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大阪・関西万博『メタンガス問題』徹底検証:夢洲は本当に危険?子どもたちの安全と学びを守るために大人が果たすべき責任

 

夢洲で浮上した“メタンガス問題”──爆発事故から安全対策強化へ



2025年大阪・関西万博の開催地である人工島・夢洲(大阪市此花区)では、埋立地特有のガス発生が問題となっています。夢洲は1980年代から建設残土や下水汚泥、廃棄物などを埋め立てて造成された島で、地下には多くの有機物が埋まっており、それらが嫌気性分解する過程でメタンガスが発生します。

2024年3月には、万博会場西側工区のトイレ棟建設現場において、地下ピットに滞留したメタンガスに火花が引火し、コンクリート床が破壊される爆発事故が発生。幸い大事には至りませんでしたが、この事故を契機に日本国際博覧会協会(以下、万博協会)は安全対策の見直しに踏み切り、約32~36億円を投じてガス検知器の増設や通気設備の強化、マンホールの通気蓋化など、多重の安全対策を講じています。また、2025年4月6日には同会場内のマンホール付近で再び基準値を超えるメタンガス濃度が検出されましたが、すぐに換気・封鎖措置が取られ、協会も現地公開・対策強化を実施しています。

メタンガスは“夢洲だけ”の問題か?──都市の地下に潜む見えないリスク



メタンガスの発生は、決して夢洲に特有の現象ではありません。実は全国各地の都市部でも地下から自然発生する事例が確認されています。たとえば、東京・渋谷区で2007年に発生した温泉施設「シエスパ」の爆発事故では、地下1500mから汲み上げた温泉に含まれていた天然ガス(主成分はメタン)が換気不足により施設内に滞留し、機械の火花により引火・爆発。3名が死亡し、5名が重傷を負う大惨事となりました。


出典元:https://www.gsj.jp/hazards/geologic-hazard/gas.html

さらに、東京・千葉・埼玉の地下に広がる「南関東ガス田」と呼ばれる天然ガス層では、地下工事や温泉掘削の際にメタンガスが噴出する事例が多数確認されています。地下鉄建設やトンネル工事の現場では、事前の地質調査や常時ガス検知体制の構築が常識とされており、東京メトロ副都心線や都営大江戸線工事などでも同様の管理が行われてきました。

 



大阪においても同様です。大阪メトロの新線建設やなにわ筋線の関連工事などでも、地中からのガス発生が確認されており、換気装置の設置やガス抜き孔の施工、ガス検知器による常時監視が実施されています。つまり、都市部において地下からメタンガスが発生することは「ありふれた現象」であり、適切な管理によってリスクを抑えることが可能です。

万博は中止すべきか?──“ゼロリスク幻想”と科学的リスク評価



では、大阪・関西万博はメタンガスのリスクを理由に中止すべきなのでしょうか。この問いに対する結論は、現時点におけるリスク評価と対策状況に照らして判断されるべきです。

まず、夢洲の地質が埋立地であり、一定量のメタンガスが発生することは、万博計画段階から織り込み済みでした。ガス抜き管の設置、検知器の導入、防ガス設計など、国の最終処分場利用ガイドラインに基づいた対策が段階的に整備され、さらに2024年3月の事故を機に対策が大幅に強化されています。

 



加えて、これまでの検知データでは、ガス濃度が瞬間的に基準値を超える箇所はあるものの、すべて速やかに換気・封鎖などの処置が取られており、屋外という会場環境も手伝って、重大事故に直結するリスクは大きく低減されています。

大規模な国際イベントには、ガス問題以外にも猛暑や地震、テロリズムといった多様なリスクが存在しますが、それを理由に開催を全面的に中止するという判断は通常取られません。重要なのは、そうしたリスクを把握し、備え、制御可能な水準にまで低減する努力を惜しまないことです。



現時点で講じられている安全対策、監視体制、避難誘導計画のレベルを考慮すれば、メタンガスの存在だけをもって万博全体を中止すべきだと断定するのは、合理性を欠く判断といえるでしょう。むしろ今後も必要なのは、協会が安全対策を緩めることなく、会期終了まで一貫して高水準の警戒と透明な情報公開を継続することです。

学校現場の“遠足中止ドミノ”──慎重な判断か、過剰反応か


https://stock.adobe.com/

万博会場における安全不安は教育現場にも影響を及ぼしました。とくに大阪府下では、修学旅行や遠足での万博訪問を予定していた小中学校の一部が参加を見送っています。堺市では市立学校の約8割が参加辞退、吹田市では市長判断で全校不参加を決定。さらに千葉県や岡山県でも行き先変更の事例が相次ぎました。

