京都市は2026年9月16日、京都市下京区の京都市中央市場で整備を進める「新青果棟」の1期エリアを、9月23日に稼働すると発表しました。
京都市中央市場は、産地から届いた生鮮食品を集荷し、売買・仕分けを経て、小売店や飲食店などへ送り出す京都の基幹的な食品流通拠点です。新青果棟の整備では、老朽化した施設を建て替えるとともに、温度・衛生管理、荷さばき、場内交通を一体的に改善し、青果物流の効率化と高度化を図ります。
今回稼働する1期エリアは、京都・滋賀産を中心とする「近郷野菜」の取り扱い機能が中心です。今後は2期工事を進め、2029年度の青果棟全体完成を目指します。京都駅北西、梅小路公園北側で市場を現地建て替え

京都市中央市場は、京都駅の北西、京都市下京区朱雀分木町80に位置します。JR嵯峨野線の丹波口駅と梅小路京都西駅の間、梅小路公園の北側に広がる市場で、一般消費者向けの商業施設ではなく、産地から届いた生鮮食品を小売店や飲食店などへつなぐ業務用の食品流通拠点です。

新青果棟は、市場を別の場所へ移転するのではなく、現在地で営業を続けながら段階的に建て替える再整備事業です。青果物の売買スペースや仲卸店舗、保管施設、トラックの荷さばきスペースなどを多層施設に集約し、限られた敷地を有効活用しながら、物流や作業動線の効率化を図ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 京都市下京区朱雀分木町80 |
| 構造 | 鉄骨造・地上5階 |
| 1期延床面積 | 32,904㎡ |
| 2期完成後 | 85,929㎡ |
| 1期の主な機能 | 京都・滋賀産などの「近郷野菜」 |
| 2期の主な機能 | 遠地野菜、果物など |
| 基本設計 | 安井建築設計事務所 |
| 概算工事費 | 約300億円(2022年基本設計時点) |
| 1期稼働 | 2026年9月23日 |
| 全体完成 | 2029年度予定 |
老朽化だけではない市場流通の構造変化
新青果棟の整備は、老朽施設の建て替えだけが目的ではありません。従来の市場は、売場や保管庫、冷蔵施設が複数の建物に分散しており、商品や車両の移動が多く、現在求められる温度・衛生管理や効率的な荷さばきに対応しにくい構造になっていました。
加えて、市場を介さない直接取引の拡大や食料消費量の減少など、卸売市場を取り巻く環境も変化しています。京都市中央市場の青果・水産の取扱数量は、2014年度の約30万トンから2024年度には22.8万トンへ約24%減少する一方、取扱金額は1,064億円から1,061億円とほぼ横ばいです。
新青果棟では、売場や保管、荷さばき機能を集約し、物流と品質管理を高度化します。産地から小売店・飲食店までを効率よく結び、取扱量が縮小する中でも市場の競争力を維持・強化することが狙いです。
最大の変化は「温度」と「物流」 青果流通を一体的に刷新

新青果棟の大きな特徴が、外気の影響を抑える閉鎖型施設への転換です。入荷から保管、売買、出荷まで低温環境をつなぐ「コールドチェーン」を構築し、青果物の品質低下を抑えます。京都市は、市場全体で温度管理できる卸売場の割合を2014年度の23%から100%へ引き上げる方針です。

同時に、トラックやフォークリフトなどの動線も再編します。売場面積をむやみに拡大するのではなく、荷さばきスペースや搬送経路を充実させ、分散していた機能を多層施設に集約します。
狙いは、「売場中心の市場」から「物流機能を重視した市場」への転換です。将来の自動化や設備更新にも対応しやすい施設構成としています。| 改善項目 | 新青果棟の仕組み | 主な効果 |
|---|---|---|
| 鮮度管理 | 閉鎖型施設+低温管理 | 流通途中の品質低下を抑制 |
| 荷さばき | 売場と段差のないトラック作業スペース | 積み降ろしを効率化 |
| 館内物流 | 車両用スロープ、荷物用エレベーター | 多層階への搬送を円滑化 |
| 場内交通 | 青果・水産の車両動線を分離、原則一方通行化 | 車両や作業の交錯を抑制 |
| 衛生管理 | 閉鎖型施設と運用ルールを一体化 | 異物・排気ガスなどの侵入を抑制 |
| 防災 | 耐震化、非常用電源、地下水活用 | 災害時の食品供給機能を強化 |
| 環境対応 | 太陽光発電、エネルギー管理 | 消費電力と運営負荷の抑制 |
新施設に合わせて衛生管理ルールも刷新

