PALTAC「RDC貝塚」、349億円投じ11月着工へ 延床約4.95万㎡、SPAID比2倍を狙う次世代物流拠点



化粧品・日用品、一般用医薬品卸大手のPALTACが大阪府貝塚市で計画する「(仮称)RDC貝塚」が、2026年11月に着工する見通しとなりました。施工は大本組が担当し、建設工期は2028年7月まで。PALTACは2030年3月の稼働を予定しています。

投資総額は349億円。延床約4.95万㎡の大型施設ですが、計画の核心は倉庫の拡張ではありません。AI、ロボット、搬送設備を一体化し、物流センターで最も人手を要する「バラピッキング」の生産性を、現行の次世代モデル「SPAID」の2倍へ引き上げるプロジェクトです。

RDC貝塚の計画概要


項目 内容
名称 (仮称)RDC貝塚
建築計画名 (仮称)PALTAC RDC貝塚流通加工場
所在地 大阪府貝塚市「せんごくの杜」
敷地面積 78,113㎡
建築面積 約25,884㎡
延床面積 約49,521㎡
構造 S造3階建て
投資総額 349億円(予定)
資金計画 自己資金
施工 大本組
設計 Okamoto総合建築事務所
建設工期 2026年11月1日~2028年7月21日
稼働 2030年3月予定
環境対応 太陽光パネルの設置を前提に設計
面積と投資額はPALTAC公表値、構造・設計・工期は建設専門紙の報道に基づきます。349億円は建築工事費ではなく、PALTACが公表した投資総額で、建物や物流設備などの個別内訳は明らかにされていません。

約5万品目・年間35億個を動かすPALTAC



PALTACは、メーカーから商品を仕入れ、ドラッグストア、スーパー、コンビニなどへ供給する中間流通を担います。メーカーごとに配送するのではなく、複数社の商品を物流センターに集約し、店舗別の注文に組み直して一括配送することで、流通全体を効率化しています。
PALTACの事業規模 2026年3月末時点
取引メーカー 約1,000社
取引小売業 約400社
取り扱い品目 約50,000品目
年間出荷数量 約35億個
主要物流拠点 19拠点
RDCはRegional Distribution Center=地域物流センターの略です。約5万品目の販売計画や実績をデータ化し、メーカーから小売店までをつなぐPALTACの物流網の中核を担います。(パルタック)

「バラピッキング」がなぜ重要なのか



 

日用品物流では、メーカーから段ボール箱単位で入荷した商品を、小売店の注文に合わせて1個単位で取り出し、店舗別に詰め直す必要があります。この作業が「バラピッキング」です。
用語 意味
バラピッキング ケースから商品を1個単位で取り出し、店舗別に仕分ける作業
マテハン 自動倉庫、コンベヤー、仕分け機、搬送ロボットなど、庫内で商品を運搬・保管する設備の総称
SPAID AIやロボティクスを組み合わせたPALTACの次世代物流モデル
AMR 人や障害物を避けながら自律走行する搬送ロボット
バラピッキングは、PALTACの物流センター作業の約6割を占めます。商品数が増え、注文が少量化するほど作業は複雑になるため、ここを効率化できるかが物流センター全体の処理能力を左右します。

「人が商品を探す」物流から「商品が人の前に来る」物流へ



PALTACは1998年に稼働したRDC近畿から、独自物流モデル「SPIEC」を改良してきました。2018年のRDC新潟からはAIやロボットを融合した「SPAID」を導入。RDC貝塚では、そのSPAIDをさらに進化させます。
物流モデル 作業方式 バラピック生産性
SPIEC1998年~ 作業者がカートを押し、棚を歩いて商品を探す 基準
SPAID2018年~ 商品を自動搬送し、作業者は移動せずにピッキング SPIEC比約2倍
RDC貝塚の新モデル AI、ロボット、マテハン制御を高度化 SPAID比2倍を目標
単純計算では、RDC貝塚が目指す水準はSPIECの約4倍に相当します。ただし、設備構成や生産性の測定条件が同一とは限らないため、あくまで目標値を重ねた概算です。(パルタック)

