五條市『(仮称)市民交流施設整備事業』旧イオン五條店跡地で市民交流施設を整備 小規模自治体とイオンが連携する公共施設更新モデル

奈良県五條市では、旧イオン五條店跡地および周辺敷地を活用し、(仮称)市民交流施設整備事業を進めています。図書館を中心とした公共複合施設と、イオンリテールによる商業施設を一体的に整備し、中心市街地の再生と日常的なにぎわいの創出を目指す計画です。施設の開館は2029年度初旬を予定しています。

1.何をする事業なのか?(事業概要)

本事業では、次の二つを同一エリアで一体的に整備します。


  • 図書館を核とした公共複合施設(市民交流施設)

  • イオンリテールによる新たな商業施設

公共施設と商業施設を隣接配置し、来訪・滞在・回遊が自然につながる拠点形成を図ります。

2.なぜ再整備が必要だったのか(背景)

五條市の中心市街地では、以下の課題が重なってきました。


  • 公共施設の老朽化

  • 人口減少・少子高齢化の進行

  • 商業施設や個店の閉店・撤退

  • イオン五條店の老朽化および解体

  • 市民が日常的に集い、滞在できる場の不足

この結果、中心市街地は「用事がなければ訪れない場所」となり、公共施設を単独で更新しても人の流れが戻りにくい状況が続いていました。

3.事業の目的

本事業の目的は、老朽化した公共施設を建て替えること自体ではありません。

五條市は、


  • 公共施設の更新

  • 中心市街地の再生

  • 日常的な利用の創出

同時に進めることを明確に掲げています。

図書館を中心に、学習・子育て・交流・滞在機能を重ねることで、中心市街地に日常的な生活拠点を再構築する狙いです。

4.どこに、どのように配置するのか

事業用地の総面積は約19,500㎡です。


  • イオンリテール所有地:約11,600㎡
     商業施設を整備

  • 奈良交通所有地:約5,800㎡
     市が取得し公共施設を整備

  • 周辺民間所有地:約2,100㎡
     一部を市が取得し、駐車場として活用

公共施設と商業施設は隣接配置され、敷地内で完結せず、相互に行き来しやすい計画とされています。

5.公共施設の中身


市民交流施設のコンセプトは、「図書を中心につながる × 出会い、発見、創造が生まれる場所」です。


主な機能(延床面積:約3,700㎡)

  • 図書館(カフェ・学習エリア含む):約2,300㎡

  • 子育て支援機能(一時預かり、児童書コーナー等):約500㎡

  • 多目的ホール:約600㎡

  • 子どもの遊び場:約300㎡

商業施設と接続する**共用スペース(コネクトサロン)では、閲覧、イートイン、イベントなど多用途での利用が想定されています。

6.事業スキーム


本事業は、市単独ではなく、公民連携(PPP)で進められています。


連携主体

  • イオンリテール

  • 奈良交通

  • 南都銀行

  • 五條市

スキームの特徴

  • 商業施設と公共施設を一体的に計画

  • 設計業務はイオンリテールが一括発注

  • 市は公共施設部分の整備費を負担

  • 図書館総合研究所・TRCが設計段階から運営視点で関与

完成後ではなく、設計段階から運営を想定している点が特徴です。

7.市民参加の位置づけ

計画段階では、市民参加が重視されてきました。


  • ワークショップ:計11回

  • 参加者:延べ162人(市民・学生)

  • 小学校・中学校・高校での説明・意見交換

施設は「行政が与える場」ではなく、
市民が使い、関わり続ける場として位置づけられています。

8.小規模自治体が生き残るためのケーススタディ

この事業は、人口減少・財政制約下にある小規模自治体が公共施設を更新するためのケーススタディと位置づけられます。


  • 公共単独では更新・運営が難しい

  • 生活動線はすでに大型商業施設に集約

  • 維持可能な規模と利用頻度が求められる

こうした前提を踏まえ、
民間の集客力を前提に公共機能を再設計するという選択が取られています。

9.イオンにとってのパイロットケース

一方で本事業は、イオン側にとっても意味を持ちます。

地方では今後、


  • 商業単独での集客維持が難しくなる

  • 人口減少下で新規出店のリスクが高まる

  • 「買い物」以外の来訪理由が必要になる

という課題が想定されます。

五條市の事例では、公共施設が日常的な来訪理由と滞在機能を補完する構造が試されています。そのため本件は、今後の地方案件に対するパイロットケースとして位置づけられている可能性があります。

10.今後のスケジュール

※令和7年11月時点の計画


  • 2025年度:基本計画・基本設計

  • 2026年度:実施設計・開発工事

  • 2027~2028年度:建築工事

  • 2029年度初旬:施設オープン予定

11.まとめ

(仮称)市民交流施設整備事業は、公共施設更新と中心市街地再生を同時に進めるための、現実的な公民連携モデルです。五條市にとっては生き残りをかけた政策判断であり、イオンにとっては地方戦略を検証する実証的な取り組みといえます。評価が定まるのは開館後ですが、今後の地方政策を考えるうえで参照される可能性の高い事例です。






出典・参考資料

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