先日より、大阪・関西万博について、主に海外パビリオンの建設工事が遅れている、という報道が相次いで報じられました。
様々な情報が飛び交っていますが、2025大阪・関西万博の海外パビリオンの建設工事の遅れについて、X(旧Twitter)で意見をいただき、自分の考えを加え要因を考えてみました。
『海外』パビリオンの工事が遅れているのは本当か?
2020年に万博協会が発表したマスタープランによると、パビリオンタイプA(敷地渡し方式)は 2023年4月に敷地を引き渡す予定で、整備期間は2023年4月〜2024年12月末を見込んでいます。
2023年9月時点で契約がポツポツと進んでいるので、マスタープランに比べると約6ヶ月遅れとなっている状況です。
◆パビリオン整備はマスタープランに対して約6ヶ月ほど遅れている
X(旧Twitter)では下記のようなコメントがありました
・遅れてれているとみるべきである。
・ドバイ万博初の海外館であるルクセンブルクの起工式は(コロナ前の)開催予定日の2年半ほど前。
・万博協会側のスケジュール設定が適切かどうか疑問。
②海外パビリオンの建設を調整する主体はどこ?
次は、どこが海外パビリオンの整備をハンドリングしているのかを確認して行きます。
最初に前提条件を書きますが、『万博』とは、博覧会国際事務局(BIE)の承認のもと、国際博覧会条約に基づき開催される国際博覧会を指します。オリンピック・パラリンピックとは異なり、主催者は都市ではなく政府です。
大阪・関西万博の主催者は2025年日本国際博覧会協会(万博協会)で、日本国政府が協会の開催国としての義務履行を保証しています。
大阪関西万博の推進体制
万博協会が公開している「推進体制」を見ると、当たり前ですが万博協会が核となっており、日本国政府が協会を「指定・監督」し、公式参加者を「支援」、さらにBIEに対して進捗報告を行います。大阪府市や財界はそれぞれ、万博協会に「協力・連携」を行います。
次に万博協会の組織図を見て行きます。万博協会のトップは、経団連会長の十倉氏、事務総長は元:日本貿易振興機構理事長の石毛氏です。その下に関西財界の主要メンバーが並び、その中に大阪府知事、大阪市長が加わる、といった組織となっています。組織図上は、大阪府・市が中心となって「ガンガン行く」といった形にはなっていません。
政府は、万博の円滑な準備と運営を確実にするために特別立法を行い、円滑な準備及び運営に関する施策を総合的かつ集中的に推進するため、国際博覧会推進本部を設置しました。
2020年9月から万博担当大臣を設けました、3年間で4回も担当が変わっており、担当大臣から具体的な情報発信や進捗報告が聞こえてこない事から、大臣は、実態的には、あまり機能していないと思われます。
◆万博の推進主体は「万博協会」。政府が協会を「指定・監督」し、BIEに「進捗報告」を行う体制。大阪府市は万博協会に(インフラ整備等を中心に)協力する立ち位置。これまでの3人の万博担当大臣が何を成したのかは不明
X(旧Twitter)では下記のようなコメントがありました
Q:海外パビリオンの建設を調整する主体はどこ?
・万博協会=国+府市+財界
・経済産業省
・建設契約を結ぶ相手が万博協会、建設ガイドラインも協会が定めている
・会場整備に関しては国交省?
・国交省が大臣が足引っ張っているって、経産省が言っている
・主宰者たる国が先頭に立つべき。万博担当大臣、協会の指揮系統・責任の所在が一見して不明瞭
・万博協会だと思う、そういえば万博担当大臣は何をしている?
・万博担当大臣が全然出てこないけど仕事してる?
