愛知県がIR誘致の再検討を開始! セントレア(中部空港島)を想定、2027年申請視視野

愛知県は2026年2月12日、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致について、改めて検討を開始すると発表しました。想定区域は、常滑市の中部国際空港(セントレア)島です。県は今後、関心を持つ民間事業者から意見や事業提案を募り、実現可能性を精査したうえで、国への区域認定申請を行うかどうかを判断するとしています。

国はIR整備法に基づき、全国で最大3カ所までIR区域を認定できる制度を設けていますが、現在認定されているのは大阪府・市の計画のみです。愛知県が申請に踏み切れば、2カ所目の認定候補として注目されることになります。

近く、大村知事が記者会見を行い、県の方針を正式に説明する見通しです。

IR申請は2027年、今は「申請前の見極め段階」

日本版IR(カジノを含む統合型リゾート)残り2枠、2027年に再公募へ。露わになる制度の本音 地方創生と首都圏集中の分岐点


観光庁は、IR整備区域の追加選定について、2027年5月6日から11月5日まで自治体からの申請を受け付ける方針を示しています。政府は2026年2月中にも、関連する政令改正を閣議決定する方向で検討しています。

今回の愛知県の動きは、直ちに国へ申請するものではありません。民間事業者の関心度や事業モデル、投資規模、採算性などを見極めるための事前検討フェーズに位置づけられます。

6年前に行われていた事業可能性検討


今回の再検討は、突然浮上した構想ではありません。愛知県はすでに2019年12月から2020年5月にかけて、「特定複合観光施設(IR)区域整備の事業可能性」に関する事業者向け意見募集を実施しています。

当時の検討概要は次の通りです。


  • 想定区域:中部国際空港島の県有地等 約50ha

  • 参加事業者


    • IRの整備・運営主体に関心を持つ法人:4者

    • 関連ノウハウを有する法人:9者

    • 合計13者

  • 検討項目
    基本コンセプト、市場分析、施設計画、事業計画、事業効果、懸念事項対策など

現在の再検討は、当時まとめられた構想を、制度確定後・アフターコロナ環境で改めて検証し直す動きと位置づけられます。

空港直結型IRという一貫した構想、富裕層・MICE・Bleisureを軸に


当時、事業者から示された基本コンセプトは一貫しています。


  • 国際空港直結という立地優位性

  • プライベートジェット受け入れによる富裕層需要の取り込み

  • MICE(国際会議・展示会)と観光・娯楽を組み合わせたBleisure(Business+Leisure)の推進

  • 愛知のものづくり文化と先端技術を融合した「未来都市型IR」

愛知の経済規模と人口集積、事業者が見込んだ市場ポテンシャル

市場分析では、愛知県が製造品出荷額等で全国1位、都道府県別GDPでも大阪府と2位・3位を争う経済規模を持つことが評価されました。
また、名古屋駅90分圏に約1,400万人の人口集積がある点や、リニア中央新幹線開業後に2時間圏人口が国内最大規模になる点も強みとされています。

これらの条件を踏まえ、一定規模の来訪者数や収益が見込めると分析されていました。

既存インフラを活用する現実的な計画


施設計画では、以下のような構想が示されていました。


  • **愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo、展示面積約6万㎡)**をIRのMICE機能に組み込む

  • IR整備法で求められるホテル延べ床面積10万㎡以上を満たすため、
    1,700~2,500室規模の複数ホテルを整備

  • 劇場、アリーナ、商業施設、ウェルネス施設などを段階的に整備

対象地の多くが県有地であるため、用地確保が比較的容易である点も利点とされています。

事前に洗い出されていた課題

一方で、当時の資料では次のような課題も整理されていました。


  • 空港島は航空法による高さ制限が厳しく、高層建築が困難

  • 空港島と本土を結ぶセントレア大橋が1本のみで、交通容量や災害時の脆弱性に懸念

  • 日本人入場規制(マイナンバーカード、入場料6,000円)が需要に与える影響

  • 巨額投資に伴う資金調達と採算性の確保

これらは、今回の再検討においても引き続き主要な論点となります。

大阪IRとの違い、「都市型」ではなく「空港ハブ型」


建設工事が進むMGM大阪(大阪IR)

現在、国内で唯一認定されているのは大阪IR(夢洲)です。大阪IRが都市近接型・都市再開発連動型であるのに対し、愛知県が想定するIRは、


  • 国際空港機能と直結

  • 既存の空港・展示場インフラを活用

  • 都市再開発というより、国際交流・観光ハブ機能の拡張

という性格を持ちます。同じIRでも、役割や立ち位置は大きく異なります。

製造業好調の陰で進む構造変化


危機感が共有されにくい名古屋


都市構造の観点で見ると、今回のIR再検討は、名古屋・愛知が抱える中長期的な構造変化とも関係しています。トヨタ自動車を中心とする製造業が堅調であるため、短期的には大きな危機が表面化していません。しかし、その安定があるからこそ、静かに進行する構造変化に気づきにくい状況があります。

名鉄名古屋駅再開発の延期や金山駅周辺再開発の順延、インバウンド需要の伸びの鈍さ、リニア開業後の東京・品川への業務中枢機能流出懸念などは、単独では致命的ではありませんが、中長期で重なった場合、都市の競争力に影響を及ぼす可能性があります。

IRは万能策ではない


IR誘致は、すべての課題を解決する万能策ではありません。しかし、


  • 国際MICE機能の強化

  • 富裕層・高付加価値観光の取り込み

  • 空港機能の滞在拠点化

といった効果を通じて、都市の競争力を底上げする可能性があります。

IRという新しい取り組みに対する理解が進むかどうかは、現状の延長線で十分なのか、変化が必要なのかという認識を、どこまで多くの人が共有できるかにかかっていると考えられます。

再検討段階に入った愛知IR


今後の焦点は事業者の本気度

今回の愛知県の動きは、拙速な誘致表明ではありません。6年前に整理された構想を、制度が整い、申請スケジュールが明確になった現在の環境で、改めて検証し直す取り組みです。今後の焦点は、グローバルIR事業者がどこまで関心を示すのか、そして空港島という立地特性を踏まえた現実的で持続可能な事業モデルを描けるかにあります。

愛知IRは、静かに、しかし着実に再検討段階へ入りました。






出典・参考資料

  • 毎日新聞「愛知県がIR誘致の方針 知事が会見へ」(2026年2月12日)

  • 中日新聞「愛知県がIR誘致の検討再開、事業案募集へ」(2026年2月12日)

  • 愛知県
    「特定複合観光施設区域整備の事業可能性の検討に係る意見募集 結果概要」(2019~2020年)

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