【和歌山IR】和歌山県議会がIR区域整備計画の認定申請を否決!地方を無視したIR実施法の施設条件が過大な計画を生み出す原因に

報道各社が伝える所によると、和歌山県が和歌山市内の人工島「和歌山マリーナシティ」への誘致を進めていた統合型リゾート(IR)について、同県議会は2022年4月20日の本会議で、区域整備計画案の国への申請を反対多数で否決しました。

県議会は2019年に「IR誘致を積極的に推進する」決議を賛成多数で可決したが、運営事業者に決まったカナダのクレアベスト・グループの資金調達計画開示が遅れ、IR特別委でも不信感が高まっていました。4月19日の特別委員会での採決では「資金調達の計画が不確実だ」などといった指摘が相次ぎ、議案は委員会で否決されました。これを受けて20日に開かれた本会議で、無記名投票で採決が行われた結果、賛成18、反対22で、議案は否決されました。

和歌山市はIR誘致に同意しており、県は本会議で可決されれば28日までに国に計画案を提出する予定でしたが、否決により和歌山IR計画は白紙に戻ることになりました。


 

 

残るは大阪府市・長崎県の2ヶ所


政府は2020年代後半の開業を見込んで国内に最大3か所のIRを整備する方針で、整備計画の申請を今月28日まで受け付けています。

大阪府・市、和歌山県、長崎県が、誘致を目指して、施設を設置・運営する予定事業者を選定し、整備計画づくりを本格化させてきました。横浜市は去年8月の選挙で当選した市長が翌月に誘致の撤回を表明し誘致レースから脱落しました。今回、和歌山県の計画が頓挫した為、誘致を目指す自治体は大阪府・市と、長崎県のみとなりました。

 

 

地方を無視したIR実施法の施設条件


和歌山や長崎が過大に思えるIR計画を策定した理由は、国が定めるIR施設の設置基準が原因です。IR実施法(特定複合観光施設区域整備法)では、ホテルの客室の床面積の合計が10万㎡以上、1000人〜12000人規模の会議室と2万〜12万㎡の展示場を組み合わせた大規模MICE施設、カジノをする「ゲーミング区域」はIR施設全体の床面積の3%を上限とする、条件が定められています。ゲーミングエリアの床面積を確保して売上げを上げる為には施設全体の延べ床面積を盛る必要があります。

 


IR実施法は、和歌山や長崎など地方にとっては採算を取るのが難しい過大な施設を求めています。条件を冷静に見ると、ズバリ東京(首都圏)への誘致を主眼に置いた設定で、地方創成を本気で考えて決めたとは到底思えない条件となっています。

そもそも論ですが、大都市型、地方型、リゾート地型、それぞれの実情に合わせたIR施設の条件設定が必要でした。国が本気で地方にIRを開設して、地方創生を目的としているのであれば、客室面積10万㎡のホテルや、6000人規模の国際会議場、10万㎡の展示場などの組合わせを必須条件には盛り込まないでしょう。

現実的に考えて、この条件設置で採算ベースに乗りそうなのは東京・大阪・名古屋・福岡などの大都市圏に限られます。

僕は、今回は(4月28日締め切り)大阪IRのみが国に認定され、残り2箇所を選定するために追加募集が急遽きまり、それには東京が名乗りを上げて滑り込んでくると予想しています。

 

参考:IR実施法が定める施設概要

IR実施法が定めるIR施設の定義は以下を一体化した施設で、施行令ではIR施設の構成施設ごとに整備規模の要件を規定されています。

1:カジノ
2:国際会議場
3:展示施設
4:日本の観光に関する魅力増進施設
5:送客機能施設
6:宿泊施設(ホテル)-を一体化した施設。


ホテル:全客室の合計床面積をおおむね10万㎡以上

MICE施設:最大規模会議室の収容人数はおおむね1000人以上、展示施設の規模は国際会議場の収容人数に応じ、要件としてA〜Cの何れかを求めています。

A:約1000人以上3000人未満 →展示施設床面積 約12万㎡以上
B:約3000人以上6000人未満 →展示施設床面積 約6万㎡以上
C:約6000人以上       →展示施設床面積 約2万㎡以上

カジノ施設:IR施設1カ所当たりに確保できるカジノ専用スペースの上限面積は総延べ床面積の3%