阪急電鉄・阪急阪神不動産は、2025年11月20日、旧大阪新阪急ホテルの建物について、2025年12月中旬から解体工事を開始すると発表しました。同ホテルは2025年1月4日の宿泊利用をもって営業を終了し、大阪・関西万博の会期中は外国人スタッフの宿舎として活用されていました。
解体工事は2028年秋まで続く予定で、終了後は隣接する阪急梅田駅の駅ビル「阪急ターミナルビル」と合わせて、30年代以降の一体開発へ進む計画です。
1. 旧大阪新阪急ホテルの概要
出展:阪急電鉄・阪急阪神不動産
旧大阪新阪急ホテルは1964年8月8日に開業し、約60年間にわたり梅田エリアの主要ホテルとして運営されました。大阪万博(1970年)以降の観光需要やビジネス需要を幅広く受け入れ、阪急梅田駅直結という利便性の高さで、多くの利用者に親しまれてきました。
【建物概要】
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所在地:大阪市北区芝田一丁目1番35号
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延床面積:約44,000㎡
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階数:地上11階・塔屋3階、地下3階
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客室数:961室
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宴会場:12室
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料飲施設:7店
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竣工年:1964年(築61年)
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所有者:阪急電鉄株式会社
老朽化に加え、新型コロナウイルス禍の影響による宿泊需要減少が重なったことから、2025年1月4日チェックイン分をもって営業を終了しました。これにより、約60年の歴史に一区切りがつきました。
閉館後も建物はすぐに解体されず、2025年大阪・関西万博(4月〜10月)に従事する海外パビリオンのスタッフや外国人関係者の宿舎として、一棟まるごと借り上げられて再利用されました。
1964年に開業した新阪急ホテルは、1970年の大阪万博では観光客や関係者を受け入れる宿泊拠点として機能しました。
さらに、閉館後は2025年大阪・関西万博において海外スタッフの宿舎として活用され、大阪で開催された2度の万博で役割を果たしたホテルとなりました。
2. 解体工事のスケジュールと方針
発表によると、解体工事は以下の日程で進められます。
【解体工程】
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着工:2025年12月中旬
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完了:2028年秋(予定)
阪急電鉄と阪急阪神不動産は、「お客様の安全確保と周辺環境への配慮を最優先に進める」と説明しており、梅田駅前という利用者の多いエリアでの工事となるため、歩行者動線や周辺交通への対応が重要になります。
3. 解体・再開発が進む背景
今回の解体と再開発は、以下のような要因が重なって進んでいます。
老朽化(築61年)
建物の経年劣化が進んでおり、改修より建替えが適切なタイミングを迎えていました。
大阪・梅田エリアの再整備ニーズ
大阪・関西万博を契機に、梅田エリア全体の更新が進み、国際都市としての機能強化が求められています。
阪急梅田駅周辺の再編
阪急ターミナルビルや阪急三番街など、1960〜70年代の構造を基盤とした施設の更新時期に合わせ、区域一体での再開発が必要とされていました。
4. 跡地開発:阪急ターミナルビルと一体再開発へ
阪急阪神ホールディングスは、旧大阪新阪急ホテル跡地と隣接する阪急ターミナルビルを統合した再開発構想を掲げています。具体的には、30年代以降に高層ビルを新設する計画を検討しており、阪急梅田エリア全体の機能更新が見込まれます。
さらに、駅下の商業施設である阪急三番街の全面改装も構想に含まれており、梅田駅周辺の再整備の一環として位置付けられています。
現時点では、
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新ビルの用途
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規模、階数、高さ
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竣工時期
などの詳細は公表されていませんが、阪急阪神の金城湯池の本丸といえる場所なので、超高層ビル建設による高度利用は間違いなさそうです。
まとめ.:大阪駅側への重心移動と、阪急側の巻き返し

近年は、大阪駅地下ホームや西口の開設、グラングリーン大阪、イノゲート大阪、JPタワー大阪など、大阪駅西側エリアの開発が進み、梅田の重心が阪急梅田駅側からJR側へ移動しつつありました。
では、2030年代の梅田の重心はどこに形成されるのでしょうか?
阪急グループの本丸である梅田駅に接する「新阪急ホテル跡」の再開発は、阪急が梅田の中心性を取り戻すための最重要プロジェクトです。これにより、「梅田の主」を自認する阪急が、再び自社側に梅田の重心を引き戻そうとする局面に入り、エリア全体のパワーバランスが動き始めると言えます。
【出典元】
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阪急電鉄・阪急阪神不動産「旧大阪新阪急ホテル建物の解体工事着手のお知らせ
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日本経済新聞「大阪新阪急ホテル、12月に解体開始 大阪梅田駅ビルと一体開発へ」
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関西テレビ「【速報】旧大阪新阪急ホテル 12月中旬から解体工事」