・サボタージュを疑ってる。協会内の国の役人は府知事の指示下に無いから
・万博担当大臣や、万博協会会長兼経団連会長の十倉氏はそれ以上の権限を持ったポストのはず。メディアからはあまり彼らの発言は見られません
万博協会の組織図と事務分掌
さらに万博協会の組織図と職務分掌を見ると、会場整備に関わる担当部署は下記の様に読み取れました。しかし、海外パビリオンの建設遅れの全てが、これらの部署の責任ではなく、さらに別の要因がありそうです。
経営企画室>基本計画の進捗管理、関係省庁、関係団体との調整
総務局>調達部:工事及び物件の入札契約
企画局>企画部:国内出典(政府・民間)に関する事参加招聘計画の検討
各局・部における事務分掌一覧
万博協会の構成メンバーはを見ると、政府官僚の一部や経済界、学術団体の理事などが参加していますが施設建設、土木などの専門家は不在で、パビリオンなどの企画推進の実務は協会からの委託先が担う事になります。
国内には、オリンピックや万博のような国際的イベントを仕切れる企業は電通や博報堂ぐらいしかありません。しかし、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件を受けて、大規模なイベントの運営ノウハウが豊富な電通、博報堂などが大阪府・市や、万博協会の事業入札から1年間、除外される事になりました。
本来なら電通が各国や業者との調整していたはずですが、彼らが不在となってしまい、実務を行う実働部隊が居なくなってしまいました。
電通が落札した事業の公募要領には万博のプロモーション、企業・団体の万博参加の促進、パビリオンの設計、開閉会式や期間中のコンサートの編成などがあり、万博開催後の盛り上がりにも不安が残ります。
◆「東京五輪汚職事件」の影響で、大阪関西万博の実務を担うはずの電通・博報堂が不在となった。各国や建設会社との調整役がおらず万博協会が機能不全に陥っている
X(旧Twitter)では下記のようなコメントがありました
・東京オリンピック汚職の影響で電通と博報堂が動けない
・海外取引、やり取りができる人材が中堅ゼネコンにはいない
・建設業者たちが打合せできるようパビリオン側に掛け合ったが全く動かず
・中堅業者は何もできなくて利益もないから誰もやりたがらない
要因2:建設資材の高騰と費用見通しのあまさ
出典:一般財団法人 「経済調査会」 建設資材価格指数
大阪関西万博に影響を与えている要素の2つ目が建設資材の高騰です。
コロナ禍から立ち直り世界経済が回復し、建設需要が高まっている事に加え、ウクライナ危機や円安などの影響を受け、コストを資材価格に転嫁する動きが続いています。一般財団法人「経済調査会」が公表する建設資材価格指数を見ると、2015年度平均を「100」とすると、2023年8月の全国平均は「151.5」、大阪は実に「173.2」となっています。
昨年から始まった会場整備の入札で不成立のケースが相次ぎましたが、業者側から見ると、入札に参加し、工事を請け負うことになっても、資材価格がさらに上がれば、採算割れの危険性があるに加え、短納期で急かされる事が目に見えている為、「万博関連は割に合わない」という認識が広がり、腰が引けている状況です。
◆建設資材の高騰と予算の不足。建設資材価格指数は2015年に対して「1.732」まで高騰しているが、予算の総枠が決まっており、現状、採算割れの危険性ある事に加え短納期で厳しい仕事になる為、建設会社の腰が引けている
X(旧Twitter)では下記のようなコメントがありました
・物価高騰
・杭
・採算性が楽観的過ぎて費用見積もりが甘過ぎたから
・材料費や人件費の高騰など費用は絶対高くなる
・敷地を軟弱地盤の夢洲に無理やり選んだから
・国が追加予算の素振りを見せない
・原材料高人手不足で儲からないというゼネコンのサボタージュ
3:その他要因と万博に対する意見
出典:https://www.wonderfulpackage.com/article/v/1783/
その他の要因としては、コロナ禍により「ドバイ万博が一年後ろに倒れた事による影響」や「中国と日本の対立も敬遠されている一因、パビリオンのタイプAについては、今回は実力ない国が背伸びしている可能性」などを指摘する声がありました。
また「万博という行事そのものの魅力が薄れている」「SNSが情報を広げた一方で関心の個人化が進み、出かけてまで未知のものに触れようとする必要性、動機が低下している」といった根本的な意見が寄せられました。
◆コロナ禍の影響で各国ともスケジュールがタイトになった。根本的な理由だが万博そのものの開催意義、価値が低下しいるのではないか?
X(旧Twitter)では下記のようなコメントがありました
・コロナで何もできない期間が年単位であった
・誘致決定前にはなかったコロナに各国とも対応
・ドバイ万博との間隔短かすぎ
・70年万博でもタイプAは70国くらいなのに今回は実力ない国が背伸びしている可能性大
・海外勢から見てももう「万博」は魅力がない(特にグローバルサウス諸国かからは)
・今後の国内消費の喚起効果の期待も限定的
4:これまでに大阪府市が出来ることはあったのか?
