辺経営

神戸港では、新港第2突堤緑地がみなと緑地PPPの全国初案件として認定され、TOTTEI PARKとして開業しています。今回の新港第1突堤緑地は、それに続く神戸港2件目の認定です。
この流れを見ると、神戸ウォーターフロントの再編は、個別施設を整備する段階から、エリア全体をどう運営するかという段階へ移りつつあります。アリーナ、緑地、マリーナ、飲食、イベント、水上交通、クルーズ。それぞれを別々の施設として見るのではなく、水辺全体で人を呼び、滞在を生み出す方向へ進んでいます。
新港第1突堤緑地の認定は、制度上は港湾環境整備計画の一件です。ただ、みなと緑地PPPとスーパーヨットマリーナを組み合わせることで、神戸港は「公共空間としての緑地」と「高付加価値な水辺利用」を一体で動かす段階に入りました。港の緑地を整え、水面を生かし、都市の滞在価値につなげる。今回の計画は、神戸ウォーターフロントの次の展開を示す動きとして注目されます。
計画概要

名称:新港突堤西地区マリーナ整備事業
対象区域:神戸港新港突堤西地区 新港第一突堤緑地
面積:約7,400㎡
認定事業者:SUPER YACHT BASE KOBE株式会社
制度:港湾環境整備計画制度、通称「みなと緑地PPP」
認定期間:2027年10月1日〜2057年9月30日
主な内容:港湾緑地の30年間借受け、レストラン・カフェ等の整備、イベント開催、緑地の維持管理
関連計画:新港第1突堤・第2突堤間の大型艇特化型マリーナ整備、瀬戸内クルージングネットワーク構築
出典
国土交通省神戸市
SUPER YACHT BASE KOBE
畑友洋氏 X投稿
畑友洋建築設計事務所
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