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金沢・松風閣庭園を生かした高級ホテル構想が始動 北陸放送本社跡地を活用し富裕層観光を本格化へ



北陸を代表する観光都市・金沢市の本多町で、北陸放送の本社移転に伴い、跡地約8,000㎡を活用した再開発計画が進行中です。計画の柱は、歴史的庭園「松風閣庭園」の保存とラグジュアリーホテルの誘致であり、金沢の都市ブランド向上と北陸全体の宿泊施設不足の解消を狙います。

富裕層の取り込みが鍵 観光の質向上と地域の持続性


リッツカールトン京都

世界中の観光地で課題となる「オーバーツーリズム」への対策として、量から質への転換、特に富裕層旅行者の誘致が注目されています。

日本政府観光局(JNTO)や日本政策投資銀行の調査によると、富裕層旅行者は訪日客全体の数%にすぎませんが、消費額は全体の約13%を占め、平均支出は136万〜162万円で、一般旅行者の9〜12倍に上ります。

この層を受け入れるには、宿泊機能だけでなく、スパ、ミシュラン水準の飲食、地域文化体験などを備えた国際水準のラグジュアリーホテルが必要です。金沢は伝統と現代が融合する文化資源を有しており、富裕層観光の目的地として非常に高いポテンシャルを備えています。

北陸に足りない“上質な宿” 数字で見るホテル不足の実態



DBJの2024年12月調査によると、北陸三県ではラグジュアリークラスの宿泊施設(LH)が不足しており、2030年時点で最大378室が足りなくなると見込まれています。

同地域の宿泊施設はビジネスホテルが主流で、LHに該当するのは主に高級旅館。ホテル型で国際水準の施設は極めて少数です。このままでは富裕層観光客が他地域に流出し、経済的な機会損失に繋がる可能性があります。

歴史と文化が息づく松風閣庭園 ホテルと一体で体験価値を創出

再開発予定地は、兼六園や金沢城公園、21世紀美術館に近接する好立地にあり、観光と文化の中枢エリアに位置します。敷地内には加賀藩家老・長家由来の名園「松風閣庭園」が残り、政財界の迎賓施設としての歴史も持ちます。

ホテル計画ではこの庭園の景観を保存・活用し、「文化的価値と快適性の融合」を実現。文化的体験を重視する富裕層旅行者のニーズに応える宿泊体験が提供される予定です。

高級宿の4タイプとは? 北陸に必要なホテルの姿



 

DBJでは1泊2名10万円超の宿泊施設をLHと定義し、次の4分類としています。
  • ① 5スターホテル(リッツ・カールトン等)…45㎡以上の客室と最高水準のサービス。
  • ② 4スターホテル(ヒルトン等)…30㎡以上で上質な快適性を提供。
  • ③ 高級旅館…山代温泉など和文化と現代性を融合。
  • ④ ユニーク体験型施設…町家宿、一棟貸し、宿坊など。
金沢中心部に旅館はあるものの、ホテル型のラグジュアリー施設はきわめて限定的です。松風閣庭園の再開発によって、独自性ある新たな高級宿が生まれることが期待されます。

高単価・高付加価値の宿泊施設がもたらす経済効果


紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良

高単価宿泊施設は、宿泊単価の向上だけでなく、観光・建築・飲食・交通など地域全体への経済波及効果が期待されます。地元料亭や体験型観光との連携により、地域全体の観光品質の底上げにもつながります。

北陸では市場規模の制約から、小規模・高品質な「100室未満」のホテルが最適とされており、松風閣庭園と調和するホテルはその好例となるでしょう。

金沢の未来を描く新ランドマーク 観光都市の進化がここから始まる

金沢中心部の再開発と松風閣庭園を活用したラグジュアリーホテルの整備は、地域文化の継承と観光再構築を目指す象徴的プロジェクトです。

今後、ホテルブランドの決定や保存方針の具体化、開業時期の発表などが期待されており、観光関係者の注目も高まっています。北陸観光の新しい未来は、まさにこの金沢から動き出そうとしています。

 

情報出典(参考文献)

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