シャープの堺工場跡地の活用が多方面で進展しています。
シャープ堺工場は、2009年に世界初の第10世代マザーガラス工場として操業を開始し、テレビ向け大型液晶パネルの生産を担ってきました。しかし、近年の市況低迷により、2024年8月に生産を停止。シャープは資産の売却を通じて事業構造の軽量化を図り、ブランド事業に注力する方針を示しています。
堺工場は、もともと液晶パネルの生産拠点として建設されたため、工場が持つ大規模な電力供給インフラがデータセンターの運用に最適です。建屋の耐荷重性能が高く、大型のAI計算基盤や水冷サーバーの設置に適しています。さらに、既存の冷却設備も活用できるため、効率的なデータセンターの運用が可能な施設です。
大阪都心にも近いため、技術者の確保が比較的用意である事や、大手企業の研究所やレベルの高い大学群など、センターを活用できる市場がある点も見逃せません。これらの条件が揃っている事から、堺工場はAIデータセンターなどに生まれ変わる事になりました。
KDDIとソフトバンクがAIデータセンターを開設
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KDDIは、シャープから堺工場の土地や建物、電源設備などを取得し、堺工場跡地の一部をAIデータセンターとして活用する計画を打ち出しましgた。2025年度中の本格稼働を目指しています。規模や投資金額は現時点不明ですが、このデータセンターは、生成AIの開発やその他のAI関連事業に活用され、大学や研究機関、企業など多様なニーズに応えることが期待されています。また、環境負荷の低減を目指し、クリーンエネルギーの活用も検討されています。
さらに、2024年12月20日、シャープは堺工場の敷地の約6割にあたる約450,000㎡の土地と、延べ床面積約840,000㎡の建物を、約1,000億円でソフトバンクに売却することを決定しました。ソフトバンクは、受電容量約150MW規模のAIデータセンターを構築し2026年中の稼働開始を目指しており、将来的には、受電容量を250MW超の規模まで拡大する計画です。このデータセンターは、生成AIの開発やAI関連事業に活用されるだけでなく、大学や研究機関、企業などにも幅広く提供される予定です。
積水化学工業は「ペロブスカイト太陽電池」の量産拠点を整備
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また、積水化学工業は、次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の量産拠点として、シャープの堺工場内の太陽電池生産棟(延べ床面積約220,000㎡)を約250億円で取得することを発表しました。総投資額は約3,145億円で、政府が半額を補助します。2027年に年産100MW分、2030年までに年産1,000MW分の生産能力を整備する計画です。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で曲げられる特性を持ち、建物の壁面など多様な場所への設置が可能であり、今後の市場拡大が期待されています。
捨てる神あれば拾う神あり
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堺工場の開設当時は、世界最先端の液晶パネル工場として期待されましたが、時代が変わり、今度は最先端のAIデータセンターや次世代太陽電池の生産拠点として再活用されることになりました。まさに「諸行無常」ですが、「捨てる神あれば拾う神あり」とも言えます。新しく導入するこれらの施設は、地域の産業構造の転換と新たな成長の原動力となることが期待されており、シャープ自身も、資産の売却を通じて経営の立て直しを図り、家電など採算性の高いブランド事業での再成長を目指しています。
AIデータセンターや次世代太陽電池は投資額が莫大なため、地域経済に与えるインパクトはかなりあります。最先端技術に携わる高度人材の受け皿としても有望です。大阪はインバウンドの取り込みで大成功を収め、BCP対策の観点から首都圏のバックアップとしてデータセンター需要の取り込みにも成功しました。今後は、これらに続く第三、第四のカードを創出して行きたいですね。