ハイアット リージェンシー 京都、2027年5月で営業終了。改修ではなく建て替えが選ばれた本当の理由


オリックス不動産は、京都市東山区の「ハイアット リージェンシー 京都」を2027年5月9日で営業終了すると発表しました。営業終了後は建物を取り壊し、新たなホテルを建設する方針です。現時点で新ホテルのブランドや完成時期は未定です。

このニュースは、単なる老朽化による閉館として受け取るより、東山エリアのホテル資産を次の時代に合わせて組み替える動きとして見たほうが自然です。ハイアット リージェンシー 京都は2006年3月15日に開業した一方、現在の建物はそれ以前のホテル資産を引き継いだもので、2013年にはオリックス不動産が取得しました。つまり今回の営業終了は、20年そこそこのホテルが役目を終える話ではなく、より長い時間を背負った建物と事業モデルを一度リセットする判断です。

沿革を振り返ると、前身は1971年開業の「京都パークホテル」です。開業当初は2階建ての小規模ホテルでしたが、1980年に現在の建物へ建て替えられ、その後、経営不振を受けて2004年12月にモルガン・スタンレーへ売却。2005年1月から約7カ月かけて内部を全面改装し、2006年3月15日にハイアット リージェンシー 京都として再出発しました。今回の営業終了は、この長い履歴を持つホテルが再び大きな転機を迎えるということでもあります。

ホテルの中身を見ると、この施設が単なる宿泊特化型ではないことも分かります。オリックス不動産が2013年の取得時に公表した概要では、客室数は189室、3つのレストラン、1つのバー、11の宴会・会議室、チャペル、フィットネスセンター、スパを備えていました。宿泊に加え、婚礼、宴会、会食、会議まで受け止めるフルサービス型ホテルです。

しかし、ホテルは内装更新によって見た目を新しくすることはできても、天井高、構造、配管、客室配置、共用部の動線といった建物の骨格までは簡単に変えられません。しかも標準客室は、旧京都パークホテル時代の3室を2室に改造して約30㎡へ拡張した経緯があり、2006年の再生時点では十分に競争力がありましたが、2020年代後半のラグジュアリーホテル市場ではやや物足りなさが出てきた可能性があります。

今回の閉館は、改修を重ねて延命するよりも、建て替えてホテルの商品そのものを再設計したほうが合理的だと判断した可能性が高いと考えられます。

シックスセンシズ京都(Six Senses Kyoto)

その判断を後押ししたのが、東山エリアの競争環境です。近隣にはフォーシーズンズホテル京都が180の客室・スイート・レジデンスを展開し、会議・宴会機能も備えています。シックスセンシズ京都は2024年開業、81室、客室面積42〜238㎡という構成で、ウェルネスや滞在体験の厚みを前面に出しています。つまり東山は、単に高級ホテルが点在するエリアではなく、客室の広さ、共用部の質、滞在体験の設計まで含めて競うラグジュアリーホテル集積地へ変わっています。そうした中で、1980年躯体ベースのホテルを改修で維持するより、建て替えで一段上の競争力を取りにいくほうが自然です。



立地の強さも見逃せません。ホテルは三十三間堂や京都国立博物館に近く、東山七条の歴史資産と観光資産の両方を取り込める場所にあります。さらにこの一帯は、後白河法皇の院御所である法住寺殿の跡地周辺として知られ、三十三間堂自体も法住寺殿域内の蓮華王院に由来します。宿泊施設としての利便性だけでなく、土地そのものに厚い歴史文脈がある点は、東山のホテル開発にとって大きなアドバンテージとなります。



今回の営業終了は「老朽化したホテルが閉まる」というより、「東山七条という立地が、現在のハードでは少しもったいない水準にまで価値が高まった」と読むのがしっくりきます。ブランドが未定であることも含め、オーナーは次のホテルを白紙から最適化できる立場にあります。ハイアットを継続するのか、より上位のブランドに振るのかはまだ分かりませんが、少なくとも改修延命ではなく建て替えを選んだ時点で、目線は明らかに次の収益ステージに向いています。

ハイアット リージェンシー 京都は、前身の京都パークホテル時代から数えれば半世紀以上にわたり、この場所で役割を果たしてきました。その歴史がいったん閉じるのは寂しい話ですが、事業の論理で見れば、今回の決断はかなり明快です。東山という強い立地に対して、いまの器では取り切れない価値がある。だからこそ、全面改修ではなく建て替えが選ばれた。今回のニュースの本質は、そこにあると思います。






出典元

  • オリックス不動産株式会社「『ハイアット リージェンシー 京都』営業終了のお知らせ」
  • Hyatt公式「Hyatt Regency Kyoto」客室・施設情報
  • Hyatt Newsroom「Hyatt Regency Kyoto opens March 15, 2006」
  • オリックス株式会社「ORIX Real Estate Acquires Hyatt Regency Kyoto」
  • Four Seasons Hotel Kyoto 公式ファクトシート・客室情報
  • Six Senses Kyoto 公式客室情報・開業案内
  • 京都市・法住寺・三十三間堂関連資料
 

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