出展:グランビスタ ホテル&リゾート
ヒルトン再出発とMICE整備で“都市の顔”を再定義する中島公園再開発
札幌市中央区・中島公園に面した老舗ホテル「札幌パークホテル」が、2027年2月28日をもって営業を終了し、建て替えられることが正式に発表されました。再開発では、ヒルトンブランドの都市型高級ホテルとして再出発するほか、隣接地に最大5,000人収容のMICE(国際会議・展示)施設が整備される予定です。観光・交流・国際都市機能を兼ね備えた新施設が誕生する予定です。
北の迎賓館の60年──変遷と再生の歴史
出展:グランビスタ ホテル&リゾート
「札幌パークホテル」は、1964年7月10日に「ホテル三愛」として開業。リコー創業者の市村清氏が率いた三愛グループによって設立され、中島公園の緑を借景にした都市型リゾートとして注目を集めました。1966年に現名称に改称され、1972年札幌冬季五輪ではIOC本部ホテルとして使用されるなど、国際都市・札幌の迎賓機能を担ってきました。
経営面では1987年の真谷地炭鉱閉山、1995年の北海道炭礦汽船(北炭)経営破綻を経て、三井観光開発や大和証券系ファンド、企業再生支援機構の支援を受けつつ転換を繰り返し、2015年にはサンケイビル(フジ・メディアHD傘下)がグランビスタ ホテル&リゾートを買収。再編とともに、建て替え計画が本格化していきました。
2019年にヒルトンと提携、都市型高級ホテルへ再出発
ヒルトン長崎
2019年3月、グランビスタとヒルトンはフランチャイズ契約を締結し、建て替え後のホテルを「ヒルトン札幌パークホテル」として開業する計画を発表。当初は2023年開業を見込んでいましたが、新型コロナウイルスの影響、MICE施設との整備調整によって延期。現在は2030年ごろの開業が見込まれています。
新ホテルは約350室を想定し、レストラン、バンケットホール、フィットネス、チャペル、プールなどを備えるフルサービス型都市ホテルとして再設計される予定です。運営はグランビスタが継続。ブランドは「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」で公表されていますが、現時点でコンラッドやウォルドーフ・アストリアなど上位ブランドの採用は未定です。正式発表はなく、推測の域を出ません。
MICE施設は別棟整備に転換、事業費は最大600億円へ
札幌都心部の様子1
札幌市は2018年にMICE施設の基本計画を策定し、当初はホテルとの一体整備を予定していました。しかし、2025年6月の報道により、ホテルとは別棟で整備する方針への転換が公表されました。建設地はパークホテルの駐車場跡地で、地上5階・地下2階相当、最大5,000人収容の会議・展示機能を備える予定です。
当初想定の事業費は341億円でしたが、建設コストの高騰により最大600億円規模に膨らむ可能性が指摘されています。開業は2030年度以降の見込みで、詳細な整備方針は2025年11月に札幌市から発表予定。スケジュールや仕様については、今後も柔軟な見直しが必要となる可能性があります。
中島公園周辺の広域再編──インターコンチネンタルの進出も
出展:https://lilac-square.jp/
中島公園周辺では、札幌の都市機能を再構築する複数の開発が同時並行で進行中です。その一つがアクサ生命が手がける複合開発「ライラックスクエア」です。2025年度中の開業が予定されており、ホテル・オフィス・商業機能を統合した複合型施設となる予定です。
特筆すべきは、「インターコンチネンタル札幌(仮称)」が札幌で初めて開業することです。世界的ブランドの進出は、札幌市の国際競争力をさらに高める要素となり、ヒルトンとMICEを軸とする札幌パークホテルの建て替え計画とあわせて、中島公園エリアの地位を一段引き上げることになりそうです。
人口190万都市の挑戦──MICEの規模と持続性
札幌都心部の様子2
札幌駅周辺とは異なる性格を持つ中島公園エリアが、「都市型リゾート」×「国際交流拠点」として再構成されることで、観光・滞在・ビジネスの融合が期待されます。また、2030年度には北海道新幹線の札幌延伸も控えており、長距離アクセスの強化もこうした再開発を後押しする重要な基盤となります。
まとめ
出展:平和不動産
今回の札幌パークホテル建て替えとMICE整備、そしてインターコンチネンタル進出を含む一連の再開発は、札幌が目指す都市機能の高度化と国際競争力の強化に直結します。パークハイアット、ハイアットセントリックの進出。ヒルトン、インターコンチネンタル、JR札幌駅の新駅ビルに進出予定のマリオット最上級ブランド。外資系高級ホテルが不足していた札幌市ですが、その遅れを取り戻すように、急速に開発が進んでいます。
出典:
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グランビスタ ホテル&リゾート(2019年・2025年公式発表)
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ヒルトン プレスリリース(2019年3月28日)
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日本経済新聞、北海道新聞、HTB(2025年6月)
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札幌市 MICE 整備基本計画(2018年)
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アクサ生命、IHGグループ、リアルエコノミー報道より再構成