鹿児島県は2026年2月18日、鹿児島港本港区に計画する新総合体育館の設計業務公募について、二次審査に進んだ5者の中から、梓設計・SUEP・東条設計共同企業体(JV)を最優秀提案者に選定したと発表しました。県は今後、設計内容について協議を行い、2026年3月末までに設計業務委託契約を締結する予定です。
今回の選定では、象徴性よりも運営のしやすさや建設・維持コストへの配慮が重視されており、地方都市における大型公共施設整備の判断軸を示す事例といえます。
1.事業概要とスケジュール
新総合体育館は、老朽化した既存体育施設の更新に加え、鹿児島港本港区の再編と連動した都市基盤整備の一環として計画されています。
基本・実施設計業務は、契約締結日から2028年7月末までを予定しており、主な業務内容は以下の通りです。
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試掘、測量、地質調査
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基本設計・実施設計
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パース図作成
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概算および詳細建設費の算定
設計業務の契約限度額は8億5977万円とされています。
2.最優秀提案の構成と評価ポイント

最優秀案の最大の特徴は、メインアリーナとサブアリーナを一体の大屋根でつなぎ、フラットに配置している点です。
設計審査会では、
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主催者・運営者にとって動線が整理され、大会運営やイベント対応がしやすい
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共用部面積を抑え、建設費や維持管理費の抑制につながる
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つり構造を用いた屋根構造により、軽量化と構造合理性を両立
している点が高く評価されました。外観についても、「伸びやかで魅力的」とされ、鹿児島を象徴する建築となる可能性があると評価されています。
3.市街地に開かれた配置とにぎわいの課題

5案の中で唯一、建物正面を市街地側に開いた構成を採用している点も特徴です。これにより、観光客や市民がイベント開催時以外でも立ち寄りやすい施設となることが期待されています。
一方で、審査会からは、
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にぎわい創出についてはさらなる工夫が必要
との指摘もありました。今後の基本設計では、
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外部広場の活用方法
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港湾エリアや市街地との動線整理
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日常利用を想定した機能配置
などが検討課題となります。
4.景観評価と桜島との関係
デザイン面では評価が分かれました。建物の存在感や造形は評価された一方で、
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屋根形状の主張がやや強い
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桜島との景観的調和に、より一層の配慮が必要
との意見も示されています。今後の設計協議では、屋根形状や素材選定を含め、周辺景観とのバランス調整が重要なテーマとなります。
5.次点案との比較
次点の協議対象者は、坂茂建築設計・松田平田設計・永園設計JVです。
この案は、桜島そのものを象徴と捉え、建築と周辺風景の調和や避難所機能の充実度が高く評価され、最優秀案とほぼ互角の評価でした。
一方で、半地下構造を採用している点について浸水対策への懸念が指摘され、最終判断ではリスク面が分かれ目となりました。なお、東条設計と永園設計はいずれも鹿児島市に拠点を置く設計事務所です。
6.建設費高騰への対応とCM方式

県は建設費高騰への対応策として、コンストラクション・マネジメント(CM)方式の導入を予定しています。
2026年度一般会計当初予算案では、
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設計業務前払い金:2億7300万円
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CM方式導入に向けた委託費:9900万円(債務負担行為)
を計上しています。
塩田康一知事は、報道陣の取材に対し、
「建設費をいかに削減するかが重要であり、設計者と意思疎通を図りながら検討していきたい」
と述べ、CM方式を活用してコスト抑制を図る考えを示しました。
7.まとめ:鹿児島型アリーナ整備の現在地
新総合体育館は、競技利用に加え、災害時の避難所機能や観光・交流拠点としての役割も担う施設です。今回の選定では、目立つ造形よりも、使いやすさ、運営効率、将来の維持管理までを見据えた合理性が重視されました。
設計協議を通じて、景観調整やにぎわい創出策がどこまで具体化されるかが、今後の注目点となります。
出典
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鹿児島県発表資料(2026年2月18日)
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地元紙報道「鹿児島県新総合体育館 設計業務公募」関連報道




