関西エアポート、純利益402億円で過去最高 国際線旅客が国内線を逆転、関西3空港は2030年代前半に「7,000万人空港圏」へ 、新ターミナル建設が喫緊の課題に



関西国際空港、大阪国際空港、神戸空港の3空港を運営する関西エアポートが発表した2025年度決算は、関西経済の構造変化を映し出す内容となりました。

今回の決算で注目すべきポイントは3つあります。

1つ目は、関西3空港が旅客数・収益ともに過去最高圏へ入ったこと。
2つ目は、国際線旅客数が国内線旅客数を上回り、関西3空港の役割が変わり始めたこと。
3つ目は、年間50万回の発着容量が、将来の余裕ではなく、2030年代後半に見えてくる次の天井になりつつあることです。

中国方面の大幅減便という逆風がありながら、関西3空港は成長を維持しました。大阪・関西万博、インバウンド需要、神戸空港の国際化、そして関空リノベーションによる商業収益力が、それを支えました。

1. 決算実績:純利益402億円、過去最高益を更新

2026年3月期の連結決算は、営業収益が前期比11%増の2,713億円、営業利益が8%増の696億円、経常利益が9%増の589億円、当期純利益が9%増の402億円でした。国際線旅客の増加や大阪・関西万博の効果が収益を押し上げ、各利益段階で増益となりました。純利益は過去最高を更新しています。
項目 2024年度 2025年度 増減 前年比
営業収益 2,454億円 2,713億円 +259億円 +11%
EBITDA 1,092億円 1,160億円 +68億円 +6%
営業利益 646億円 696億円 +50億円 +8%
経常利益 540億円 589億円 +49億円 +9%
当期純利益 368億円 402億円 +34億円 +9%
営業収益は2,700億円台に乗り、当期純利益は400億円を突破しました。重要なのは、中国方面の需要が大きく落ち込んだにもかかわらず、この水準に到達した点です。関西3空港の収益基盤は、中国一極依存ではなく、より広いアジア需要、万博需要、神戸空港の国際化、空港内商業収入によって支えられる段階に入っています。

2. 旅客動向:3空港合計5,401万人、国際線が国内線を逆転



2025年度の関西3空港合計の航空機発着回数は38.1万回、航空旅客数は5,401万人となり、いずれも年度として過去最高を記録しました。空港別では、関西国際空港が3,355万人、大阪国際空港が1,629万人、神戸空港が417万人でした。特に神戸空港は、2025年4月から国際線チャーター便の運航が始まったことで、旅客数が前年度比16%増となりました。
項目 2024年度 2025年度 増減 前年比
航空機発着回数 36.9万回 38.1万回 +1.2万回 +3%
関西国際空港 19.9万回 20.7万回 +0.8万回 +4%
大阪国際空港 13.7万回 13.8万回 +0.1万回 +1%
神戸空港 3.3万回 3.7万回 +0.3万回 +10%
項目 2024年度 2025年度 増減 前年比
航空旅客数 5,086万人 5,401万人 +315万人 +6%
関西国際空港 3,180万人 3,355万人 +176万人 +6%
大阪国際空港 1,545万人 1,629万人 +84万人 +5%
神戸空港 361万人 417万人 +56万人 +16%
さらに大きな変化は、国際線旅客数が国内線旅客数を上回ったことです。

2024年度は、国際線旅客数が2,508万人、国内線旅客数が2,578万人で、国内線が国際線を上回っていました。ところが2025年度は、国際線旅客数が2,762万人、国内線旅客数が2,639万人となり、国際線が逆転しました。
区分 2024年度 2025年度 増減 2025年度構成比
国際線旅客数 2,508万人 2,762万人 +254万人 51.1%
国内線旅客数 2,578万人 2,639万人 +61万人 48.9%
合計 5,086万人 5,401万人 +315万人 100.0%
この逆転は、関西3空港の役割が変わったことを意味します。

関西3空港は、国内移動を支える空港群から、国際交流とインバウンド消費を取り込む広域ゲートウェイへ移行しつつあります。国際線旅客が関西に入り、ホテル、百貨店、飲食、交通、観光、商業施設、都市再開発へ波及する。この流れが、関西経済を支える重要な回路になっています。

3. 収益構造:非航空系収入1,614億円、関空は「外需回収装置」へ



今回の決算で見逃せないのが、非航空系収入の大きさです。2025年度の航空系収入は1,099億円でした。一方、免税、物販、飲食、不動産、構内営業料、ラウンジ、ホテルなどを含む非航空系収入は1,614億円に達しました。

非航空系収入は、航空系収入を515億円上回っています。営業収益全体に占める構成比でも、非航空系が約6割を占めています。
区分 2024年度 2025年度 増減 前年比 2025年度構成比
航空系収入 983億円 1,099億円 +116億円 +12% 40.5%
非航空系収入 1,471億円 1,614億円 +143億円 +10% 59.5%
営業収益合計 2,454億円 2,713億円 +259億円 +11% 100.0%
非航空系収入は、航空系収入の約1.47倍です。これは、関空が航空会社から着陸料を得るだけの空港ではなく、国際線旅客の消費を取り込む商業インフラへ進化していることを示しています。

背景には、関西国際空港第1ターミナルの大規模リノベーションがあります。ただし、非航空系収入が航空系収入を上回る構造は、今回初めて生まれたものではありません。今回重要なのは、国際線旅客の回復、万博効果、商業エリアの刷新が重なり、非航空系収入が過去最高を更新したことです。

