
前日お伝えしたニューズの続報です。関西、伊丹、神戸の関西3空港の役割を関係自治体や経済界で議論する「関西3空港懇談会」は、2022年9月18日に会合を開き、神戸空港の国際化と関西空港の発着枠拡大について合意しました。
3空港の発着回数の上限を、現在の約40万回から2030年頃を目処に約50万回に拡大し、「空の玄関口」の受け皿を広げ、今後伸びが見込まれるインバウンド・アウトバンド需要を取り込み、地域全体の経済成長に繋げたい、という狙いがあります。
今回の合意により、神戸空港は2030年を目処に1日あたりの発着回数を40回を上限に定期国際線を受け入れることになりました。また関西国際空港においては、2030年代前半までに現在の年間約23万回の発着枠を約30万回に引き上げることで合意しました。
神戸の国際化は関空を保管する位置付け

神戸空港は、関西空港の処理能力が飽和した際の補完空港との位置づけです。同空港は2006年の開港から国内線の運用に限定しており、現在の発着回数は1日最大80回、年間約3万回です。
国際化にあたっては、大阪万博が開かれる2025年に国際チャーター便の運用を開始。2030年を目処に、発着回数1日最大40回を上限として国際定期便を就航させます。他、国内線に関しても1日最大80回から120回まで引き上げられます。
これにより、神戸空港の1日あたりの発着回数は際内合計で160回、年間約3万回から約6万回に倍増する事になります。
神戸空港の年間利用者数は、コロナ前の2019年に336万人を記録しており、発着枠が倍増すると、単純計算で約670万人程度まで増加する事が予想されます。現在のターミナル施設では対応出来無い為、施設増強が課題となります。
関空は現在の成田並み30万回まで拡大

コロナ前はインバウンド需要でパンク寸前だった関西空港
関西空港は2030年代前半に、現在の年間約23万回の発着枠を約30万回に引き上げることで合意しました。関空の1時間あたりの発着回数の上限を、2025年の大阪・関西万博までに、現在の45回から約60回に引き上げ、2030年代前半までに3割増の30万回とし、関空単独で現在の成田並み(30万回)に拡大します。関西エアポートなどの試算では、2025年度の関空の総旅客数は、コロナ禍前の2018年度から3700万人(1.3倍)に増加、2030年度には最大で約5000万人(1.7倍)に膨らむ見込みです。
関空では2025年の大阪関西万博に向けて、主力のT1(第一旅客ターミナルビル)の改修工事が行われており、空港全体での国際線の受け入れ能力を、現在の年間3000万人から4000万人に引き上げる改修工事が進められています。しかし、工事が完成したとしても、30万回/年に到達する頃には、関空のターミナルキャパシティが飽和する事は確実で、改修に続く抜本的な空港施設増強が待ったなしの状況となっています。
空港のサイズが都市圏の成長を決定する

仁川国際空港・第二ターミナルビルの様子
関空の上限引き上げ(7万回/年)と神戸空港の国際化・発着枠の拡大(3万回/年)により、関西3空港の発着回数の上限は、現在の約40万回から2030年代前前半には、10万回増加の約50万回となります。
今日(コロナ禍前)の関西空港の劇的な成長は、大きかった反対の声を押し切って二期工事を推進し2本目の滑走路を整備した事が大きいです。もし関空に第2滑走路が建設されず受け入れ余力が無ければ急激なインバウンド需要を受け止める事はできませんでした。

台湾:桃園国際空港
ポストコロナ時代、世界のグローバル化は益々進み、国際交流が加速する事が予想されます。成長著しいASEAN諸国や各国の旅客需要を受け止められる「受け皿」が絶対に必要で、それの有無が地域経済の発展に直結します。空港のサイズが都市圏の成長を決定付ける時代が来ます。100万回/年に増強される首都圏空港

成田空港の滑走路の延伸およびC滑走路を新設、年間発着容量を50万回に増強
東京は「空港のサイズが都市圏の成長を決める」事を明確に理解しており、国が率先して首都圏空港の容量拡大を進めています。羽田空港に4本目の滑走路を整備した上で都心ルートの運用を開始し、2020年3月から年間約4万回拡大させた他、成田空港のB滑走路延伸・C滑走路新設及び夜間飛行制限の緩和により、2020年代後半に成田の年間発着容量を現在の羽田と同じ50万回に拡大する計画を進めています。

成田空港の処理能力は羽田と同じ50万回/年に
これらの施策により2030年代初頭までに、首都圏2空港で100万回の容量を確保し、発着枠が飽和して需要を取りこぼさない為の「先手の施設整備」が進んでいます。2030年代を勝ち抜く為に先回りしたインフラ整備を!

それに対して近畿圏3空港については、2030年付近に見込まれている50万回/年の需要をなんとか満たすだけで、主力の関空の新ターミナルビルの建設計画も無く、余裕のない状況に陥ると予想されます。このままでは、伸び続けるであろう航空需要に対応できなくなり、今後数十年にわたって、アジア各国成長がもたらす経済的恩恵は、受け入れ余力が生まれる首都圏にもたらされる事になります。
今後のインバウンド(訪日外国人)の本格回復に対応するだけでなく、2030年代後半に向けて、近畿圏全体で70万回〜100万回程度の発着枠を実現する為に、途切れる事なく空港整備を行う事が必要です。

