出典:http://sandsjapan.com/
ラスベガス・サンズ(LVS)が日本での統合型リゾート(IR)開発を見送ると発表しました。横浜でのライセンス獲得を目指していたLVSは、日本でのIR開発の代わりに、マカオやシンガポールですでに運営しているIRの拡大など「他の機会」に力を集中させるとのとの事です。米ラスベガス・サンズ(LVS.N)は13日、日本で統合型リゾート(IR)にカジノを設立する計画を断念したと明らかにした。すでにシーザーズ・エンターテインメントやウィン・リゾーツも計画を撤回しており、観光を通じた経済支援を目指している日本政府には打撃となる。
出典:ロイター米ラスベガス・サンズ、日本の統合型リゾート計画を撤回

ロイターが伝える所によると、サンズに加え、シーザーズ・エンターテインメントやウィン・リゾーツも日本版IRから撤退しているとの事で、日本版IR、特に地元住民のコンセンサスが得られていない横浜IRに黄色信号が灯り始めました。
ライセンス有効期限が短く投資回収が難しい

出典:横浜市
サンズなどのIR事業者にとって特に大きな障害となったのは、日本版IRのライセンスの有効期間が10年と短く、その期間内で日本の中央官庁や地方自治体が参入企業の利益を損なうような形で条件を変える可能性があることです。ラスベガス・サンズがマカオとシンガポールに有するカジノリゾートのライセンスはそれぞれ20年、30年有効です。リゾート建設に5年を要する可能性があり、その規模の投資に対する十分なリターンを確保するには10年間のライセンス期間は短すぎると判断した様です。
金の卵を産む鶏を殺す愚策

出展:https://www.caesars.com/meetings
日本への参入を見送ったIR事業者は、日本に行われるはずだった投資をシンガポールなどの他国で行います。さらに、その投資がライバル他国のIR施設を強化する事になり、日本が獲得するはずだった外貨が他国に流れてしまいます。
日本のカジノ市場がマカオに次いでアジア2番目の規模となり得る、とのアナリスト予想もありましたが、このままでは日本が自分で決めた厳しすぎる法規制によって「金の卵を産む鶏」を殺してしまいます。
日本に余裕はない。ハングリー精神で勝ちに行け!

日本版IRは法整備までの動きが余りにも遅く、その間にコロナウイルス・パンデミックが発生するなど、市場環境が激変してしまいました。さらに上から目線に思える法規制(3%ルールやライセンス期間10年、税率など)がIRの収益性を悪化させ、参入を見送る事業者が続出しています。規制内容は、シンガポールやマカオなど先行事例があったはずで、ライバルに勝てるレベルの基準は作れなかったのでしょうか?日本は経済大国なのでIRも莫大な収益を上げるはずだから、ライバルよりも厳しくても三顧の礼で向こうがやってくる、とでも思ったのでしょうか?そうだとすれば相当ピントが外れてます。
海運、空港、金融など、日本の対応・決断・規制緩和・設備投資が遅れに遅れ、世界の後塵を拝するに至った領域は沢山あります。そして一度競争から脱落すると、もう取り返しがつかないほどの差が生まれます。
素晴らしい理念・理想も経済的な裏打ちが無ければ絵空事です。今の日本は90年代までの様な力は無く、決して勝者ではありません。今の日本は自分が「挑戦者」だと自覚し、並み居るライバルを徹底的にベンチマーキングして、そこを出し抜く戦術・戦略で行くしか在りません。サンズ撤退のニュースを見て、日本、少なくとも中央政府界隈は「ハングリー精神を失っている」と強く思いました。
大阪はハングリー精神を持って、フルスペックのIRを実現させ、フロントランナーとして突っ走って欲しい!


