観光庁が2025年9月30日に公表した「宿泊旅行統計調査」によりますと、7月・8月ともに全国の延べ宿泊者数は堅調に推移しました。夏休みシーズンの底堅い需要が確認される一方、外国人宿泊は地域ごとに明暗が分かれ、酷暑や情報環境の影響も見え隠れしています。
7月:外国人宿泊が減少、日本人需要は堅調
2025年7月の延べ宿泊者数は5,575万人泊(前年比-2.6%)でした。
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日本人:4,177万人泊(-2.0%)
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外国人:1,398万人泊(-4.2%)
客室稼働率は全国平均で61.4%と、6割を上回る水準を維持しました。タイプ別ではビジネスホテルが74.7%、シティホテルが71.6%と都市型施設で高稼働を記録しました。
地域別では大阪府が稼働率75.2%で全国トップとなりました。外国人宿泊は1,935,160人泊(前年比▲20.0%)とデマの影響を受け大幅に減少しましたが、国内宿泊需要が力強く押し上げました。その背景には、大阪・関西万博の開催効果があります。7月は万博開幕から3か月が経過し、夏休みシーズンに突入しました。国内外からの来場者が大阪市内のホテルを中心に宿泊し、ビジネスホテルやシティホテルの稼働率を大きく押し上げました。万博は「長期滞在+観光」の需要も呼び込み、結果的に大阪を全国トップに押し上げる原動力となりました。
京都府は1,508,940人泊(+1.1%)と微増にとどまりましたが、依然として関西観光の中核を担っています。兵庫県+25.1%、奈良県+45.6%と周辺府県も伸びを示し、関西圏全体の底力が示されました。
一方で東京都は。安定したビジネス需要を反映し4,606,390人泊(▲6.6%)と首位を維持しつつ減少しました。千葉・神奈川・埼玉を合わせた1都3県合計は約547万人泊でしました。
8月:夏休み需要でプラス転換
2025年8月の延べ宿泊者数は6,682万人泊(前年比+0.8%)とプラスに転じました。
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日本人:5,329万人泊(+0.7%)
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外国人:1,353万人泊(+1.4%)
客室稼働率は全国平均で65.9%へ上昇しました。リゾートホテル67.5%、ビジネスホテル76.8%、シティホテル75.4%と、夏季需要を背景に高い利用率を記録しました。
沖縄県は外国人宿泊が+20.9%と好調でした。北海道も+20.0%と大きく伸び、地方部のシェアは32.5%まで拡大しました。訪日外国人が大都市から地方へと広がる動きが続いています。
酷暑と情報環境が需要を左右
7月以降、日本列島は記録的な酷暑に見舞われました。特に湿度が高い日本の夏は、乾燥した気候の都市に比べ体感的に「より暑く感じる」と指摘されており、外国人旅行者にとっては敬遠材料となりました。SNS上では「日本の夏は危険」「旅行は秋以降が望ましい」といった投稿が拡散され、実際の旅行判断に影響を与えた可能性があります。
さらに、大分県では「大災害に関するデマ」が広がり、佐藤知事が外国人宿泊客の減少要因として言及しました。情報の真偽にかかわらず、SNSや口コミを通じた不確かな情報が一部地域で旅行需要を抑制する事例が表面化しています。
国籍別の動向
7月の外国人宿泊では、中国(318万人泊、+3.7%)、台湾(167万人泊、▲4.1%)、米国(139万人泊、+12.1%)、韓国(116万人泊、▲24.7%)、香港(40万人泊、▲49.0%)が上位を占めました。
特に韓国・香港からの需要が大きく落ち込む一方で、米国や欧州、インドなどからの伸びが目立ちました。
展望と課題
7月は酷暑やデマの影響もあり訪日需要がマイナスに転じましたが、8月は夏休み効果で全体が持ち直しました。都市圏では東京が依然として突出していますが、関西圏の大阪(193万人泊)と京都(151万人泊)を中心に、兵庫・奈良を加えた合計は約365万人泊に達し、東京圏に次ぐ規模を維持しています。
今後は、気候変動がもたらす酷暑対策や、SNS時代における情報リテラシーの向上が観光需要の安定化に不可欠です。訪日需要の東アジア依存からの脱却、多様な市場開拓とともに、旅行環境の安心・安全をめぐる課題は一層の注目を集めそうです。
関西圏の大阪(193万人泊)と京都(151万人泊)兵庫・奈良を加えた合計は約365万人
なんと兵庫奈良の少ないこと。。。
逆に伸びしろしかない?