【再都市化ナレッジデータベース】←新規情報やタレコミはこちらのコメント欄にお願いします!

大阪市が老化した街路樹を伐採し『緑視率』が大幅に低下。倒木の危険性除去と都市緑化を両立を図る『壁面緑化』の推進を考えてみた



都市の「緑(みどり)」は都市空間において、景観(美しい街並み)を形成する機能、ヒートアイランド現象などの都市気候を緩和する機能、防災的機能(防火や防風等)、人々に憩いやレクリエーションの場を提供する機能等、様々な役割を果たしています。

大阪市の都市緑化は、これまで新たな緑やオープンスペース(量)を生み出すことを主眼に進められてきまた。都市公園や街路樹の整備などにより都市緑化を推進し、緑量の拡大を図ってきました。

しかし、地価が高く高度に都市化した大阪都心部において、まとまった面積をもつ都市公園を新設する事はとても難しい状況です。※例外的に「うめきた2期」に大規模な都市公園が新設されるが、これは本当に英断といえる取り組みといえる。

公開空地などを活用した面的な緑の増加については、引き続き地道な取り組みを続ける事に加え、異なったアプローチで、早期に実現できる、実際に緑と潤いを実感できる取り組みが必要です。


◆大阪市はもともと自然の緑に恵まれない都市だった

大阪市は、もともと市域の大半が淀川と大和川の土砂の堆積で形成された沖積平野からなり、 自然の緑に恵まれず、さらに早くから市街化が 進展したため、緑やオープンスペースが十分とは言えない状況に。大阪城公園、長居公園や鶴見緑地公園、淀川河川公園などがあるが、いずれも多くの人々が集まる都心から少し離れた位置にあり、日常生活において目にする緑は少なく感じられる

緑の量を立体的に測る「緑視率」


出典:国土技術政策総合研究所

都市の緑化に関する指標として、平面的に草木などの緑が、建物の敷地を覆う割合である「緑被率」などが用いられてきましたが、人間の実感と乖離が見られるという問題点がありました。

その為、近年では、道路側から建物の敷地を見て、立面的に草木などの緑が、建築物の壁面を覆う割合である「緑視率」に注目が集まっています。



「緑視率」は、人の視野に占める樹木などの「みどりの面積」の比率で、定点を決め、一定基準のもとで、まちの風景の写真撮影を行い、机上で写真内の緑量の割合を算出します。人が感じる「みどり」の多寡と連動する「緑視率」は、これまでの指標より人間の感覚に近い指標と考えられています。

国土交通省の発表によると、緑視率が25%以上になると人は「緑が多い」と感じ始めます。緑視率が高まるにつれ、「潤い感」「安らぎ感」「さわやかさ」などの心理的効果が向上する傾向が見られます。

大阪府は2011年から12の幹線道路沿いに「みどりの風促進地域」を設定し、緑視率25%以上など一定条件を満たすと容積率や建ぺい率を緩和しています。

緑化技術が進み壁面緑化が普及



「希望の壁」は緑視率を高める取り組みの1つ

緑視率を上げる方法はいくつかあります。理想は枝ぶりの良い大きな街路樹を植える事です。しかし、大きな街路樹は価格が高い、場所を取る、維持管理にコストが掛かる、その為短期間に整備出来ない、といった課題があります。そこで、有効な手段として考えられるのが、壁面緑化や立体的なガーデニングです。

緑化技術は日々進歩しており、建物への荷重負荷を低減する軽量の植栽基盤や緑葉の期間が長い芝、地被など、次々と新たなシステムが開発されています。管理面でも、省管理型の植物や自動灌水設備の導入によって維持管理作業の軽減とランニング・コストの低減が図られています。

 


大規模な壁面緑化を導入したタワーマンション

国や自治体も積極的に緑化を推進しており、一定規模を超える建物については緑化を義務付けるとともに、緑化による容積率の割増や減税措置の制度を設ける自治体もあり、その数も増加傾向にあります。