辞退の理由として挙げられたのは、メタンガスの安全性に対する不安に加え、猛暑・熱中症対策、公共交通の混雑、貸切バス確保の困難、保護者世論など、複合的な要因です。特に安全情報の説明が不十分で、判断材料が乏しかったことが慎重姿勢を後押ししたケースが目立ちました。



一方、大阪市や東大阪市では、協会の安全対策説明や事前視察を経て「安全は確保されている」と判断し、約9割の学校が万博参加を予定しています。この対応の違いには、地域ごとのリスク許容度や行政方針、情報共有の密度が関係していると考えられます。

また、修学旅行・遠足の中止や変更には、地域の教育委員会や市長の判断だけでなく、政治団体や市民団体からの働きかけも影響していた可能性があります。実際、共産党系の議員が教育委員会に対し公式に「万博を行き先としないよう」申し入れたケースも確認されており、一部の自治体では市民グループが「夢洲は危険」とする資料を学校側に配布するなどの動きもありました。こうした外部の働きかけが判断材料に加わっていたことも、判断の背景として無視できません。

子どもたちの“命と学び”を守るために──大人の責任と冷静な判断



今回の万博は、世界各国の文化や技術に直接触れられる貴重な学びの場であり、子どもたちにとっては一生に一度の体験機会かもしれません。リスクに配慮しながらも、この教育的価値をいかに守るかは、社会全体が考えるべき課題です。

「ゼロリスク」は現実的ではなく、重要なのは「リスクを可視化し、制御可能な水準に維持すること」です。メタンガスに限らず、熱中症、地震、テロなど大規模イベントには常にリスクが伴いますが、それにどう備え、どう説明するかが問われています。



同時に、そうした体験の場を子どもたちに提供できるかどうかは、大人たちの責任でもあります。安全を理由に体験の機会を奪うことが本当に正しい選択なのか、また逆に楽観視して子どもたちを危険に晒してしまうことにならないか――私たち大人には、科学的根拠と誠実な対話に基づき、適切な判断を下す責任があります。

メディアと政治の交錯──“安全”が政争の具になるとき



夢洲におけるメタンガス問題は、安全管理の観点に加え、政治的な文脈でも注目されています。一部メディアや政党系報道では、「維新の万博誘致は無謀」「万博よりも子どもの命を守れ」など、政治的立場からの批判が強調される傾向が見られます。

代表的なのが、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」や、ネットメディア「LITERA」などで、夢洲での万博開催を「地雷原でのイベント」と断じ、万博協会や大阪府の対応を厳しく非難しています。これに対し、主要新聞社やNHKなどは、爆発事故の詳細、協会の対策強化、ガス濃度の測定結果といった事実を淡々と報じる中立的な姿勢を保っています。この温度差は報道の自由の範囲に属するものですが、読者や市民にとっては、リスク評価に必要な情報と主観的な印象論を峻別する姿勢が求められます。

結論:科学と社会のバランスで未来をつくる



夢洲のメタンガス問題は、単なる自然現象であるにもかかわらず、政治的・感情的に取り扱われたことで、子どもたちの教育機会にまで影響を及ぼす事態となりました。これを教訓にすべきは、リスクの存在そのものではなく、「それにどう向き合い、どう伝えるか」という姿勢です。

行政や万博協会は、対策内容や効果を分かりやすく開示し、学校や保護者が冷静に判断できる材料を提供すべきです。そしてメディアは、感情的・党派的に走ることなく、科学的根拠と現場の声に基づいた報道を通じて、健全な議論と判断の材料を提示していくべきでしょう。



子どもたちの命と学び、両者を両立させるために――今回の出来事はその難しさと責任を私たち大人に突きつけています。

そして何より、万博協会には注意を怠ることなく、会期終了まで緊張感を持って安全対策を継続していただきたいところです。子どもたちをはじめ、すべての来場者が安心して楽しめるよう、引き続き最大限の努力が求められます。

