
大阪市で、老朽化した区役所庁舎の建替えに向けた検討が具体化します。
大阪市は、「令和8年度大阪市区庁舎建替検討にかかる支援等業務委託」の公募型プロポーザルを実施し、2026年6月10日に選定結果を公表、PwC・昭和設計共同事業体が優先交渉権者に選定しました。契約期間は、契約締結日から2027年3月31日までです。
今回の業務は、10区庁舎の建設工事が一斉に始まるとわけではなく、現在は、大阪市が公表した「10区庁舎建替えビジョン」をもとに、施設のあり方、建設用地、複合化、民間活力導入、事業手法などを詰める支援業務・基礎調査段階です。
いまはどの段階なのか
| 段階 | 内容 | 現在地 |
|---|---|---|
| ビジョン策定 | 老朽10区庁舎を建替え対象として整理 | 完了 |
| 支援業務の事業者選定 | 検討支援、技術助言、基礎調査を担う事業者を選定 | 今回ここ |
| 施設のあり方・建設用地等の検討 | 複合化対象施設、建設場所、事業手法を検討 | 2026年度に着手 |
| 基本構想・基本計画 | 新庁舎の機能、規模、配置、事業手法を具体化 | 今後 |
| 設計・工事 | 基本設計、実施設計、施工、PFI等の事業者選定 | まだ先 |
対象は1965〜1974年建設の老朽10区庁舎

建替え検討の対象となるのは、阿倍野区、此花区、都島区、東成区、旭区、大正区、鶴見区、住之江区、東淀川区、東住吉区の10区庁舎です。いずれも1965年から1974年に建設され、供用開始から50〜60年が経過しています。
大阪市内には24区役所があります。このうち、1964年以前に建設された9庁舎は2016年までに建替え済みです。今回の10庁舎は、その次に古い世代の区役所にあたります。
| 区庁舎 | 建設年月 | 延床面積 |
|---|---|---|
| 阿倍野区役所 | 1965年5月 | 6,582㎡ |
| 此花区役所 | 1965年5月 | 5,458㎡ |
| 都島区役所 | 1966年1月 | 4,723㎡ |
| 東成区役所 | 1969年4月 | 6,192㎡ |
| 旭区役所 | 1970年3月 | 5,968㎡ |
| 大正区役所 | 1972年11月 | 7,464㎡ |
| 鶴見区役所 | 1974年6月 | 7,581㎡ |
| 住之江区役所 | 1974年6月 | 5,355㎡ |
| 東淀川区役所 | 1974年7月 | 6,935㎡ |
| 東住吉区役所 | 1974年7月 | 7,175㎡ |
なぜ建替えを検討するのか

大阪市が10区庁舎の建替えを検討する理由は、単に「建物が古いから」ではありません。対象10庁舎はいずれも耐震改修済みであり、直ちに危険だから建替えるという話ではありません。
課題は、建物本体、設備、行政機能のすべてが、50〜60年前の庁舎を前提にしていることです。大阪市は、設備機器や配管の経年劣化が進み、古い設備では交換部品が生産終了となっているものもあると整理しています。突発的な故障が発生すれば、来庁者や行政サービスに影響するおそれがあります。
区役所業務も、建設当時から大きく変わりました。マイナンバーカード関連業務、各種相談業務、福祉・地域支援、OA機器の増加、プライバシーに配慮した相談スペースの確保など、庁舎に求められる機能は多様化しています。部分改修だけで、窓口サービス、執務環境、バリアフリー、防災機能を更新し続けるのは難しくなっています。
先送りにもリスクがあります。設備故障や緊急修繕が増えるだけでなく、将来の建替え時期が集中すれば、財政負担や施工体制への影響も大きくなります。建設費の上昇、入札不調、工期延長が起きやすい環境の中で、更新時期を分散しながら計画的に進める必要があります。
第1グループは阿倍野・此花・都島・東成
大阪市は、10区庁舎を段階的に検討するため、対象区をグループ分けしています。| グループ | 対象区 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 第1グループ | 阿倍野区、此花区、都島区、東成区 | 2026年度から具体化に着手 |
| 第2グループ | 旭区、大正区 | 第1グループに続いて検討 |
| 第3グループ | 鶴見区、住之江区、東淀川区、東住吉区 | 建替え時期を分散して検討 |
此花区は候補地比較、都島区は現地建替えを調査
第1グループの中でも、此花区と都島区では、建替えに向けた基礎調査がより具体的に進みます。此花区庁舎では、建設用地の候補地が複数、3か所程度想定されています。業務では、各候補地の敷地面積、法規制、接道条件などを踏まえ、最大延床面積や建設条件を調査します。候補地ごとの概算事業費を算出し、PFI方式や定期借地権の活用など、民間活力導入の実現可能性も検討します。
一方、都島区庁舎では、現時点で移転建替えに適した候補地がないことから、現地建替えの可能性を調査します。区役所用地に加え、隣接する都島区民センター、図書館を併設する施設の用地も含め、複合施設化を複数ケースで比較します。
これは、区役所を単独施設として更新するのではなく、地域の公共施設を束ね直す動きでもあります。人口減少時代の公共施設更新では、古い施設を同じ形で建て替えるのではなく、複合化・多機能化によって施設総量とサービス配置を見直すことが重要になります。
民間活力導入も検討対象に

今回の業務では、民間事業者への意向調査も予定されています。参画が想定される事業者3者以上に対し、事業への関心、事業方式、事業期間、業務範囲、民間収益施設の可能性などをヒアリングします。
PFI方式や民間収益施設の導入は未定ですが、実現すれば、庁舎単体の更新にとどまらず、周辺公共施設との複合化や跡地活用につながる可能性があります。一方で、区役所は行政サービスと防災機能を担う施設であるため、公共性、災害時の機能維持、住民の利便性をどう確保するかが重要になります。
区役所から始まる公共施設再編

大阪市の10区庁舎建替えは、梅田や難波の超高層再開発のような派手さはありません。しかし、区役所は市民生活に最も近い行政インフラであり、災害時の地域拠点でもあります。
今回の支援業務によって、老朽化した10区庁舎の建替えは、ビジョン段階から具体化の入口へ進みました。大阪市の公共施設更新は、区役所から新しい段階に入ります。
出典
- 大阪市「令和8年度大阪市区庁舎建替検討にかかる支援等業務委託 選定結果」
- 大阪市「令和8年度大阪市区役所庁舎建替検討にかかる支援等業務委託 発注案件」
- 大阪市「令和8年度大阪市区庁舎建替検討にかかる支援等業務委託 仕様書」
- 大阪市「10区庁舎建替えビジョン」
- 大阪市「阿倍野区庁舎建替整備基本構想策定支援業務委託 選定結果」
- 建通新聞「大阪市 市区庁舎建替基本構想策定支援」
- 建設ニュース「PwC・昭和設計共同事業体を特定/区役所庁舎建替検討にかかる支援等業務」
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