インテックス大阪4・5号館を統合して新館に建て替え! 他館は大規模改修、巨大化ではなく「勝てる展示場」に再生できるかが焦点に

大阪市は、インテックス大阪の基本計画策定とPPP/PFI導入可能性調査を担う事業者として、日建設計・日建設計コンストラクション・マネジメント・日本総合研究所JVを選定しました。

計画の軸は、老朽化した4・5号館を統合して新館に建て替え、その他の号館を段階的に大規模改修することです。新館の規模や配置、工事中の休館計画、概算事業費、整備・運営手法を2028年3月末までに詰めます。

ただし、まだ工事の着手や完成時期が決まったわけではありません。今回のニュースの本質は、再整備が「古い建物を直すかどうか」から、「大阪にどのような展示場が必要かを決める段階」へ進んだことにあります。

展示場の仕様そのものが時代に合わなくなっている

インテックス大阪は1985年に開業した、西日本最大の見本市会場です。約40年にわたり、大阪・関西の展示会や産業イベントを支えてきましたが、建物と設備の老朽化が進んでいます。

より深刻なのは、展示場としての仕様と現在の需要とのずれです。

いまの展示会場には、広い無柱空間、催事規模に応じた分割利用、十分なバックヤード、搬出入車両と来場者の動線分離、会議・商談機能、飲食・休憩環境などが求められます。

図面上の展示面積が同じでも、柱が多い、館同士が離れている、搬入に時間がかかるといった問題があれば、実際に使える面積は目減りします。展示場における「広さ」は、床面積だけでは測れません。

今回の再整備は、建物の延命ではなく、こうした運用上の制約を取り除くための計画です。

国内3位、でも世界では中規模という現実

出展:広州交易会 China Import & Export Fair Comple(50万㎡)

インテックス大阪の屋内展示面積は70,079㎡。国内では東京ビッグサイト、幕張メッセに次ぐ3位ですが、世界市場に目を向けると見え方は変わります。

UFI/jwcの「World Map of Exhibition Venues 2025」によると、世界には屋内展示面積5,000㎡以上の展示場が1,530施設あり、総面積は4,430万㎡。このうち10万㎡を超える施設は81施設あります。


順位 会場 都市・エリア 屋内展示面積
1 東京ビッグサイト 東京 116,540㎡
2 幕張メッセ 千葉 72,000㎡
3 インテックス大阪 大阪 70,079㎡
4 Aichi Sky Expo 愛知・常滑 60,000㎡
5 ポートメッセなごや 名古屋 33,946㎡

中国・広州のChina Import & Export Fair Complexは50万㎡を超え、アジアや欧州には30万~40万㎡級の施設もあります。インテックス大阪が、こうした巨大展示場と面積だけで競うのは現実的ではありません。

一方、現在の約70,000㎡で十分かという議論は残ります。今回の再整備で問われるのは、面積を積み増し、国際的に大規模施設とされる10万㎡級を目指すのか。それとも現状規模を前提に、動線や分割利用、会議機能を磨き込むのか。これは建築計画というより、大阪のMICE戦略の選択です。

4・5号館を建て替える本当の理由

4・5号館を新館化するのは、改修だけでは解決しにくい問題があるためです。

既存建物の改修では、設備を更新し、内装を整えることはできます。しかし、柱の配置、ホールの形状、天井高、搬出入経路、バックヤード、館内動線といった施設の骨格は変えにくい。主催者や出展者に選ばれる展示場にするには、建て替えでなければ手を入れられない部分があります。

新館では、展示ホールだけでなく、会議室、エントランス、飲食、休憩、売店などを一体的に配置できます。複数催事を同時開催しやすい構成や、来場者と搬入車両が交錯しない動線をつくれるかも重要です。

展示場の競争力を決めるのは、総面積だけではありません。搬入しやすく、歩きやすく、短時間で多くの展示に触れられ、商談へつなげやすいこと。新館化の価値は、そこにあります。