新青果棟では、建物や設備だけでなく、市場の運用ルールそのものも見直します。京都市は1期稼働に合わせ、市独自の衛生管理基準「京都基準」を青果部門向けに具体化した手引書の運用を始めます。
温度管理エリアでは、ガソリン車やLPガス車を使わず、電動または手動の搬送機器に限定します。事業者ごとに帽子を色分けして関係者を識別するなど、人・商品・車両の動きを含めて衛生管理を徹底します。
物流動線も切り替わります。京果は9月22日正午から、近郷野菜の搬入車両を花屋町通から進入させ、スロープ経由で新青果棟2階の荷卸しスペースへ誘導します。車両はせり場内へ直接入らず、専用スペースで商品を受け渡す運用となります。京都の「食」を支えるインフラを更新
中央市場は普段あまり意識されない施設ですが、スーパーや青果店だけでなく、京都市内の飲食店やホテルなどへの食材供給を支える重要な流通拠点です。
新青果棟の整備で店頭価格が直接下がるわけではありませんが、温度変化による品質低下や物流ロスを抑え、災害時にも食品流通を継続しやすい体制を整えることで、京都の食料供給網の安定性を高める効果が期待されます。産地にとっては品質を保ったまま出荷しやすく、仕入れ側にとっては必要な青果物を安定して調達しやすい市場となることが狙いです。

また基本設計では、市民や観光客向けの見学スペースや歩行者通路も計画されています。新水産棟の見学施設や「京の食文化ミュージアム・あじわい館」と連携し、食品流通の仕組みや京都の食文化を伝える役割も担います。なお、新青果棟の見学施設の公開時期は、今回の発表では示されていません。
1期を営業しながら2期を建設 2029年度に青果部門の再整備が完成へ

京都市中央市場では、市場を営業しながら、水産棟、関連棟、青果棟を順次更新する大規模な再整備が続いています。新青果棟も段階施工で、2026年9月23日に1期を稼働。まず京都・滋賀産を中心とする近郷野菜の流通機能を移し、その施設を使いながら2期工事を進めます。
その後、遠地野菜や果物の機能も順次移転し、2029年度には延床面積約8.6万㎡の新青果棟が完成する予定です。2022年の基本設計では2028年度完成としていましたが、最新の京都市発表では2029年度へ工程が更新されています。
今回の1期稼働は、新棟の一部が完成するだけではなく、京都市中央市場が、温度管理・物流・衛生・防災を一体化した次世代型の食品流通拠点へ移行する大きな節目となります。| 時期 | 主な動き |
|---|---|
| 2015年3月 | 市場施設整備基本計画を策定 |
| 2021年9月~2023年4月 | 新水産棟を段階的に供用 |
| 2026年1月 | 新関連棟が竣工 |
| 2026年8月 | 新青果棟2期工事に着手 |
| 2026年9月23日 | 新青果棟1期が稼働 |
| 2029年度 | 新青果棟2期が竣工予定 |
出典・参考資料
- 京都市「京都市中央市場新青果棟1期エリアオープン及び衛生管理基準手引書〈青果部〉の策定」(2026年9月16日)
供用日、施設規模、設備、衛生管理、今後の工程 - 京都市「京都市中央市場 新青果棟整備基本設計について」・新青果棟整備基本設計概要版(2022年6月)
配置、施設構成、物流計画、防災機能、環境設備、見学機能、概算工事費 - 京都市「京都市中央卸売市場事業経営戦略」・第一市場マスタープラン進捗資料
市場の取扱数量・取扱金額、事業環境、品質管理、集荷・販売戦略 - 京都中央市場青果卸売協同組合「中央市場の仕組み」「組合概要」
中央市場の役割、近郷野菜・遠地野菜の区分、市場内事業者の機能 - 京果 京都青果合同株式会社「近郷野菜の入荷車両搬入経路」
2026年9月22日からの搬入経路、新青果棟2階での荷卸し方法