一部工程は早朝・夜間の完全自動化へ



RDC貝塚では、バラピッキングの高速化だけでなく、物流センター全体を自動化前提で設計します。
導入方針 目指す姿
AI・ロボティクス 商品量や作業状況に応じて設備を最適制御
マテハン管理の刷新 搬送・保管・仕分け設備を一体運用
自動化率の向上 一部工程で早朝・夜間の完全自動化に挑戦
仮想空間での設計 稼働前に物流動線や処理能力をシミュレーション
作業環境の改善 歩行、探索、重量物運搬など人の負担を軽減
長期利用・環境対応 将来の変更を見据え、太陽光パネルも設置
PALTACが掲げるのは、人員を単純に減らす施設ではなく、安定性、生産性、「人にやさしい」作業環境の同時実現です。人は歩行や運搬から離れ、設備管理、判断、改善といった業務に重点を移します。

なぜ今、349億円を投じるのか



背景には、物流を取り巻く三つの構造変化があります。
構造変化 物流現場への影響 RDC貝塚の対応
労働人口の減少 必要な作業員を確保しにくい 自動化・省人化を拡大
多品種・少量化 商品数と仕分けパターンが増える バラピックを高速・高精度化
資材価格の上昇 建設・設備投資の採算が悪化 仮想空間で事前検証し、長期利用を前提に設計
ドラッグストアの商品は、容量、香り、詰め替え用、限定品などに細分化しています。商品数が増える一方、1店舗当たりの注文数量は少なくなるため、出荷数量が同じでも物流作業は複雑になります。

従来の「物量が増えれば人員を増やす」方式では、2030年代の安定供給を維持できません。RDC貝塚は、設備・データ・ロボットによって処理能力を高める物流への転換を具体化する施設です。

2019年の土地契約から7年、ようやく着工へ



建設地は、貝塚市が千石荘病院跡地などで整備する「せんごくの杜」の産業・流通エリアです。同エリアは約9.3haあり、PALTACの敷地約7.8haが大部分を占めます。
時期 計画の動き
2019年1月 大本組・PALTACグループを優先交渉権者に選定
2019年2月 貝塚市とPALTACが土地売買契約
当初計画 2025年度操業予定
2025年 物流コンセプトと基本設計を策定
2026年4月 投資総額349億円、2030年3月稼働を決定
2026年8月 大本組施工、11月着工が具体化
2028年7月 建設工期終了予定
2029年度 泉州山手線が暫定供用開始予定
2030年3月 RDC貝塚稼働予定
当初の2025年度操業から約4年後ろ倒しされましたが、PALTACはその間に物流コンセプト、技術開発、基本設計を進めました。今回、施工者と工期が固まったことで、計画は構想段階から実施設の建設段階へ移ります。(貝塚市ホームページ)

二つの高速道路と泉州山手線が物流を支える



せんごくの杜周辺は、阪和自動車道・貝塚ICまで約5分、阪神高速湾岸線・貝塚ICまで約10分。東西二つの高速道路を使い分けられる立地です。

さらに都市計画道路・泉州山手線は、2029年度の暫定供用開始が予定されています。RDC貝塚の稼働は2030年3月で、物流拠点とアクセス道路が同じ2029年度に大きな節目を迎えます。

建設完了から稼働まで約1年8カ月

建設工期の終了は2028年7月、稼働は2030年3月で、約1年8カ月の間隔があります。具体的な工程は公表されていませんが、高度な自動倉庫、搬送設備、ロボット、制御システムを組み合わせる施設だけに、建物完成後も設備構築、連動試験、運用検証、立ち上げ準備に時間を充てる工程とみられます。(BigGo ファイナンス)

349億円で造るのは「倉庫」ではなく物流の新しい生産設備



RDC貝塚は、延床約4.95万㎡の巨大倉庫を新設するだけの計画ではありません。

メーカーからケース単位で届く約5万品目を、小売店ごとの注文に合わせて1個単位で組み替える。その最も労働集約的な工程を、AI、ロボット、マテハン、データで再設計します。

PALTACが349億円を投じて造るのは、商品を保管する箱ではなく、少ない人員で大量の商品を安定供給する「2030年代の物流エンジン」です。




出典

  • PALTAC「新物流センター建設(固定資産の取得)に関するお知らせ」2026年4月27日
  • PALTAC「次世代型物流システム SPAID」
  • PALTAC「PALTAC INTEGRATED REPORT」
  • PALTAC「業界をリードする生産性ダントツNo.1の物流モデル構築」
  • 貝塚市「せんごくの杜」
  • 貝塚市「産業・流通エリア」
  • 貝塚市「都市計画道路・泉州山手線」
  • 貝塚市「令和8年度市政運営方針」
  • 貝塚市議会関連資料
  • 建設通信新聞
  • 建産トピックス
  • LNEWS

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