今後の課題としては、継続的な緑の維持管理、チープに感じない形状や街並みにマッチしたデザインの創出、生態系を考慮した植物の選定、普及を促進する為に事業者に対するインセンティブの拡充などが上げらます。

倒木被害を受けリスクの高い街路樹を伐採


強剪定された街路樹

2018年に大阪を襲った台風21号により、公園5050本・街路樹1650本が倒れるなど災害のリスクが顕在化しました。緑化を進めるために、昭和40年代以降量的拡大を図ってきた樹木は、植栽後50年近くが経過し老木となり、倒木の危険性が高まっている他、歩道上の根上りによる歩行者転倒の危険性が増加しています。

倒木は人命やライフラインに被害を及ぼすため、大阪市は事故等を未然に防止するために、市民生活に支障を来すおそれのある樹木を撤去、又は低木や若木への植え替えを進めています。

壁面緑化とセットで潤いを確保してほしい!



都市開発を追い続けている僕は、街路樹の伐採について、少し思う所があります。

「緑が少ない大阪」と言われてきた大阪ですが、この数十年間で状況は大きく改善しました。古いビルが建替えられるに連れ、公開空地を持ったビルが徐々に増え、都心部にポケットパークが増えた事、中之島公園を中心としたリバーフロントの再整備、そして先人たちが植えてきた街路樹が大きく育ち、都心に緑が増えてきました。そして現在。大きく育った街路樹が老木となり人命に影響を与える可能性から、その木を切る事になりました。

 



若木や低木への植え替えを進めることで、街路樹の本数は同程度に維持され安全性が高まりますが、緑の面積が小さくなるので緑視率は大幅に低下する事になります。安全性・経済性と緑の潤いの増加。相反する課題を解決する手段として、緑視率を指標とした、計画的な壁面緑化の整備を提言したいです。

 


超高層化により生み出された公開敷地が緑化に寄与

人命に危害を及ぼす可能性の排除と、その後に壁面緑化を導入し、安全性を確保しつつ、緑の総量を増やしてゆく。高度に都市化された大阪都心部で、他都市に負けない緑の潤いを、これから創出してゆく。緑地面積や街路樹の本数増加にプラスα、壁面緑化を計画的に進めることで、大阪都心部の快適性はさらにアップし、魅力的な街並みを形成する事が出来ると考えています。

シビックプライドの醸成と、都市緑化の推進を含めた住環境の改善。安全性と経済性の両立。様々な要素が絡み合う問題ですが、都市の魅力を高めるために戦略的な取り組みを期待したいです。

まとめ
・2018年の台風21号により大規模な倒木被害が発生、リクスが顕著化
・これをきっかけに市は老木を中心に街路樹の伐採と植え替えを加速
・安全を確保する為に、伐採や若木への植え替えは仕方がない
・反面、緑の面積は大幅に縮小、都市緑化は大きく後退
・解決策として、緑視率を重視した「壁面緑化」の推進を提案
・事業者にさらなるインセンティブを与え壁面緑化を促進
・壁面緑化が乱雑にならない様に行政はトータルデザインをハンドリングが必要

3 COMMENTS

@

最近はゲリラ豪雨や台風、線状降水帯など雨にまつわる災害が多くなっているだけでなく激甚化しています。
そのせいか大雨が振ったあとは樹齢40年以降の木が倒れるといった被害が多発しているように感じます。
都心に緑が多いことは良いことですが、あまりにも木が多く森のようになっている場所は夜に歩くのが怖いと感じるほど暗くなっていることもあるので、伐採したり剪定をすることをもっと行って良いと感じます。

呉屋慶

大阪市は街路樹の管理が雑やね…大阪市に限った話では無いけど
強剪定された木が痛々しい

七味

根っこが伸びてきて歩道をボコボコにしているのも問題になっているようで、
うちの近所では木を伐採して植え替えてたりしてまして、歩道も補修したり
していました。植え替えた木は歩道に影響が出ないようなのを選んでいるそうな。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です