【出典元】
・朝日新聞:ガス爆発の安全対策は大丈夫?専門家に聞く 大阪・関西万博
万博のメタンガス 1月と2月に基準値超えも 対策で現在は下回る
関西万博、学校の不参加相次ぐ 大阪は半年で10万人減 不安広がる
・万博協会:会場内でのガス調査結果について/万博会場内(建物内)におけるメタンガスの検知状況
・地質調査総合センター:東京にどうして温泉があるの ? 〜関東平野南部の深層熱水資源〜
・失敗知識データベース:渋谷シエスパ爆発
・大阪市:大阪・関西万博用地でのメタンガス発生について
・プレジデント:こんなスリリングな万博会場は後にも先にもない…「大阪市民のうんち」を埋める夢洲が「地雷原」と呼ばれるワケ
・JBPress:万博は太閤秀吉に学ぶべきだった 難工事でパビリオン揃わず、メタンガスまで発生した夢洲の悪条件
・リテラ:大阪万博 メタンガス検知を通報した共産党市議への呆れた対応 吉村知事の説明も嘘だらけ
・しんぶん赤旗:“カジノに税金” 維新ねじ込み 人命軽視・事業費増…万博なぜ夢洲に?
・日刊スポーツ:辛坊治郎氏、大阪万博には「メタンガスで爆死するリスクを犯しても行くべき」理由にX民も納得
あべ俊子文部科学大臣記者会見録(令和7年4月15日)
・日刊ゲンダイ:大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる
・毎日新聞:修学旅行は大阪・関西万博→奈良へ メタンガス懸念 千葉の中学
・産経新聞:万博会場のメタンガス懸念し修学旅行先を変更 千葉の中学、奈良に
・RSK山陽放送:大阪・関西万博を「修学旅行先に設定しないで」の申し入れに賛否の声【岡山】
・x.com(旧Twitter

3 COMMENTS

よっさんdsnmb

引率者の数は社会見学や修学旅行では問題無い筈ですがね。

よっさんdsnmb

ロングさんが政党名を書かれていますから、私も書きますが日本共産党はかなり科学的に「?」な事が多いです。

咲洲南港のWTCビルの購入に日本共産党が反対した理由の一つが「超高層ビルは鼻毛が長くなる」でした。
曰く、超高層ビルは室内の空気がよろしくない、だから鼻毛が伸びるんだ、と。

ならば日本中から超高層ビルを撤去すべし、とならなければおかしいのですが、そうは言わないのですよねぇ。

また万博のテストランに元消防士の日本共産党の議員が来てマンホールにガス検知器を突っ込んで高いガス濃度を検知し「消防士時代も、こんな高いガス濃度は見たことが無い」と息巻いてましたが、これもおかしい。

ならば、と私は訪ねたい。
「貴方は消防士時代から今の議員時代まで毎日、何箇所かの地下のガス濃度を欠かさず調べているのですか」と。
その上で万博開始のガス濃度のきわめて高いのであれば「こんな高いガス濃度は見たことが無い」という言葉に初めて意味が伴います。

殆ど調べた事が無いのにただ万博会場のガス濃度がたまたま高かっただけなら「こんな高いガス濃度は見たことが無い」という言葉は何らの価値も無い、単なる扇情的で低レベルな煽りでしかありません。

だって他の場所ではもっとガス濃度が高い所が無いとは断言出来ないのですから。

更に不思議に感じるのは、異常なまでにガスに関して絶対の安全を求めながら、他に関してはそこまでの安全を求めていないように見える点。

地中のガスが原因で事故に遭う確率と、道路上で事故に遭う確率では、明らかに後者の方が高いでしょうに、日本共産党は子供達が道路を利用するのは否定しないんですよね。

道路は使わなければ生活出来ないと言うのと同時に地中のガスに対して絶対の安全を求めるのであれば「道路に関しても絶対の安全を求めない」のは明らかに矛盾です。
だって子供達が普段歩くその道路の下に濃度の高いガスがあるかもしれないのですから。

建設中のメタンガスの爆発を受けて万博協会が出展する諸外国に新たな安全対策を説明したところポーランドの方が「安全対策はよく分かりました。事故が起きた時の対策をしっかりして頂きたい」と述べていました。

それが良識と常識がある大人の言葉だと思います。
日本共産党をはじめ一部の日本の方々には良識と常識が欠落しているように見えてしまうのが「残念な日本国」と言わざるを得ない日本国の余りに寂しい現実です。

ハコモノ行政

学校参加については、引率者と児童の比率はどうなっているのでしょう?
一般家庭だと、大人ひとりにつき子供3人くらいがせいぜいでしょう。
それと同等の引率者を用意したとしても、不測の事態の際に
不慣れな雑踏での全責任を負わされるリスクを考えると、
学校側が参加したがらないのも理解出来ます。
何かあっても適当に誤魔化せた、保護者側も強く責めなかった20年前・
40年前とは何もかもが違うのです。

実際には引率者はもっと少ないでしょうし、スマホの位置情報等で
一括遠隔監視するような技術が主催者側から提供されているとも思えません。
保険でヘッジとかもしてるんでしょうか?
こーいうことばかりするから、優秀な教師のなり手が減るのです。

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