星野リゾートは、温泉旅館ブランド「界」の新施設「界 蔵王」を、2026年10月15日に開業すると正式発表しました。場所は山形県山形市の蔵王温泉で、予約受付は2026年4月22日に開始しています。施設コンセプトは「御釜で整う、温泉スパイラル」。蔵王の象徴である御釜をモチーフにしたルーフトップテラスを核に、温泉、サウナ、ジャグジーを巡りながら心身を整える、新しいウェルネス型温泉旅館として打ち出しました。
歴史ある蔵王温泉に対し、現代的な設計性とブランド編集力を持ち込み、通年で高付加価値の滞在を成立させる案件として注目されます。
「御釜で整う、温泉スパイラル」を体現する回遊型ウェルネス空間

界 蔵王の最大の特徴は、館内に整備される回遊型のウェルネスエリアです。強酸性の名湯を濃度別の浴槽で楽しめる温泉に加え、サウナ、水風呂、内気浴スペース、ラウンジを巡りながら、段階的に心身を整える構成が採用されます。
その頂点に位置づけられるのが、御釜をモチーフにしたルーフトップテラスです。360度の景観を楽しめる天空のテラスにジャグジーを設け、蔵王の絶景とともに“整い”を完成させる空間としました。
この「巡る」体験は、古来より山岳信仰の地であった蔵王の歴史とも重ねられています。山を登りながら身を清めていく感覚を、建築と温浴体験に翻訳したのが「温泉スパイラル」です。露天風呂やサウナを備えた宿にとどまらず、建築、物語、身体体験を一体で商品化している点が、この施設の核と言えます。
全49室を「くれないモダンの間」として整備

客室は全49室。すべてがご当地部屋「くれないモダンの間」として整備されます。テーマカラーには山形を象徴する紅花を採用し、紅花和紙や山形緞通、天童木工に特注したオリジナル家具などを取り入れた空間構成としています。
全室に大きなパノラマビューの窓を設けており、蔵王の四季の風景を客室から楽しめる点も特徴です。界ブランドが各地で展開してきた「ご当地部屋」の文脈を踏まえつつ、山形らしさを色彩、素材、家具にまで落とし込んだ設計となっています。
食は「べにばな山彩会席」。温泉旅館の体験を食まで一体化

食事は、紅花文化や山形の山の食材に着想を得た「べにばな山彩会席」を提供します。朱塗りの器が印象的な「宝楽盛り」、セリや山菜、山伏茸、花弁茸など5種のきのこと鴨を味わう「月山鍋」、そして紅花と洋ナシのパンナコッタまで、土地の食文化を界らしく再編集した献立です。
単に郷土色を打ち出すだけでなく、「体をいたわり、美しく整う」という施設全体のテーマに料理も接続している点がポイントです。温泉、空間、食を一つのウェルネス体験として束ねています。
勝ち筋は「高級宿の初進出」ではなく、蔵王の再編集にある

ここで重要なのは、蔵王温泉に高級宿がなかったわけではないという点です。蔵王温泉には以前から老舗旅館や上質な温泉宿があり、湯治、スキー、避暑地として独自の宿泊文化を築いてきました。つまり、界 蔵王の勝ち筋は、「蔵王に初めて高級宿を持ち込む」ことではありません。
本質は、既存の老舗湯治・スキー温泉地に対して、現代的なウェルネス、設計性、全国ブランド力、通年集客の商品を上乗せすることにあります。
星野リゾートが掲げる御釜モチーフのルーフトップテラスや「温泉スパイラル」は、蔵王の自然を単に“見る観光地”として消費するのではなく、“高単価で滞在する体験”へ再編集する戦略と読めます。スキーシーズン中心の山岳観光に、四季を通じたウェルネス滞在という新しい軸を加えるわけです。
言い換えれば、高級宿はあった。だが、山形・蔵王温泉における「全国区の富裕層向け新世代ラグジュアリー温泉旅館」というポジションは、まだ空いていた。界 蔵王は、その空白を狙った案件と見るのが自然です。
観光活性化ファンド第3号案件としても注目

界 蔵王は、「星野リゾート観光活性化ファンド」第3号案件でもあります。このファンドは、星野リゾートとリサ・パートナーズが2020年10月に組成したもので、国内の優良観光地に投資し、日本の観光・宿泊産業の成長に貢献することを目指すものです。
界 蔵王は、界 奥飛騨、界 秋保に続く案件として位置づけられています。既存観光地に対し、ブランドと運営力を通じて新しい需要を付加していく、星野リゾートの投資・再生モデルの一環としても理解できます。
蔵王温泉の価値を、冬の名湯から通年型ウェルネス拠点へ
蔵王といえば、樹氷やスキー、そして強酸性の名湯で知られる全国有数の温泉地です。界 蔵王は、その既存価値を否定するのではなく、そこに新しい文脈を重ねています。
山岳信仰の歴史、御釜という象徴的景観、紅花文化、山形の手しごと、強酸性泉の個性。これらを個別に見せるのではなく、一つの滞在体験へ束ねることで、蔵王温泉の価値を再定義する。それがこの計画の本質でしょう。
蔵王にとって界 蔵王は、宿が1軒増えるという話にとどまりません。温泉地としての歴史と自然資源を、現代の富裕層市場に通用する商品へどう翻訳するか。その問いに対する、星野リゾートなりの回答がこの施設だと言えます。
施設概要
施設名:界 蔵王
客室数:49室
料金:31,000円~(2名1室利用時1名あたり、税・サービス料込、夕朝食付)
付帯施設:フロント、大浴場、食事処、ルーフトップテラス、ショップ等
敷地面積:6,320.03㎡
建築面積:1,212.53㎡
延床面積:6,127.29㎡
開業日:2026年10月15日
予約開始:2026年4月22日
建築基本設計・デザイン監修:神谷修平+カミヤアーキテクツ
ランドスケープ設計:株式会社オリザ
実施設計・監理:浅井謙建築研究所株式会社
施工:株式会社市村工務店
出典元
- 星野リゾート「界 蔵王」正式発表資料
- 星野リゾート「界」ブランド案内


