富山駅北口に「(仮称)とやまくすりミュージアム」2028年9月開業へ!北日本新聞・博報堂グループが整備運営、提案価格21.63億円


出展:北電産業株式会社

富山市が富山駅北口で計画する「(仮称)とやまくすりミュージアム」が、2028年9月の開業に向けて具体化しました。

市は2026年7月31日、整備・運営事業の優先交渉権者に、北日本新聞社を代表企業とするコンソーシアムを選定しました。構成企業は博報堂、北陸博報堂、博報堂プロダクツ、北電技術コンサルタント。提案価格は21億6,302万3,000円(税別)です。

施設はJR富山駅北口から徒歩約3分の「アーバンプレイス」3・4階に整備され、延床面積は約2,200㎡。富山のくすり300有余年の歴史を伝えるだけでなく、デジタル技術や没入型展示を取り入れ、「薬都とやま」を観光・教育・産業振興につなぐ体験型拠点を目指します。

(仮称)とやまくすりミュージアム 計画概要


項目 内容
名称 (仮称)とやまくすりミュージアム
所在地 富山県富山市牛島町18番7号
入居施設 アーバンプレイス
アクセス JR富山駅北口から徒歩約3分
整備フロア 3・4階
専用部面積 約2,200㎡
3階 約1,089㎡
4階 約1,111㎡
事業方式 PFI-RO方式
優先交渉権者 (仮称)とやまくすりミュージアム整備・運営事業受託コンソーシアム
代表企業 北日本新聞社
構成企業 博報堂、北陸博報堂、博報堂プロダクツ、北電技術コンサルタント
提案価格 21億6,302万3,000円(税別)
事業期間 2026年9月下旬予定~2038年3月31日
開業予定 2028年9月
年間来館目標 16万人
コンセプト案 Design wellness, Share happiness

富山駅北口の既存ビルを体験型施設へ転換



整備場所となるアーバンプレイスは、1996年竣工の地下3階・地上14階建て、延床面積約2万8,172㎡の複合ビルです。今回活用する3・4階には、かつて北陸電力エネルギー科学館「ワンダー・ラボ」が入居していましたが、2023年2月に閉館しました。

ミュージアムは、この既存床を改修して整備します。3階約1,089㎡、4階約1,111㎡、合計約2,200㎡を活用し、富山駅前の既存ストックを都市型集客施設へ転換するプロジェクトとなります。

3階は「過去・現在・未来」、4階は没入型デジタル体験



優先交渉権者が掲げたコンセプトは、

「Design wellness, Share happiness」
―ウェルネスをデザインし、楽しさをシェアしよう!― 
です。

3階は、富山のくすりを「過去・現在・未来」から学ぶ常設展示を中心に、多目的ラウンジやワークショップ機能を配置します。伝統的な売薬文化だけでなく、現在の製薬産業や将来のくすりまでを一連のストーリーとして見せる構成です。

4階は、映像や音響、デジタル技術を使ったイマーシブ体験が中心です。身体を動かして楽しむエリアなども設け、見ることを主体とした資料館から、参加・体験する施設への転換を図ります。

公表された内観イメージでは、木質感のある落ち着いた展示空間と、光や映像を大胆に使ったデジタル空間を組み合わせています。従来型の郷土資料館というより、「歴史展示」と「デジタル体験施設」を融合した施設になりそうです。

※パースは優先交渉権者による提案段階のイメージで、今後変更される可能性があります。

AR・VR、製薬工場見学、くすりづくりも想定



富山市の要求水準書では、AR・VR、インタラクティブ展示、ハンズオン展示など、体験性の高いコンテンツを重視しています。

具体的には、
  • AR・VRを活用した体験展示
  • 人の動きに反応するインタラクティブ展示
  • 手で触れるハンズオン展示
  • 富山のくすり文化と先端技術を組み合わせた没入型展示
  • VRによる製薬工場見学
  • 模擬的なくすりづくり
  • 実験教室
  • 子どもが身体を動かして学べる空間
などを想定しています。

市はこうした展示を、来館動機を高める「強力な集客装置」と位置付けています。主なターゲットは子どもと観光客です。オンラインでは得られない「ここでしか体験できない価値」をつくり、観光施設としての競争力を高める狙いがあります。

デジタル体験展示に約6億円を想定



この施設の性格を端的に示すのが、デジタル展示への投資規模です。

市が事業者公募前に行った積算では、設計・改修工事費約15億8,000万円のうち、改修工事費は約14億5,000万円。その中で、デジタル技術を使った体験型コンテンツなど展示・体験部分に約6億円を見込んでいました。