全面建て替えではなく、動かしながら直す難しさ

インテックス大阪全体を一度に建て替える計画ではありません。4・5号館を新館化する一方、その他の号館は段階的に改修します。

これは、現役の展示場を止めずに更新するための現実的な方法です。ただし、工事の難易度は高くなります。

展示会は一度ほかの都市や施設へ移ると、簡単には戻りません。主催者だけでなく、出展者、来場者、物流会社、施工会社、周辺ホテルを含む運営網ごと移動するためです。

再整備の最大の課題は、建物をどう造るかだけではありません。工事中に催事を失わない工程をどう組むかです。建設計画と営業計画を一体で設計できなければ、完成後に立派な施設が残っても、利用者が戻らない恐れがあります。

インテックス再整備は、いまどこまで進んだのか


時期 主な動き 位置づけ
1985年 インテックス大阪が開業 西日本の主要展示場として供用開始
2024年6~8月 電気系統の改修に伴い全館休館 老朽化対応が本格化
2025年 大阪市が改修方針を検討 4・5号館の建て替えを含む再整備案を整理
2025年 3号館の大規模改修・休館予定を公表 段階的な改修が具体化
2026年4月 基本計画・PPP/PFI調査業務を公告 事業化に向けた検討へ移行
2026年6月 日建設計などのJVを選定 今回のニュース。基本計画の策定段階へ
2026~2028年 新館の規模、配置、事業費、休館計画、事業手法を検討 再整備の実現方法を具体化
2028年3月末 委託業務の完了予定 基本計画と事業者公募資料を整理
その後 設計、事業者選定、工事へ 着工・完成時期は今後決定

現在地は、「建て替え工事が決まった段階」ではなく、「建て替えを含む再整備を成立させる条件を詰める段階」です。

次に見るべき4つの論点

第一は、新館の規模です。10万㎡級を目指すのか、現在の規模を維持するのか。4・5号館だけでなく、施設全体の展示面積がどう変わるかを確認する必要があります。

第二は、休館計画です。4・5号館の工事と他館の改修をどう組み合わせ、既存催事をどこで受け入れるのか。再整備中の供給力が問われます。

第三は、PPP/PFIの中身です。焦点は、単に民間資金を使うかどうかではありません。整備、維持管理、運営、営業を一体で最適化し、稼働率を高められる事業スキームを組めるかです。

第四は、夢洲との役割分担です。IRや万博跡地の開発が進むなか、インテックス大阪を単独の展示場として更新するのか、咲洲・夢洲を一体のMICE拠点として設計するのか。交通、ホテル、会議施設を含む広域戦略が欠かせません。

大阪に必要なのは「巨大展示場」ではなく「勝てる展示場」

筆者は、少なくともUFI/jwcの分類で大規模施設に入る10万㎡級は目指すべきだと考えます。国内3位の現状を維持するだけでは、2030年代の国際競争に十分とは言いにくいからです。

ただし、床を増やすだけでは勝てません。館内の移動距離を短くし、来場者が限られた時間で多くの情報を集められ、出展者が商談につなげやすい構成にする必要があります。

本来、「規模の拡大」と「使いやすさの向上」は二者択一ではありません。10万㎡級の器を確保しながら、一日で回り切れる密度をつくる。その両方を実現して初めて、インテックス大阪は「勝てる展示場」になります。

展示場の競争力は、床面積の総量よりも、来場者の一日をどれだけ濃くできるかで決まります。今回の基本計画で問われるのは、2030年代を戦える展示場を、大阪が本気で設計できるかどうかです。






出典・参考資料

・大阪市「国際見本市会場(インテックス大阪)整備等に関する基本計画策定及びPPP/PFI導入可能性調査等業務委託」関連資料
・大阪市「国際見本市会場(インテックス大阪)の改修方針等の検討業務委託 報告書」
・日刊建設工業新聞「大阪市/インテックス整備等基本計画・民間活力導入可能性調査等業務/日建設計JVに」
・UFI/jwc「World Map of Exhibition Venues 2025」

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