万博の推進体制から見て、パビリオンの建設などのハンドリングについては、大阪府市が関与する余地は無いように見えますが「大阪府市には協会にも参画する地元として、応分以上の責任がある」「理由は不明だが(遅れの危機感を伝える)アラートが半年遅い」といった厳しい意見が寄せられました。
また「府市の役割は会場までの交通インフラ整備が第一」「政府・外務省の頭を飛び越えて自治体が呼び掛ける事は船頭を増やすだけであり、却って混乱を招きかねない」といった意見がありました。
◆万博の推進体制から見るとパビリオンの建設工事について、大阪府市がハンドリングする余地はほぼ無い様に見える。しかし工事の遅れを伝える「アラート発信」はもっと出来たのではないか?国からやる気が感じられず、他人事感が強かった。
X(旧Twitter)では下記のようなコメントがありました
・万博はオリンピックの轍を踏まないように配慮している節が強い。その上に国の予算不足が乗っかっているのではないか。
・大阪府知事と大阪市長は万博協会の役員なので政府や経産省よりも責任が重い立場にいる
・政府も経産省も大阪府市も金を出して各種監督しているだけ
・もっと情報発信すべきだった。万博協会側が禁止していなければ
・開催場所が東京やなく、大阪やからそんな真剣に考えてなかった
・東京だと早い。大阪にも力をもっと注いで欲しい
・万博協会ですが役に立たないので大阪府市プラス国関連の人材プラス民間人材の組織でやるのが最善
まとめ
大阪関西万博の海外パビリオンが遅れている理由は複数ありました。
ます、大阪関西万博の運営主体は「万博協会」でパビリオンの建設工事の契約を結ぶ相手も万博協会です。国は協会を「管理・監督」し、BIEに「進捗報告」を行います。大阪府市は、主に万博会場のインフラ整備を行う役割です。
しかし「万博協会」から委託を受けて、海外や建設会社と調整を行うはずだった、実働部隊の電通・博報堂が東京五輪汚職事件の影響で不在となり、協会が機能不全に陥りました。
さらに、コロナ禍でドバイ万博が1年後ろ倒しでスケジュールがタイトになった事に加え、建設資材が高騰している中、万博予算の総額は決まっており、現状、工事が採算割れになる危険性があり建設会社に敬遠されています。
そして、協会を管理・監督する立場にある政府の、万博担当大臣、協会の指揮系統・責任の所在が一見して不明瞭なままです。
現状、マスコミから大阪府市が叩かれている状況ですが、協会が公開している万博の推進体制から見ると、パビリオンの建設工事について、大阪府市がハンドリングする余地はほぼ無い様に見えました。しかし工事の遅れを伝える「アラート発信」はもっと出来たのではないか?という思いはあります。
失われた30年を繰り返さない為に
最近の国の動きを見ると、マスコミに騒がれだして、ようやく上記の問題点を把握して、トップダウンで動き出した印象ですが、スイッチが入るのが半年遅かったです。
建設資材の高騰とタイトなスケジュールから見て、万博会場の建設費を大幅に増やすしかなく、急ピッチで工事を行うために残業上限の「例外」を協会が要請し、政府が日本貿易保険(NEXI)を通じて万博に出展する国・地域のパビリオン建設を促す保険を新設するなど、矢継ぎ早に対策を打ち出しています。
大阪府市に対するマスコミの批判は、本来は(役割分担から見て)万博協会と政府に向けられるもので的外れですが、このあたりは意図的な政治的プロパガンダなのでしょう。
大阪・関西万博のドタバタを見ると、コロナ禍や、資材高騰といったイレギュラーな要素もありますが、今の日本の悪いところが全て凝縮されており、「失われた30年」を繰り返しているな、という思いが込み上げてきました。
とにかく、強力に万博プロジェクトを推進する体制、現状にマッチした予算確保、電通・博報堂の復帰を見据えた開催後のイベントの作り込み、そして大阪府市への権限委譲を行い、2025大阪万博成功に向けて巻き返しを図って欲しいと思いました。
大阪関西万博のパビリオン整備が遅れている理由
◆パビリオン整備はマスタープランに対して約6ヶ月ほど遅れている
◆万博の推進主体は「万博協会」。政府が協会を「指定・監督」し、BIEに「進捗報告」を行う体制。大阪府市は万博協会に(インフラ整備等を中心に)協力する立ち位置。これまでの3人の万博担当大臣が何を成したのかは不明
◆「東京五輪汚職事件」の影響で、大阪関西万博の実務を担うはずの電通・博報堂が不在となった。各国や建設会社との調整役がおらず万博協会が機能不全に陥っている
◆建設資材の高騰と予算の不足。建設資材価格指数は2015年に対して「1.732」まで高騰しているが、予算の総枠が決まっており、現状、採算割れの危険性ある事に加え短納期で厳しい仕事になる為、建設会社の腰が引けている
◆コロナ禍の影響で各国ともスケジュールがタイトになった。根本的な理由だが万博そのものの開催意義、価値が低下しいるのではないか?
