加賀百万石の「1M(ひゃくまん)系」 北陸鉄道・石川線に新造車12両、再生の象徴へ



北陸鉄道は2026年7月13日、石川線(白山ジオパークライン)に導入する新造車両の形式名を、「1M(ひゃくまん)系」に決めたと発表しました。2027年度から、2両編成6本、計12両を順次導入します。

「1M」のMは、英語のMillion、すなわち100万を意味します。加賀百万石の歴史と、石川県の総人口が約100万人であることを重ねた、地域色の強いネーミングです。

目を引くのは「ひゃくまん系」という名前ですが、今回の発表には、それ以上に大きな意味があります。

北陸鉄道が他社の中古車ではなく、完全新造車を一挙に6編成導入すること。存廃問題を乗り越えた石川線が、公共支援を受けながら本格的な再生に乗り出すこと。そして、6色の新型車両を通じて、石川線を地域資源、観光資源として発信しようとしていることです。

「1M」と書いて「ひゃくまん系」



鉄道車両の形式名は、数字を組み合わせた事務的な名称になることが少なくありません。その点、「1M」を「ひゃくまん」と読ませる今回の名称は異例です。

加賀百万石という土地の歴史を端的に表しながら、一度聞けば覚えやすい。形式名そのものが、新型車両の愛称やキャッチコピーの役割を果たしています。

発表後のXでも、「1Mを“ひゃくまん”と読むのか」「名前のインパクトが強い」といった反応が見られました。車両に詳しくない人にも意味が伝わりやすく、地域外への発信力も期待できる名前です。

中古車ではなく、完全新造車を6編成

 

1M系は、総合車両製作所が製造するステンレス車両です。
項目 内容
車両形式 1M(ひゃくまん)系
導入時期 2027年度から
導入数 2両編成×6編成、計12両
製造会社 総合車両製作所
車体材質 ステンレス鋼
車両寸法 全長18,500ミリ、全幅2,764ミリ、全高4,025ミリ
定員 1両117人(座席35人、立席82人)
石川線ではこれまで、他社で使われていた車両を譲り受けて運行してきました。1M系は、こうした中古車ではなく、石川線のために新たに製造される車両です。

地方私鉄が2両編成6本、計12両をまとめて導入するのは、大規模な車両更新といえます。

消費電力を約60%削減

1M系では、省エネルギー型の制御方式を採用し、従来車両に比べて消費電力を約60%削減できる見込みです。

出入口付近には優先席とフリースペースを設け、車いすやベビーカーを利用する乗客が乗り降りしやすい配置とします。車内には視認性の高いデジタル案内表示器を設置し、現在地や路線図、沿線情報などを表示します。

単に古い車両を新しくするだけではなく、省エネルギー化、バリアフリー化、案内サービスの充実を一体で進める計画です。

6編成を彩る「加賀五彩+北鉄オレンジ」



外観デザインは、ウェブと有人駅で行われた一般投票によって選ばれました。採用されたのは、デザイン案2の「空に始まり、海へ続く」。白山連峰から手取川、日本海へと続く沿線の自然を、加賀水引をモチーフにした横方向のストライプで表現しています。
デザイン案 得票数
加賀百万石の地 983票
空に始まり、海へ続く 1,658票
街を熱する飛ぶ力 957票
合計 3,598票
採用案は全3,598票のうち1,658票を獲得し、ほかの2案を大きく上回りました。

車両の前面は、白山比咩神社や白山手取川ジオパークの扇状地をイメージした形状です。車体の色は、加賀五彩の「藍、臙脂、黄土、草、古代紫」に「北鉄オレンジ」を加えた6色。6編成が、それぞれ異なる色をまといます。

通勤・通学で利用する人にとっては、「今日は何色の車両が来るのか」という楽しみが生まれます。観光客にとっても、乗車や撮影の目的になりやすく、車両そのものが沿線の魅力を伝える存在になりそうです。

車内は白山比咩神社をイメージ



内装にも、沿線の歴史や文化が取り入れられます。車内は、白山比咩神社の幣拝殿をイメージした、落ち着きのあるデザインです。座席は、巫女装束などから着想を得た臙脂色を基調とし、床には拝殿内の床板を思わせる木目柄を採用します。

側壁は神聖さを表す白、車両端部の壁は浄化や静寂を表す黒でまとめます。車両のコンセプトは、「結美―Musu-Bi―」。沿線の美しい人、まち、自然、文化を結ぶという思いが込められています。形式名から外観、編成ごとの色、内装まで、一つの物語で統一されている点が1M系の特徴です。

廃線やBRT転換も検討された石川線



1M系の導入には、石川線が存廃問題を乗り越えたという背景があります。

石川線は、利用者の減少や車両、施設の老朽化によって、北陸鉄道だけで維持することが難しくなり、廃線やBRTへの転換も検討されました。

しかし沿線自治体は2023年8月、バス運転士不足や道路混雑、鉄道の輸送力などを踏まえ、鉄道として存続させる方針を決めました。

現在は、北陸鉄道が車両や施設を保有して運行を続ける一方、国、石川県、沿線自治体が施設更新や維持管理を支援する「みなし上下分離方式」によって、石川線と浅野川線の再構築が進められています。
主な施策 内容
車両更新 石川線に1M系6編成を導入
施設改良 レール、道床、駅設備などを更新
利便性向上 キャッシュレス決済や案内設備を充実
利用促進 増便、パーク・アンド・ライド、沿線観光との連携
1M系は、単なる老朽車両の置き換えではありません。石川線を鉄道として残すと決めた地域が、車両、設備、サービスを一体で立て直す再生事業の中核に位置付けられています。

石川線再生の象徴へ



もちろん、新車を導入するだけで利用者が増えるわけではありません。運行本数やバスとの接続、駅へのアクセス、決済手段、沿線施設との連携まで改善し、日常の使いやすさと観光需要の双方につなげられるかが今後の課題です。

それでも、廃線やBRT転換まで議論された路線に、完全新造車が6編成投入される意味は小さくありません。

「1M」と書いて「ひゃくまん系」。

加賀百万石の歴史を背負い、6色で沿線を走る1M系は、石川線が「残された鉄道」から、地域全体で価値を高め、育てていく鉄道へと変わる象徴になりそうです。




出典元

  • 北陸鉄道「石川線(白山ジオパークライン)新造車両『1M(ひゃくまん)系』デザイン決定」
  • 石川中央都市圏地域公共交通協議会「北陸鉄道線を中心とした広域公共交通ネットワーク再生戦略(案)」
  • 国土交通省北陸信越運輸局「北陸鉄道線の鉄道再構築実施計画の認定について」
  • タビリス「北陸鉄道再構築計画の概要。石川線に新車6編成を導入」
  • 4号車の5号車寄り「北陸鉄道向けの新型車両が発表」
  • Hokuriku Express|北陸エクスプレス(X)「石川線 新造車両『1M系』デザイン決定!」

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