これは今回決定した提案価格21億6,302万3,000円の内訳ではなく、市側が事前に算出した参考額です。それでも、施設の競争力を「収蔵資料の量」ではなく、体験価値の質に置いていることが分かります。

年間16万人を目標、高校生以下は無料

 

年間来館者数の目標は16万人です。

入館料金は今後決まりますが、市の要求水準では500円程度を目安とし、上限1,000円程度。高校生以下は無料とする方針です。企画展や集客コンテンツについては別料金を設定でき、上限は2,000円程度。体験プログラムも別途有料化できます。基本営業時間は日~木曜が10時~18時、金・土曜が10時~20時。提案次第では最大9時~22時まで延長できます。要求水準書では、2028年9月9日までの運用開始が条件となっています。

当初計画は旧富山市立図書館跡地、延床3,500㎡

とやまくすりミュージアムは、当初計画から大きく姿を変えました。

2018年度の構想では、旧富山市立図書館本館跡地に、建築面積約1,500㎡、延床面積約3,500㎡、地上2階・地下を持つ新施設を整備する計画でした。

しかしPPP導入可能性調査などを進める中で、単独施設では十分な賑わい創出が難しく、民間施設との複合化や立地そのものを含めて再検討する必要があると判断されました。さらにコロナ禍後の観光需要回復や北陸新幹線の敦賀延伸など環境変化を踏まえ、整備場所を富山駅北口へ変更しました。

面積は37%縮小、立地は大幅に向上

整備面積は、当初計画の約3,500㎡から約2,200㎡へ約37%縮小しました。

一方で立地は、旧図書館跡地への新築から、北陸新幹線、在来線、路面電車が集まる富山駅北口へ大きく改善しています。

富山市は駅北立地のメリットとして、
  1. 新幹線利用者の利便性が高い
  2. 富山駅周辺の観光資源と連携できる
  3. 富山港線や富岩水上ラインと接続しやすい
  4. 駅北の大型観光バス駐車場を利用できる
  5. 床賃借により初期投資を抑え、事業費を平準化できる
ことを挙げています。

つまり今回の見直しは、単なる規模縮小ではありません。

「大きな博物館を新築する計画」から「富山駅前に高密度な体験型施設を配置する計画」への転換と見るべきでしょう。

「くすり」を富山観光の入口にする

さらに特徴的なのが、ミュージアム単体で集客を完結させない点です。

富山市は同施設を、市内に点在する薬業関連施設、大学、製薬会社などへ観光客を送り出すハブ拠点として位置付けています。

館内では関連施設の地図やモデルコース、交通情報を提供し、薬関連施設を巡るバスツアーやスタンプラリーなども提案されています。

想定される流れは、

富山駅

とやまくすりミュージアム

製薬・薬業・歴史関連施設

市内観光・飲食


です。

「富山のくすり」を一つの観光資源として再編集し、駅から市内へ人を送り出す仕組みをつくろうとしています。

「薬都とやま」を次世代向けに再編集する



富山のくすりは300有余年の歴史を持ち、配置薬を起点に製薬、印刷、包装、流通など多様な関連産業を育ててきました。一方、長い歴史を持つ地域ブランドは、若い世代や観光客にとって「名前は知っているが、体験したことはない」存在にもなりがちです。とやまくすりミュージアムが興味深いのは、その歴史を保存するだけでなく、デジタル、エンターテインメント、ウェルネス、先端創薬と結び直そうとしていることです。

富山市が掲げる基本理念は、

「富山のくすりの歴史と文化、精神を継承し、薬都の未来を市民とともに創造する」

というものです。

歴史を振り返るだけでなく、富山の薬業がどのように生まれ、現在どこまで発展し、その先に何があるのかを一つの物語として見せる。その意味で、とやまくすりミュージアムは、「薬都・富山」という都市ブランドを次世代向けに再設計するショーケースといえそうです。

2026年9月下旬には事業契約を締結し、その後、設計・改修工事へ進む予定です。

富山駅前の既存ビルを活用し、約21.6億円を投じて整備する新たな産業観光拠点。展示内容や正式名称、料金体系など、今後の具体化にも注目したいと思います。




出典

富山市「(仮称)とやまくすりミュージアム整備・運営事業 優先交渉権者の決定について」
富山市「(仮称)とやまくすりミュージアム整備・運営事業 要求水準書」
富山市「くすり関連施設について」
富山市議会「とやま市議会だより」
北日本新聞「体験型展示・遊具で集客 富山市がくすり施設の方針公表」

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