◆万博の推進体制から見るとパビリオンの建設工事について、大阪府市がハンドリングする余地はほぼ無い様に見える。しかし工事の遅れを伝える「アラート発信」はもっと出来たのではないか?国からやる気が感じられず、尻に火がつくまで他人事感が強かった。
はじめてコメントさせていただきます。
一人の大阪府民として万博の無事成功を願っていますが、素人感覚ながら動きが遅いなとは感じていました。
電通にはあまり良い印象はありませんが、これくらい大きな仕事をできるのは電通や博報堂くらいしかないのでしょう。ただ、遅れそうだと分かった時点で、コロナパンデミックを理由に東京五輪のように1年程度遅らせてもよかったのかもしれませんね。
しかしながら、立派なパビリオンを建設するようなやり方は古いと思っています。ここからは私の妄想のような案ですが、会場でのイベントも行いつつ、基本は会場をスタジオとするインターネット配信にして、自宅のPCや移動中のモバイル端末等を使って世界中から双方向で参加できる形式も良いかと考えます。また、世界中にサテライト会場を設けて、大阪会場と回線を繋いだうえで、自宅では体験できない大掛かりな機器を使ったイベント等を実施したり、解体予定の客船を世界中から集めて改造し、その船を港に接岸させてパビリオンにするとか、これまでの「万博」の概念を壊すくらいの事はしてほしかったと思っています。
>会期は10月中旬から4月中旬で。
私もこの方がいいと思います。変えるなら今かな。早い決断が必要。
2025年がどうなるかわかりませんが、暑すぎる。異常。
健康がテーマの万博で、暑さで人がバタバタ倒れるも嫌だし。
冬は寒そうかな?吹きっさらしだし。
秋ごろ夕暮れの海をぼーっと眺めていたい。
年末年始のカウントダウンもやったらいいと思う。
今年の夏は暑かったですねぇ。
そして台風が沢山発生して、まだ10月一杯は台風シーズンが続きます。
大阪の夏は暑いですが冬はそれ程寒くはありません。
雪も殆ど降りませんしましてや積雪など滅多に無い。
4月13日から10月13日では半分は梅雨と酷暑です。しかも早ければ5月からずっと台風シーズンですよ。台風では交通機関がストップして折角の万博旅行がパーになるかも?
それで間に合わないパビリオンが沢山あったら最悪ですよね。
だったら2025をそのまま使える半年延期はいかがでしょう?
会期は10月中旬から4月中旬で。(13という数字は使わない方が良かろうと思います)
私は万博は賛成ですよ。五輪よりずっとコスパも良いし負の遺産も残りませんし、何より会期が半年でその間観光の目玉になってくれます。有難いイベント。ただ政府の態度が気に入らないだけです。
万博の失敗は国の恥です。
その次の開催を狙っている韓国が「日本も落ちぶれた」と苦笑い?
会期半年あるんで、究極開幕までに全てのパビリオン竣工してなくてもええと思いますけどね。
2ケ月遅れてもええと思って工事するともっと遅れるので、開幕目指して施工すべきとは思いますが。
メディアは批判しかしませんが、いち市民として万博の成功を期待しています。会場に行くのが楽しみです。
あと1年半ってめっさタイトやと思いますが、なんとか形にしてほしい。
万博(登録博)は5年に1回のペースで開かれてきました。愛知2005年、上海2010年。ミラノ2015年。
ところが2020年の予定だったドバイがコロナで1年遅れ2021年になったことで2025年の大阪までの期間が4年になってしまいました。出展国は一つが終わって次の開催まで5年かけて準備してきたので4年では短かすぎたのででしょう。
ドバイが1年遅れた際に大阪も1年延ばす決定をするか、ればよかったのですが、国も府市も何もせず(1年延期が無理なら、その時点で出展国に準備を急がせるよう伝えるなど)、漫然と時間を浪費したことが今になって出てきたと思います。
▶️万博準備の遅れに関して大阪には特に大きな責任があるわけではない、という記事の趣旨はよくわかりました。
ただ繰り返しますが万博時代にもはや魅力がなくそこに乗っかった大阪は損したなと思ってます。
自分も旅行好きなので思うのですが、イベント目的に国内国外へ行きますか?イベントではなくむしろ普通の観光にこそ需要ありますよね。
日本を訪れる観光客は京都や奈良井宿を目指すのであって万博ではないよねと。日本人も同じく。
なんで今更万国博覧会なんだろう…理由がわかりません。
私自身は東京オリンピックも大阪万博も反対でし,た。成功する見込みが感じられなかったからです。気分的な感覚でしかないのですが、今の日本が国際イベントやったって盛り上がるのは無理ですよね。
イベント自体に需要ないですよ。いくら経済復興に繋がるメリット強調しても誰も求めてない感じです。テーマ自体興味ないんです。
なので国が主体であろうが大阪という地方自治体が主体であろうが、今の日本で大規模イベントをやる気は感じません。維新はやり切る気力を見せてますが国との協力意識が一体化してなくどうにも弱い。やるならやるで100%の気合い見せろよと言いたいです。正直お先真っ暗です。