
コンサートプロモーターズ協会 関西支部会は、2024年2月15日に『関西地区のアリーナ建設計画に関する声明』を発表し、アリーナ施設の不足による、エンタテインメント産業の首都圏一極集中と関西のエンタメの衰退を危惧している事を伝える情報を発信しました。
以前にこのブログでも、アリーナ施設の不足を危惧する記事を書きましたが、実態は一般人が考えているよりも遥かに深刻でした。このままの状況が続けば、大型公演の東京(首都圏)一極集中がさらに加速し、世界的な巨大都市圏である「京阪神地区」においても、東京方面に行かないと意中のアーティストのコンサートが見られない時代がやってきそうです。
【出典元】
→関西地区のアリーナ建設計画に関する声明
コンサートプロモーターズ協会(ACPC)とは
音楽を中心としたライブ・エンタテインメントを主催する、全国のプロモーターで構成される一般社団法人。ライブ・エンタテインメント産業の
さらなる発展を目的として、各種の公共事業を実施している。計画中の森ノ宮アリーナを含め、今後関西圏におけるアリーナ完成時に際しては、利用率7割相当はACPC会員が実施する予想。
1・圧倒的な差が付いた関西と首都圏のアリーナ施設

出典:コンサートプロモーターズ協会(ACPC)
コロナ禍以降、様々なエンタテインメント公演の急激な復活により、コンサート開催公演数としては過去最高ともいえる規模となり、それに伴い大規模公演も増加します。しかし首都圏に集中且つ限定されているのが実情です。最大の理由は、ライブ会場となるアリーナ施設が絶対的に不足している為です。現在、首都圏では、新アリーナ建設・開業が相次いでおり、2030年迄には10,000席規模の会場が15施設開業となる予定です。これに対して、関西圏のアリーナ会場の計画は途中段階を含め3施設しかありません。また、中部地区でも大規模アリーナ計画が進んでいる状況下においては、さらに遅れをとる事になります。
現存する大阪のアリーナは、スポーツ使用を目的として建設された施設であり、大阪城ホールにおいては、コンサート利用に限らず多くの催事によりスケジュール確保が非常に困難な状況が続いています。他のスタジアムはスポーツ施設であることからエンタメで使用できる期間は限られています。また、海外アーティストは、開催計画期間が短いという理由により、関西では会場確保すら困難な状況にあるそうです。
2・関西圏のアリーナ公演の全国シェアは18%

出典:コンサートプロモーターズ協会(ACPC)
2つ目の理由は、大型エンタテインメント・コンテンツのほぼ全てが東京ベース発信・主導である現実があります。東京キー局を頂点に、音楽、芸能、芸術、制作などのエンタメ産業の拠点の大半が東京にあります。そのため、首都圏以外でライブイベントを開催する場合、東京からの移動交通費、宿泊費、運送費等が発生するため、大阪を含む地方公演は経費増により不採算になります。同じ人数、たとえば1万人規模のライブを行うのであれば、交通・宿泊・運送費が不要な首都圏で開催するのが最も収益が上がります。東京にあるエンタメ産業は、首都圏で会場が確保できなかった時代には、関西および地方都市での開催を余儀なくされていました。しかし、近年、関東地区の大規模会場が十分に確保可能な状況となり、その必要性が低下しました。
3・関西公演は首都圏の約1.5倍の経費がかかる

関西におけるコンサート収支構造は、物価が高騰する中、首都圏公演と比較すると1.5倍の経費(アーティスト関係の移動宿泊費、舞台関係の輸送費等)がかかります。その為、大阪城ホール等の8,000席〜10,000席キャパでは採算が合わなくなってきており、主催者であるアーティスト事務所が関西公演を敬遠しています。東京を拠点とするアーティストが大阪公演で採算を取るためには、首都圏よりも一回り大きなイベントが必要になり、そのため、大規模収容人数の会場が必要となります。
さらに輪をかけて、アリーナ施設が不足して会場が確保できない状況であれば、わざわざ移動交通費、宿泊費、運送費等をかけて、不採算な大阪(を含む首都圏以外の全ての地方)公演を行う必要性が問われる事になります。コンサートプロモーターズ協会によると、大阪・関西地区における大規模公演開催の是非が検討案件となることが現実に起こっているそうです。これら現実的課題により、エンタテインメントの首都圏一極集中が加速。「大型公演の関西飛ばし」が加速しています。
経費約1.5倍で採算が取れる規模感での施設整備が必須条件に!

コンサートプロモーターズ協会では、現在計画されている森ノ宮アリーナの規模は13,000人を期待していましたが、建物横幅が80mに限定され、このままでは10,000席規模になります。もし10,000席以下の規模の施設となった場合、大阪公演の収支・採算は困難で積極的な利用が出来ない状況になりかねません。アリーナの償却期間は60年でであり、国際都市である大阪・関西でのコンサート文化を長きにわたり支える意味でも、現在における需要にそぐわない規模での建設計画は、必ず避けるべきであると考えます。
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大阪・関西のエンタメ産業衰退を食い止めるために

興行主が全て東京にいる状況で、首都圏に十分な数のアリーナ施設が整備された状況下、地方公演は、不要な経費がかかり、箱が小さく、圧倒的に不足している現状となっており、大阪・関西のエンタメ産業の衰退は必然といえます。大阪・関西におけるエンタメ産業の衰退を食い止める為には、興行が採算ベースに載せられる規模の音楽専用アリーナを複数建設するしかありません。
首都圏開催に対して約1.5倍の経費がかかる現実を鑑み、それに即した施設整備、具体的には13,000席クラスのアリーナを京阪神地区に、現在の計画に加えて、さらに3〜4施設整備する必要があります。大阪・関西におけるアリーナ公演の全国シェアを30%以上に引き上げる、具体的な数値目標が必要だと考えています。
このままエンタテインメント産業の首都圏一極集中が進行した場合、「大型公演の関西(関西以外地域含む)飛ばし」が更に加速することは間違いなく、日本第二の都市を自負する大阪・関西のコンサート文化が衰退する事は確実です。また、(現代のエンタメ産業的な意味で)文化的魅力が低下した関西地区からの若者流出という負の連鎖に繋がってきます。
大阪・関西自治体の首長の方々にも、この現実を知って頂き、是非とも前向きな計画を策定して欲しいと思います。
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