近鉄大阪線・五位堂駅が特急停車駅に昇格!朝夕ラッシュ時の一部が停車。香芝市と近鉄が協働し、通勤利便性と沿線価値の向上へ

近畿日本鉄道(近鉄)と奈良県香芝市は、2026年春のダイヤ変更において、近鉄大阪線 五位堂駅に一部特急列車を停車させると発表しました。朝夕の通勤・通学ラッシュ時間帯の利便性向上を目的とした施策で、停車開始日に合わせて記念式典も実施される予定です。

1. 特急停車の概要

・実施時期:2026年春のダイヤ変更から開始

・停車目的:朝夕ラッシュ時間帯の通勤・通学利便性の向上

停車本数(予定)
時間帯 行き先 平日 土休日
朝ラッシュ 大阪難波・大阪上本町方面 7本 8本
夕方ラッシュ 名張・松阪方面 10本 9本
 

2. 背景:香芝市の都市計画と沿線価値向上の取り組み

出展:香芝市

五位堂駅周辺では、香芝市が複数の都市計画施策を進めており、特急停車はこれらの取り組みと連動しています。


 都市計画の見直し

2024年9月に策定された「第一次香芝市都市計画再編基本方針」に基づき、2025年12月に建築物の高さ制限を緩和する都市計画決定を予定。


駅前広場の整備

2024年12月に策定された「五位堂駅南側駅前広場整備基本構想」を基に、駅前広場と周辺道路の整備が進められています。


鉄道事業者との協議

香芝市は沿線価値向上を目的に、近鉄と協議を重ねてきました。その結果、市の要望と協力を受ける形で、五位堂駅への特急停車が正式に決定しました。


市の補助事業

特急停車に関連する駅施設整備について、香芝市は補助事業を予定しており、関連予算は2025年12月の市議会に提出される予定です。

3. 五位堂駅に特急がこれまで停車しなかった理由

長年五位堂駅が特急停車の対象外だったのは、事業上の費用対効果が小さかったためです。


大阪市内まで近く、特急と快速急行の所要時間差が小さい

五位堂〜鶴橋間は約21〜25分で、快速急行が既に停車していました。
有料特急による時間短縮効果は数分にとどまり、料金負担とのバランスが取りにくい状況でした。


 長距離利用者の所要時間が延びる

名張や榛原、伊勢方面など中長距離利用者にとって、五位堂停車は所要時間増加につながります。
特急の速達性を維持する運行設計上、停車が見送られてきました。

4. 需要構造の変化:名張・榛原など遠距離ニュータウンの減速


出展:名張市

今回の判断には、沿線の人口動態と通勤圏の縮小が背景にあります。


名張・榛原エリアで進む需要減速

以下の要因が重なり、遠距離ニュータウンの需要維持が難しくなっています。


  • 大阪都心まで片道60〜90分の長距離通勤

  • 若年層の転出と高齢化の進行

  • 住宅更新の停滞と空き家の増加

  • これらによる大阪への通勤需要の減少

鉄道事業者にとって、これらのエリアへの新規投資やサービス拡充は効果が見込みにくい状況です。

5. 五位堂(香芝市)が特急停車の対象として評価された理由

一方で、五位堂駅を抱える香芝市は、奈良県内で最も大阪寄りの立地を持ち、将来需要が安定して見込めるエリアです。


● 地理的優位性

  • 奈良盆地の西端に位置し、大阪側からのアクセスが良い
  • 本町、淀屋橋など都心ビジネス街が通勤圏内
  • 大阪府内に比べると安価な地価、同じ予算であれば広い家が購入できる
  • 自然環境が良い

● 人口・世帯構造の強み

  • 人口減少が緩やか
  • 世帯数は増加傾向で住居の需要が引き続き存在
  • 新築戸建て需要が高く、土地が空けば短期間で開発が進む

これらの点から、五位堂駅は 長期的に利用者基盤を確保しやすい地域と評価され、特急停車を行う費用対効果が向上しています。

 6. 近鉄の経営判断:成長が見込める郊外への重点投資

近鉄は人口減少時代において、沿線の「選択と集中」を進めています。


  • 名張・榛原:将来需要の維持が難しい遠距離ニュータウン

  • 五位堂・香芝:世帯増加・住宅需要が強く、大阪に近い「強い郊外」

この構造を踏まえ、近鉄は五位堂駅を中長期の重点拠点として扱い、特急停車という追加投資を行ったと考えられます。

 7. 関係者コメント

出展:香芝市


香芝市 三橋市長

「五位堂駅への特急停車は、地域の発展に大きく寄与する歴史的施策です。今後も近鉄と連携し、地域の発展に取り組んでまいります。」


近畿日本鉄道 原社長

「人口減少が進む中でも成長を続ける香芝市には注目しています。特急停車を通じて地域の発展に寄与し、さらなるサービス向上に努めます。」

 8. まとめ

五位堂駅の特急停車は、


  • 駅前広場と都市計画の再編

  • 大阪圏郊外の需要構造の変化

  • 名張・榛原など遠距離ニュータウンの減速

  • 五位堂エリアの高い住宅需要・世帯増

  • 特急停車による費用対効果の向上

  • 近鉄の沿線ポートフォリオの再編

など、複数の要因が重なって実現した施策です。

今後は五位堂駅を中心に住宅開発や商業投資が進む可能性が高く、沿線価値の上昇も期待されます。





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