関空リノベーションの本質は、ターミナルの美装ではありません。国際線旅客を空港内消費に変換する力を高めたことにあります。出国審査後の商業エリア、免税店、物販、飲食、ラウンジを強化することで、国際線旅客数の増加が空港内消費に結びつきやすくなりました。関空は「空の玄関口」から、インバウンド消費を関西経済に取り込む外需回収装置へと進化しています。

4. 中国便減少でも崩れなかった理由:需要が複線化している



2025年度は、中国方面の需要に大きな逆風がありました。中国政府による渡航自粛要請などの影響で、中国方面の旅客数は減少し、便数も大きく落ち込みました。それでも、関西3空港全体では成長を維持しました。支えたのは、中国本土以外のアジア需要、万博効果、円安、神戸空港の国際化、関空商業エリアの収益力です。

韓国・台湾方面の需要は堅調で、東南アジア方面からの訪日需要も広がっています。中国方面の落ち込みは大きかったものの、需要の受け皿が中国一極ではなくなりつつあることが、今回の決算で確認できました。

2026年夏期スケジュールを見ると、その傾向はさらに明確です。国際線旅客便全体では、中国路線減少の影響で前年比17%減となる一方、中国路線を除くと前年比14%増、2024年比では20%増が見込まれています。
2026年夏期スケジュール 週間便数 前年比 2024年比
国際線旅客便全体 1,202.8便/週 -17% 0%
中国路線を除く国際線旅客便 1,039.8便/週 +14% +20%
総便数だけを見ると、中国路線の減少で弱く見えます。しかし、中国路線を除けば、国際線ネットワークはむしろ拡大しています。

ここに、今回の決算の意味があります。

関西のインバウンド需要は、中国一極依存ではなく、韓国、台湾、東南アジア、欧米、そして神戸空港国際化を含む複線型の成長構造へ移りつつあります。

インバウンドは、単なる観光ではありません。海外から人を呼び込み、日本国内で消費してもらう外需獲得産業です。外国人旅行者が関西に来て、宿泊し、食べ、買い、移動する。その消費は、モノを海外に売る輸出と同じく、外から所得を取り込む経済活動です。

「観光産業は水物」という旧来の見方は、現在の関西経済には合わなくなっています。もちろん、地政学リスク、為替、燃油高、感染症などの影響は受けます。それでも今回の決算は、逆風下でも関西3空港が成長できるだけの需要の厚みを示しました。

5. 次の課題:50万回体制はゴールではなく、次の天井である



今回の決算は、過去最高益という明るいニュースであると同時に、次の課題も示しました。それが空港容量です。

関西3空港は、2030年前後を目途に年間50万回の発着容量確保を目指しています。一方、2025年度の実績はすでに38.1万回です。50万回に対する利用率は76.2%。残る余力は11.9万回、比率にして23.8%です。
項目 数値
関西3空港の2030年前後の発着容量目標 年間50万回
2025年度の実績発着回数 38.1万回
発着容量に対する利用率 76.2%
残り発着余力 11.9万回
残り余力比率 23.8%
2025年度の旅客数 5,401万人
1万回あたり旅客数 約141.8万人
50万回到達時の推計旅客数 約7,090万人
2025年度は、中国方面の大幅減便という逆風があった年度です。それでも発着回数は前年度比3%増えました。この伸び率が今後も続くと仮定すると、関西3空港が50万回の発着容量を使い切るまでにかかる時間は約9.2年です。

かなり保守的に見ても、あと10年程度で次の天井が見えてきます。
年間発着回数の伸び率 50万回到達までの期間 到達時期の目安 見方
年率3% 約9.2年 2034年度末〜2035年度ごろ 中国減便年度並みの保守シナリオ
年率4% 約6.9年 2032年度ごろ 中国便一部回復・神戸国際化進展シナリオ
年率5% 約5.6年 2031年度ごろ 強めの需要回復シナリオ
50万回体制は、将来の余裕ではありません。現在の伸び率で見れば、2030年代後半に現実的に到達しうる次の上限です。中国便の回復、神戸空港の国際定期便化、東南アジア路線の増便が重なれば、到達時期はさらに前倒しされる可能性があります。

空港は、足りなくなってから造っても間に合いません。フルスペックの新ターミナル、CIQ、手荷物処理能力、駐機スポット、アクセス交通、商業エリア、貨物機能まで含めると、構想、調整、設計、着工、供用まで10年単位の時間がかかります。

国際線旅客が関西経済のメインエンジンになるのであれば、空港容量は単なる交通政策ではなく、成長戦略そのものです。2030年代後半に容量が成長制約にならないよう、フルスペックの新ターミナル建設とさらなる容量拡大の議論を、今から本格化させる必要があります。

関西3空港の50万回体制は、関西経済が次の成長段階に進むための最低ラインです。今回の関西エアポート決算は、その明るい実績と、次に迫る課題の両方を示しています。




出典元

・関西エアポート株式会社「2025年度 期末連結決算」
・日本経済新聞「関西エアポート純利益9%増 26年3月期、中国減便もアジア需要支え」
・読売新聞「日中関係悪化で中国便7割減も大阪・関西万博や円安が追い風」
・関西テレビ「関西エアポート 2025年度決算 純利益402億円」
・国土交通省「関西3空港の発着容量拡大関連資料」

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